共同声明 2009年9月16日
気候行動ネットワーク・インターナショナルより、各国の財務相の皆様への請願
藤井裕久 財務大臣殿
拝啓、初秋の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。
今年4月のロンドン・サミットで、G20のリーダーたちは、「クリーンで、革新的で、資源効率のよい低炭素の技術・インフラへと移行し」、2009年12月のコペンハーゲンでの国連気候変動会議において何らかの合意に達することを約束しました。その後、オバマ米大統領は、気候変動の問題はピッツバーグでのG20サミットで議論されるべきだ、またその際の焦点は気候ファイナンスであるべきだ、と発表しています。
コペンハーゲン会議における次の枠組みの合意は、世界が低炭素社会へと舵を切る重要なターニングポイントです。しかし、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることに政治的な合意が高まっているにもかかわらず、先月のボンでの国連の気候交渉(8月10~14日)においては、先進国が提案している削減目標は、科学の要請に届いておらず、途上国が緩和に取り組むために必要な資金サポートの議論も進んでいません。先進国と途上国の間の不信感が深刻化しています。コペンハーゲン会議まであと3ヶ月を切った今、交渉プロセスを軌道に乗せるためには、世界の経済大国による強力なリーダーシップが必要とされています。
さらには、気候変動の資金のフローを確立することは、世界経済の回復を促進し、21世紀の持続可能な経済を成功裏に導くための基礎を築く努力の1つの重要な要素となっています。
UNFCCC下での合意の一部として、資金メカニズムに関する決定は、最終的にはコペンハーゲンでなされる必要があります。しかし、G20各国は、以下の4つの重要な分野で価値ある貢献をすることで、その交渉を下から支えることができます。
1:各先進国は、開発途上国の気候行動に対して、最低1,500億ドル/年の新規で追加的な公的資金の提供を公約する必要がある。
先進国は、開発途上国の緩和・適応策を支援するため、2020年までに最低1,500億ドル/年(*1)の公的資金を動員する必要があります。
途上国が、低炭素方の開発を遂げるためには、最終的には何百兆ドルという投資資金を、エネルギー効率関連策、再生可能エネルギー関連インフラ、および森林保護に移行する必要があります。この投資の多くは民間部門に由来するものになりますが、推計では、次の10年で最低1,500億ドル/年の公的資金が必要となる見込みです。その狙いは投資の不足を補い、また能力開発を進めることで民間投資の環境が刺激されることにあります。(*2)また、コペンハーゲンでの合意が、貧困国に対して公平で持続可能な成果をもたらし、その結果、貧困国が気候変動の影響に適応できることを確実にし、また貧困国が低炭素の未来に参画できることを確保することにあります。
- *1:CAN-Iの"CAN-I Finance Position Paper: Scale and Sources of Support for Developing Country Adaptation, Mitigation and Capacity Building"を参照。http://www.climatenetwork.org/から入手可能。
- *2:国連機構変動枠組条約"Investment & Financial Plans to Address Climate Change, Executive Summary"より。http://unfccc.int/files/cooperation_and_support/financial_mechanism/application/pdf/executive_summary.pdfを参照。
世界銀行は、開発途上国が低炭素開発の軌道への移行する際の年間資金の差額は1,000億ドル/年と見積もっている。WWFが2008年7月に発行した"New Finance for Climate Change and the Environment"のp. 29を参照(http://assets.panda.org/downloads/ifa_report.pdf)。
これは慈善事業でもなければ開発援助でもありません。むしろ、途上国が、気候変動の影響に対する抵抗力を強め、また低炭素経済へ移行するための戦略的な投資なのです。それは私たちの集団安全保障への投資であり、グローバル市場・低炭素分野での新規雇用・適応策関連の商品やサービス部門への投資なのです。この公的資金は民間資金をてこ入れし、上記の目標の達成に向けて投資を誘導します。したがって、その1,500億円/年は、0.7%という政府開発援助(ODA)の目標を達成するという先進国の公約に対して、追加的に提供される必要があります。
