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WWFの活動

WWFから鳩山新政権へ気候変動政策に関する5つの要請

要望書 2009年9月18日

「気候変動政策に関する5つの要請」の送付について

内閣総理大臣 鳩山由紀夫 殿
経済産業大臣 直嶋正行 殿
環境大臣 小沢鋭仁 殿
外務大臣 岡田克也 殿
財務大臣 藤井裕久 殿

拝啓

初秋の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
私どもWWFは、約100カ国で活動する自然保護NGO(非政府組織)です。
この度の鳩山新政権の誕生、そして先日の温室効果ガス排出量25%削減目標の宣言につきまして、歓迎申し上げるとともに、気候変動政策の今後の更なる強化をご期待申し上げます。
同封いたしましたのは、WWFが、貴政権の気候変動政策につき、お願いしたいと考える5つの要請をとりまとめた文書です。今後の気候変動政策の検討・実施の参考として頂けましたら幸甚です。
何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

グローバル気候イニシアチブ・ディレクター
キム・カーステンセン

WWFインターナショナルWWFジャパン事務局長
樋口隆昌

WWFから鳩山新政権へ気候変動政策に関する5つの要請

WWFジャパン・気候変動プログラム
WWFインターナショナル・グローバル気候イニシアチブ

WWFは、気候変動を重要課題として位置づける鳩山新政権の誕生を歓迎するとともに、新政権の気候変動政策として、以下の5項目を望みたい。

1. 2020年25%削減目標(1990年比)を達成するための具体的政策・対策の提示

民主党は、選挙のマニフェストにおいて、2020年までに1990年比で25%の温室効果ガス排出量を削減する目標を掲げていた。9月7日の朝日新聞社主催「朝日地球環境フォーラム2009」での鳩山代表のスピーチにおいても、この目標は再確認され、国際的にも高い評価を得た。

WWFはこの目標を歓迎するとともに、その達成は原則的に国内削減によって実施されるべきと考える。そして、この目標達成のための具体的政策・対策を早期に提示することを求める。

2. 2050年長期目標を少なくとも80%以上削減にする

民主党は、選挙のマニフェストにおいて、2050年の目標として60%超減(1990年比)を掲げていた。しかし、地球の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えるための世界的な取り組みの中で、日本が達成するべき排出量削減としては、この目標は不十分である。

今年7月にイタリアで開催されたラクイラ・サミットの宣言文において、日本を含むG8首脳は、先進国全体で2050年までに80%もしくはそれ以上(1990年比もしくはより近年の基準年比)の排出量削減を支持している。日本は、この目標達成に着実に貢献しなければならない。

新政権は、この2050年目標を少なくとも80%以上に変更し、最終的には「脱炭素社会」を目指すことを明確にしていただきたい。

また、地球の大気にとっては、特定の年での排出量だけでなく、今後2050年までの期間の中で排出される排出量の累積量が問題となる。このため、上述の2020年目標から、この2050年の目標達成に至るまでの間の、目安としての2030年・2040年のマイルストーン目標も示すべきである。

3.25%削減を確実に達成する国内政策・対策の整備

2020年25%削減目標を着実に達成し、将来的には「脱炭素社会」を達成するために、少なくとも以下の3つの政策・対策を整備することが重要である。

3-1.キャップ&トレード方式の排出量取引制度の導入

民主党はマニフェストで公約した、大規模事業者を対象としたキャップ&トレード方式の排出量取引制度を早急に導入するべきである。

現在実施されている排出量取引制度の「試行的実施」は、個別企業の自主的な参加・自主的な目標に依拠しており、キャップ&トレード方式の排出量取引制度の「試行」とは呼べない。また、原単位での目標設定を許しており、総量での排出量削減にはつながらない可能性がある。取引にかかわる実務や基盤の整備という点では一定の意義があるものの、より意義のある形とするためには大幅な見直しが必要である。

新政権は、同試行のあり方を早急に見直し、本格的な排出量取引制度の導入へ向けての準備を開始するべきである。

3-2.排出量取引制度対象部門以外への炭素税および個別政策の導入

排出量取引制度だけではカバーできない排出源を対象として、排出量に応じて課税をする「炭素税」を導入すべきである。さらに民生・運輸の個別部門には、部門ごとの特性に応じた政策・対策を導入するべきである。製品や車に関するトップランナー基準の強化・拡大、住宅・建築物に関する基準の整備、交通システム・インフラのあり方の見直しなどは特に重要である。

低炭素社会の実現には、すべての分野の参加が不可欠であり、包括的な温暖化政策パッケージが必要である。WWFでは、コペンハーゲン直前に、排出量取引制度を中心としつつ、他の政策・対策を含んだポリシーミックス提案を発表する予定であり、その中身も参考にして頂きたい。

