アジアの大都市の中では、ダッカ、ジャカルタ、マニラが気候変動に対してもっとも脆弱である
記者発表資料 2009年11月12日
【香港発】 アジアの11の大都市の気候変動への脆弱性は、WWFの調査によれば、ダッカ、次いでジャカルタとマニラがもっとも高くなることがわかった。
14日、15日とシンガポールで開催されるAPEC首脳会議を目前にして、気候変動に脆弱なこれらの都市が厳しい未来に備えることができるよう、先進国と途上国は協力しなければならないことをWWFは強調する。また、こういった都市が抱える脆弱性は、12月にコペンハーゲンで開催される国連の気候変動会議において、公平で野心的かつ拘束力のある枠組みが求められることの、もう一つの説得力ある理由になる。
WWFのレポート“Mega-Stress For Mega-Cities(アジアの巨大都市を襲う気候変動)”によれば、評価対象となった都市の多くが、暴風雨や洪水などといった脅威に極めて深刻にさらされる。また、ばく大な数の都市人口と社会資本が、憂慮すべきレベルの社会経済的被害を受ける可能性がある。それと同時に、これらの都市の中には、破壊的な気候変動の影響から自分たちを守る能力を欠いているものが少なくない。
「気候変動は発展途上にあるアジア一帯の都市に被害を及ぼしつつあり、将来的には、より深刻になると考えられる。これらの都市は気候変動に脆弱であるので、何百万という都市部に暮らす人々の命とばく大な社会資本を守るべく、気候変動への適応のための支援が緊急に必要になっている。これらの都市の経済活動は、その国のGDPにおいて、大きな割合を占めている」とWWF気候変動プログラム(WWF Global Climate Initiative)リーダーのキム・カーステンセンは述べる。
「今週、シンガポールで開催のAPECは、アジア太平洋地域の国々にとって、経済と気候の両面から恩恵を得る低炭素型の成長戦略がもたらす、真の『WIN-WIN』関係を導きだすチャンスとなる」
このWWFのレポートでは、沿岸地域や河川デルタに位置する、アジアの11都市を取り上げている。10点満点で評価し、脆弱性スコア9のダッカがもっとも高い危険にさらされている。次いで、脆弱性スコア8のジャカルタとマニラ、脆弱性スコア7のコルカタとプノンペン、脆弱性スコア6のホーチミンと上海、脆弱性スコア5のバンコク、脆弱性スコア4の香港、クアラルンプール、シンガポールと並ぶ。
「アジアの都市化は急速に進んでいる。都市部が気候変動と立ち向かう、極めて重要な戦場となることは明らかだ。都市は、世界のエネルギー消費と温室効果ガスの排出の大部分に対して責任を負っている。しかし、革新的な解決策を生み出すという点ではパイオニアともなる。私たちは、そういった都市を、ただ気候変動がむしばむにまかせるわけにはいかない。 むしろ、彼らが変革の主体となるように力を与え、破壊的な気候変動から、都市と農村部の両方を守らなければならない」とカーステンセンは言う。
このレポートでは、環境への被害や社会経済的な被害の起きやすさ、気候変動への適応能力といったカテゴリーでスコアリングしている。 概ね、貧しい国であるほどに、十分な適応能力を欠いており、脆弱性が高くなっている。
「ダッカやジャカルタ、マニラなど、危険性の高い地域の政治的指導者は、工業化の進んだ国々からの支援を早急に必要としている。効果的な短期的・長期的な適応策は、資金援助と技術協力、そしてキャパシティビルディングにかかっている」とカーステンセンはコメントする。
WWFは、今週のシンガポールでのAPECは、アジア太平洋地域の先進国と途上国の双方の首脳に、低炭素型の経済成長だけでなく、気候変動への適応に関して協力を推し進める絶好の機会となると見る。
「コペンハーゲンでの国連気候変動会議までに残された時間は、わずか数週間ほどだ。しかし、これまでに各国首脳は、来月のデンマークでの成功へ向けた道筋を明らかにすることができていない。APECは、多くの主要国の首脳が、コペンハーゲン前に、自分たちは本当に気候変動からこの地球を守ろうとする意志があることを示す最後の機会となる」とカーステンセンは述べる。
アジア11都市の気候変動への脆弱性スコア
下線を引いてあるのが総合スコア<10点満点> 次の3つのカテゴリーに基づく
ア脆弱性を評価する項目
- 環境への被害 <各10点満点>
台風による暴風雨や高潮、1m の海面上昇による影響、洪水や渇水という水の危機 - 社会経済的な被害の起きやすさ <各10点満点>
