記者発表資料 2009年10月28日
四国のツキノワグマは徳島県と高知県をまたがる剣山山系一帯に、十数頭から数十頭が生息すると推定され、絶滅の危機に立たされている。環境省のレッドリストにも、絶滅のおそれのある地域個体群として掲載されている。
10月31日に指定期間満了を迎える現在の「国指定剣山山系鳥獣保護区」は、NPO法人四国自然史科学研究センターとWWFジャパンによる共同調査によって、ツキノワグマの生息地を十分にはカバーできていないことが判明している。
この本格的な生態調査は2005年4月に始められ、これまでに多くの科学的事実を明らかにしてきた。現在の鳥獣保護区から東側、西側、南側に外れたところにも広く行動範囲を持つこと、本州の個体群とは遺伝的に独立性の高い個体群であること、今もメスグマの出産が続いていること、などである。
こうした事実から、本年1月29日に、四国自然史科学研究センターとWWFジャパンおよび日本クマネットワークは連名で環境大臣、林野庁長官、徳島県知事、高知県知事、愛媛県知事に保護区拡大などを求める要望書を提出した。
環境省では、行動範囲に関する調査データを参考に、このほど保護区を拡大する意図を表明した。それは、われわれが要望していた東側の行動範囲をある程度カバーするものとなっている。新たな保護区の指定期間は11月1日から20年間におよぶので、四国のツキノワグマの存続にとって大きな意味を持つ。
同省は、生物多様性基本法(平成20年法律第58号)の理念を実現する施策を講じたと受け止めることができる。具体的には、保護区の拡大は、第15条第1項にうたわれた「絶滅のおそれがある…野生生物の種が置かれている状況に応じて、生息環境又は生育環境の保全…その他の必要な措置を講ずるものとする」にもっともよく響く(生息地の保全)。あるいは、第21条第1項の「地方公共団体…国民、民間の団体…多様な主体と連携し、及び協働するよう努めるものとする」を想起してもよいかもしれない(多様な主体との連携)。
同省自身では、該当する調査データの持ち合わせが少ないので、鳥獣保護区指定計画書にある「これまでの鳥獣保護区の区域を越えて広範囲に生息していることが明らかになったことから、これらの区域についても国指定鳥獣保護区として保護する必要があるため、区域を拡大して指定を行うものである」という文言は、四国自然史科学研究センターとWWFジャパンの生態調査の結果が参考になっていることは言うまでもないであろう。
ただし、残念ながら今回の措置には不足もある。なぜなら、保護区の拡大は東側についてだけ行われ、われわれが同時に提言していた西側、南側への拡大は見送られてしまったからである。西側、南側についてはシカの食害がひどく、有効な食害対策が模索されている現段階では、鳥獣保護区の拡大は優先順位が後回しになってしまった。2007年9月の調査において、高知県では21年ぶりとなるツキノワグマの捕獲を記録したことから、高知県側でも何らかの保護施策が期待されるところである。
何はともあれ、鳥獣保護区の指定更新にともない11月1日から、部分的にでも東側への保護区拡大がなされることは、四国のツキノワグマ個体群存続のために望みをつなぐものであり、歓迎すべきことと言える。
■お問合せ:NPO法人四国自然史科学研究センター 理事 金澤文吾
TEL・FAX:0889-40-0840 携帯TEL:090-1842-4563 E-mail:kanazawa@lutra.jp
WWFジャパン 自然保護室 広報担当 大倉寿之 TEL:03-3769-1713
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