3-3.再生可能エネルギー導入促進のための固定価格買取制度の拡充

再生可能エネルギーの推進は、今後の気候変動政策の柱の1つとなるとともに、新しい成長・雇用創出分野として極めて重要である。太陽光だけでなく、(洋上も含めた)風力、バイオマス、小水力、地熱といった様々な再生可能エネルギーの活用を、地域環境の特性を踏まえながら、総合的に検討するべきである。

そのためには、民主党がマニフェストの中で既に公約しているように、固定価格買取制度の対象を、現状の太陽光のみから全ての再生可能エネルギーに拡大し、余剰のみから全量買取方式にすることが必要である。

現在計画されているよりも積極的な再生可能エネルギー導入策によって、民主党がマニフェストで掲げた一次エネルギー供給10%目標を達成することが最低限必要であり、25%削減を着実に達成していくためには、それ以上を目指すべきである。

以上の3つの政策は、25%削減目標や脱炭素社会の達成へ向けて不可欠であるが、その取り組みは、将来に開始すればよいというわけではなく、京都議定書の6%削減目標を着実に達成することから始まる。将来の削減政策・対策の検討と同時に、既存政策の強化・発展を通じて、今すぐにできることを迅速に実施していくことが必要である。

4.途上国の適応と緩和への資金的・技術的支援の具体案の発表

世界の排出量を大幅に削減し、気候変動の脅威に適切に対応していくためには、過去の排出に責任のある先進国から、途上国の適応や緩和に資金的・技術的支援を行うことが不可欠である。12月のコペンハーゲン合意では、この資金的・技術的な支援の内容が重要な要素となることは間違いない。

鳩山総理は、9月7日のスピーチの中で「鳩山イニシアチブ」として、途上国支援の提案を出すと発表した。WWFは、同イニシアチブが、以下の諸点についての考え方を含むことを期待する。

  • 2020年時点で必要となる資金規模に関する見通し
  • 先進国が全体としてどの程度の資金を提供するべきなのか。そして、日本はその中でどの程度の資金を提供する用意があるのか
  • 資金源は、どのようなメカニズムによって創出されるのか
  • 資金は、どのようなガバナンスの下で提供されるのか
  • 公的資金と民間資金についてどのような役割分担がありえるのか

WWFは、途上国において必要とされる緩和・適応対策に対して、先進国全体としては1600億ドル/年の公的資金援助が必要になると考えている。日本は、責任の重さに応じた負担をするべきである。また、割当量のオークションや国際航空・船舶への課税などの資金創出メカニズムの検討を行う必要があり、資金のガバナンスは、国連を中心とするべきである。

5.基本法の制定

気候変動政策を日本の中で明確に位置づけ、長期的に取り組んでいくためには、気候変動政策・対策に関する基本法の制定が必要である。その中には、これまで述べた4つのポイントと共に、その実施を管理する体制・組織や、科学的知見に基づいて目標の見直しを可能にする仕組みが組み込まれていなければならない。

新しいリーダーシップをもった気候変動政策へ向けて

民主党がマニフェストで公約した気候変動政策は概ね前向きなものが多く、WWFとしてはその着実な実施を望みたい。
しかし、懸念される点もある。特にマニフェストの中で掲げられた高速道路の無料化や暫定税率廃止は、そのままではCO2削減の温暖化対策と逆行する政策である。廃止する暫定税率を上回る炭素税や、鉄道、フェリーなどCO2排出量の少ない公共交通手段へのモーダルシフトを促す政策とセットでない限り、先行して導入すべきではない。少なくとも、炭素税の導入意志を明確にしておくべきである。

前政権下においての低炭素社会作りの議論では、家庭に対する負担増ばかりが強調され、偏った印象を押し付ける議論が展開された。オバマ大統領のグリーン・ニューディールを挙げるまでもなく、世界の先進国は、環境保護と経済成長を同時に達成する「緑の成長」を志向して強力に推し進めている。CO2規制を先取りすることは、日本の産業の国際競争力を高めることに繋がり、新たな雇用を生み、経済活性化をもたらすものである。

そして何より、大幅な排出量削減は、世界の人々や自然に対し、気候変動がもたらす甚大な影響やコストを回避するために行うものである。国民が気候変動に対する正しい理解をして、自ら判断できるように説明することを新政権には求めたい。

気候変動の国際交渉において、今までの日本政府は世界の市民社会から、国際交渉を妨げる国として「化石賞」を贈られる常連であった。新政権には、実効力のある国内政策をバックに、野心的な目標を掲げ、責任ある先進国のリーダーとして、交渉を率いていくことを期待している。

2009/9/18

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