都市の人口、社会資本が損なわれることによる経済的影響 - 適応能力の不足 <10点満点>
気候変動に対処する能力がその都市に備わっていない場合にスコアが高くなる
ダッカ :バングラデシュ/脆弱性スコア :9
- 環境の被害:8 (暴風雨4、海面上昇9、洪水や渇水10)
- 社会経済的被害:8 (人口6、社会資本10)
- 適応能力の不足:10
ジャカルタ :インドネシア/脆弱性スコア:8
- 環境の被害:6 (暴風雨2、海面上昇8、洪水や渇水9)
- 社会経済的被害:10 (人口10、社会資本9)
- 適応能力の不足:7
マニラ :フィリピン/脆弱性スコア:8
- 環境の被害:9 (暴風雨10、海面上昇8、洪水や渇水10)
- 社会経済的被害:7 (人口5、社会資本9)
- 適応能力の不足:7
コルカタ :インド/脆弱性スコア:7
- 環境の被害:6 (暴風雨3、海面上昇8、洪水や渇水7)
- 社会経済的被害:7 (人口7、社会資本6)
- 適応能力の不足:7
プノンペン :カンボジア/脆弱性スコア:7
- 環境の被害:4 (暴風雨2、海面上昇1、洪水や渇水10)
- 社会経済的被害:6 (人口1、社会資本10)
- 適応能力の不足:10
ホーチミン :ベトナム/脆弱性スコア:6
- 環境の被害:8 (暴風雨6、海面上昇10、洪水や渇水8)
- 社会経済的被害:6 (人口4、社会資本7)
- 適応能力の不足:3
上海 :中国/脆弱性スコア:6
- 環境の被害:8 (暴風雨7、海面上昇10、洪水や渇水7)
- 社会経済的被害:9 (人口9、社会資本8)
- 適応能力の不足:2
バンコク :タイ/脆弱性スコア:5
- 環境の被害:5 (暴風雨2、海面上昇7、洪水や渇水7)
- 社会経済的被害:7 (人口5、社会資本9)
- 適応能力の不足:4
香港 :中国/脆弱性スコア:4
- 環境の被害:7 (暴風雨7、海面上昇7、洪水や渇水6)
- 社会経済的被害:6 (人口3、社会資本8)
- 適応能力の不足:1
クアラルンプール :マレーシア/脆弱性スコア:4
- 環境の被害:3 (暴風雨1、海面上昇1、洪水や渇水7)
- 社会経済的被害:5 (人口3、社会資本7)
- 適応能力の不足:3
シンガポール :シンガポール/脆弱性スコア:4
- 環境の被害:4 (暴風雨1、海面上昇6、洪水や渇水5)
- 社会経済的被害:6 (人口2、社会資本10)
- 適応能力の不足:1
For further information:
Christian Teriete, WWF Global Climate Initiative, email: cteriete@wwf.org.hk, phone: +852-2864-1412, mobile: +852-9310-6805
Phil Dickie, WWF International Media Relations, email: pdickie@wwfint.org, phone: +41-22-364-9562, mobile: +41-79-703-1952
Notes to editors:
“Mega-Stress For Mega-Cities(アジアの巨大都市を襲う気候変動)”は、こちらからダウンロードできます。
Mega-Stress for Mega-Cities: A Climate Vulnerability Ranking of Major Coastal Cities in Asia
(2MB:PDF形式/英文)
本レポートでは、都市の気候変動への脆弱性を、環境への被害や社会経済的な被害の起こりやすさ、適応能力の面から総合的にスコアリングしている。このようなカテゴリーを評価することで、マニラでは1,150万人が暴風雨や海面上昇、洪水や渇水などの水の危機にさらされることが明らかになり、ダッカ(1,300万人)、ホーチミン(900万人)、上海(2,000万人)がこれに続くことが分かった。社会経済的被害の分析では、人口規模と都市の社会資本、そしてその都市のGDPへの貢献度合いに基づき、ジャカルタ、上海、ダッカの順番で高くスコアリングされている。適応能力では、ダッカとプノンペンがもっとも低く、ジャカルタ、マニラ、コルカタがこれに続く。反対に香港とシンガポールは相対的に高い適応能力を持つ。
【問合せ先】 WWFジャパン 自然保護室 広報担当 新井秀子・大倉寿之 Tel:03-3769-1713
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