環境への化学物質の影響
今や、人工的化学物質のない現代の生活を想像することは不可能です。それでも、現存する化学物質の種類と生産量は驚くべきものです。現在EUにおいて商品化されている化学物質は、実に30万種以上。そしてこれらは空気、土、水というあらゆる媒介を通して、ヨーロッパの自然環境と生活空間の中へ入りこんでいます。
生物の体内から地球全体まで
現在、地球上にいるほとんど全ての人の細胞中に、有害な化学物質が存在するといわれていますが、これらの化学物質は製造され、使用されている最中に、私たちの皮膚や食べ物など通じて、少しずつ体内に吸収されたものです。
1930年から2000年にかけて世界の人工化学物質の生産量が年間100万トンから1億トンに膨れ上がりました。そして今や、人体から検出される人工化学物質の種類は300種類近くにのぼります。大気や海などあらゆる環境へと排出され、風や水の流れに乗って途方もない距離を移動したこれらの物質は、北極や南極の動物の体内からも検出されています。
以前、WWFイギリスは、ヨーロッパで行なった有害化学物質による人体への汚染についての調査の中で、対象となった155人のうち99%に当たる人の体内に、すでに数十年前に使用禁止になっていた化学物質、DDTとPCBが存在していることを明らかにしました。これらのDDTやPCBのような一部の有害化学物質は、特定の癌や、先天的欠損症をはじめとする生殖機能の異常を引き起こしていると考えられています。
人工化学物質が、私たちに大きな利便性をもたらしてくれたこと、社会に大きな貢献を果たしてきたことを否定する人はいないでしょう。しかし近年、残念ながら一部の化学物質は人や野生動物に、きわめて深刻な害をもたらすことが明かにになってきました。人体への被害はもちろんのこと、鳥やホッキョクグマ、カエル、ワニ、ピュ-マなどの野生動物も、その影響にあっていることが知られています。しかも、それらの長期的な影響については、まだあまりよくわかっていません。
国際的な取り組みの推進を
局地的な公害問題として注目されることはあっても、有害化学物質が世界的な問題であると認識されるようになってきたのは、それほど昔の話ではありません。近年は、地域、国、国際間、さまざまなレベルでの取り組みが進められています。
WWFはストックホルム条約などの国際的な化学物質規制のルール強化や、各国における有害な化学物質の使用規制や製造禁止などを求めています。また、人体や一部の野生生物などについて、体内からどのような化学物質が、どれくらい検出されるか、といった調査なども、研究者と共に実施しています。