1,500億ドルの要請額と、CDMのような相殺メカニズムを通じた先進国による炭素クレジットの購入との間に二重カウントがあってはなりません。
相殺は先進国が自国の排出量削減目標を達成するための1つの方法です。もし私たちが地球温暖化を2度未満に抑えたいと願うのであれば、二重カウントはあってはならないのです。
2:G20各国は新規で、予測可能で、十分な公的資金源を確保する必要がある。
G20各国は、気候変動の資金メカニズムのための公的資金を確保する幅広い選択肢を考慮する必要があります。コペンハーゲンへ向けた今までの国際交渉で出された主要な提案のうち、私たちは下記の選択肢が同時に実施されることにより、安定した、予測可能な公的資金が必要な規模で動員される可能性が非常に高まると考えています。
- 排出枠のオークション化:ポスト京都議定書の枠組のもと、先進国の排出枠のオークション化を通じて資金が獲得される。
- 国際航空・船舶メカニズム:国際航空・船舶に関して「キャップ&トレード」または課税制度を取り入れることは、資金を獲得し、また影響度の高い部門からの排出量を削減するインセンティブを創出する、という二重の機能を持つ。
- 国際評価:UNFCCCの締約国である先進国は、政府開発援助(ODA)の公約を超える、評価を受けねばならない貢献をすることに同意する。
またG20各国は、化石燃料への課徴金(*3)や通貨取引に対する課税といった革新的な資金メカニズム提案も考慮する必要があります。
- *3:京都議定書およびその後の締約国による取り決めでは、加盟先進国は優先事項として化石燃料の補助金額を減じるよう要請を受けている(京都議定書、第2条1項(a)(v))。
3:G20各国は、資金メカニズムの管理は、気候変動枠組条約の締約国の権限・監督のもとに直接置かれる、ということを再確認する必要がある。
気候変動枠組条約の下に、気候変動の資金と保護措置の政策が直接おかれるという政治的な見通しは、コペンハーゲンにおいて次期枠組みの合意に達するために必要不可欠です。締約国の監督のもとで、締約国に説明責任があるメカニズムを通じて公的気候資金が運用されることで、全関係国は(提供国と受領国の双方に対する)説明責任・一貫性・透明性をさらに期待することができます。
4:G20各国は、世界的な経済危機に団結して対応するための主要な方策の1つとして、気候変動対策を支える初期の資金源を用意する必要がある。
たった今から実行できる気候変動対策を行う機会は数多くあり、緊急の財政支援を必要としています。多くの途上国は、実行中の適応策、ならびに強化された緩和策のための計画や、能力開発に対する支援を至急に受ける必要があります。先進国の中には「国別適応行動計画」の実施について最後発開発途上国基金に対する援助を公約している国もありますが、現時点では、必要額(約20億ドル)と公約額(約1.76億ドル)との間には大きな差があります。
先進国からの援助を得ることで、途上国は、温室効果ガス排出量の測定能力を向上し、当該国にとって適切な緩和行動を準備・実行し、また森林保護を進めるのに必要な資金源へアクセスすることが可能になります。これら全ての項目は、ポスト京都議定書の枠組において本格的な行動を進める上で必要となるものです。すでに承認を受け、プロジェクトを進める準備ができているが、現在の経済的環境では、資金と支援が足りないという低炭素プロジェクトが数多くあります。そのため、先進国は、次の枠組みが始まる2013年より前に、途上国の緊急を要する削減行動に対して、相当な額の資金を初期動員することを公約する必要があります。
原則的には、先進国はすでに気候変動枠組条約のもとと、バリ行動計画のもとで、開発途上国の削減行動と適応を支援することを公約しています。今、求められているのは、コペンハーゲンで満足の行く成果を生み出すために、途上国にとって説得力があり、かつ受け入れられる具体的な提案です。コペンハーゲンでの結果を成功裏に収めるために進んでいくためには、途上国のニーズに見合った緩和・適応策に対する公的資金の確保を公約するという、先進国のはっきりとした政治的意思が必要なのです。
G20各国は世界の経済状況に取り組むためにさらなる行動を検討しているところですが、私たちは、そのリーダーたちに、緊急を要する気候変動の資金メカニズムも検討していただくよう、ここに強く求める次第です。
気候行動ネットワーク・インターナショナル
CANインターナショナルについて
CAN(Climate Action Network:気候行動ネットワーク)は、WWFを含む、世界の約450の気候変動問題に関する、NGOのネットワーク組織。気候変動の危機に対して安全で、十全で、かつ公正な解決方法を提唱するために協力している。
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