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WWFの活動

琵琶湖の自然

 日本で最大の湖、琵琶湖。 琵琶湖は日本最大である、というだけでなく、多くの点で日本の他の湖と異なる特徴を持っています。

琵琶湖の景観の特色

 琵琶湖のまず第一の特徴は、その大きさです。琵琶湖の面積は 674平方キロ。琵琶湖に流れ込む周辺の河川などの面積を併せた「流域面積」は3,848平方キロにもなります。
これは、日本第2位の面積をもつ湖、霞ヶ浦(面積219.9平方キロ、流域面積2,157平方キロ)よりも、はるかに大きい面積です。水深も同様で、霞ヶ浦が最大水深7メートルなのに対し、琵琶湖は最大水深が103メートルもあります。

 また 、「古代湖」といわれるタイプの湖である琵琶湖は、 300 万年におよぶ古い地史を持っています。
 海外の古代湖の例としては、アフリカのタンガニーカ湖、ヴィクトリア湖、マラウィ湖、そしてアジアのバイカル湖などが有名ですが、これらの古代湖はいずれも、世界的に見ても独特で豊かな自然環境に恵まれており、多くの貴重な固有種(基本的にその湖水系以外には分布していない種)が生息しています。

固有種の宝庫

 琵琶湖もまた、これら世界の古代湖と同様に、たくさんの固有種に恵まれた、世界的に貴重な淡水生態系を誇る湖です。
 例えば、世界中で琵琶湖とその水系でしか見られないビワコオオナマズは、体長1メートル以上にもなる、国内でも最大級の淡水魚です。この他にも、ビワマスやニゴロブナ、イワトコナマズなど、琵琶湖水系にだけ見られる魚種は少なくありません。
 あまり知られていませんが、「固有種」が数多く存在する、という点も、実は琵琶湖の持つ非常に大きな特徴なのです。

 また、琵琶湖は古くから人が日常の暮らしの中で、深くかかわってきた湖でもあります。長い歴史の中で育まれた、人と自然が共存した文化も、琵琶湖という湖が持つ、大きな特色といえます。

琵琶湖の魚たち

 現代の琵琶湖とその周辺河川に見られる独立した水系は、今から 300万年前から400万年前に形成されたといわれています。
 この長い時間の流れの中で、琵琶湖の生き物たちは、独自の進化を遂げてきました。 琵琶湖に数多く生息する「固有種」は、この湖の長い歴史の中で育まれてきたいきものたちです。

 固有種とは、世界でその地域や水域にだけ生息・生育する動植物のことです。 古代からの貴重な遺産ともいうべき、この固有種が数多く存在する琵琶湖は、世界にも誇れる大切な水環境ということができるでしょう。

琵琶湖の固有種、ワタカ (C)WWF Japan

 しかし、近年の急速な流域環境の変化は、この固有種にも悪い影響を及ぼそうとしています。水質の汚染や、沿岸の開発や、海外などから持ち込まれた「外来生物」が、湖の自然もろとも、固有の生きものたちを脅かしているのです。

  「固有種」は、昔ながらの豊かな琵琶湖の自然を象徴するものです。多くの固有種が安定して生存していける環境を守ること、それこそが、WWFがめざす水環境の保全でもあります。

湖と人の暮らし

 琵琶湖は古くから淡水の海「淡海(おうみ)」と呼ばれ、日本の歴史と文化に深くかかわってきました。琵琶湖とその一帯は豊かな漁場であり、水利に優れた水田地帯であり、盛んな水運に支えられた一大商業地域だったのです。

 この歴史を支えてきたのは、琵琶湖の豊かな環境であり、その自然を大切にして漁業や農業を営んできた人々の暮らしでした。この文化は、古くは縄文時代から続けられてきたといいます。「淡海」と称された琵琶湖は、文字通り、淡水の「海」となって、そこに注ぐ川や水路と共に、生きものたちに生息場所を提供し、豊かな水産資源をもたらしてきました。

(C)WWF Japan

 古くから盛んだった漁業は、琵琶湖周辺の集落や京都の町に、琵琶湖産の魚を供給し、日常的な食生活の一端を支えてきました。
 琵琶湖の名産品として知られる「鮒寿司」も、そのような文化の歴史の中で生まれてきました。鮒寿司の原料になるのは、琵琶湖にだけ分布するニゴロブナというフナ。 鮒寿司は、ご飯に琵琶湖のこのフナを漬け込んで乳酸発酵させたものです。 鮒寿司は、ニゴロブナという琵琶湖の恵みと、同じくその水の恵みによって行なわれる 稲作が結びついて作られたものといえるでしょう。 名産品の鮒寿司や佃煮の原料も、湖を始めとするさまざまな水環境によって支えられているのです。

 水辺に生えるヨシを利用した物作りも、人と水の文化を物語る例の一つです。琵琶湖周辺では、古くからヨシを素材とした漁具や舟、日用品などを作り、食材としても利用してきました。また、毎年行われるヨシの定期的な刈り取りは、ヨシ原の環境を一定に保ちながら、湖の水を浄化し、魚や鳥たちに生活の場を提供することにも役立っていました。

 しかし、近年はこのような水と人、湖の自然と暮らしのつながりが、生活の変化によって、徐々にとぎれ始めています。利用されなくなってきたヨシ原は放置されたり、また護岸や埋め立てによって失われ、内湖や水田も減少の一途をたどってきました。かつては豊富にいたニゴロブナも大幅に減少。今では鮒寿司も高級料理になってしまったほどです。

 琵琶湖の自然に迫る大きな脅威は、湖とその水系に息づいてきた多くの生きものたちと、その水産資源の恵みを受けて育まれてきた湖周辺の伝統的な文化にも、影響を与えようとしています。

固有種、ニゴロブナ (C)WWF Japan

湖と水のつながり

 琵琶湖は湖ですが、古来、淡水の海、といわれたとおり、周辺の河川と海のようなかかわりを持っています。例えば、アユやビワマスなどの魚は、琵琶湖に流れ込む川で生まれ育ち、湖に降ります。これらの魚は、普通アユやサケなどが、川で育ち、海へ降るように、琵琶湖へと降るのです。

 この他にも、湖の深い場所だけでなく、アシなどが生い茂る浅瀬や、湖に流れ込む川、そして水田や内湖、土の水路、湧水といった周辺の「水環境」をも、暮らしの場にしている生きものは少なくありません。
 琵琶湖の固有種として知られるビワコオオナマズは、6月から8月にかけて大雨が降り増水する時期になると、湖の深いところから浅い場所にやってきて産卵します。ナマズも同じように、湖畔周辺の水田や岸辺の浅瀬で卵を産み、また琵琶湖へと戻っていきます。

 ビワコオオナマズと同じく琵琶湖特産種のニゴロブナも水田で産卵しますが、この時、ニゴロブナは段差の少ない昔ながらの土で出来た農業水路を通って水田に入り込みます。つまり、ニゴロブナが生きてゆくためには、湖と水田のほかに、水路という環境が必要である、ということです。

 これらの水環境を利用する行動は、ビワコオオナマズやニゴロブナだけではなく、琵琶湖に産する多くの魚たちもに共通して見られる習性です。琵琶湖の自然は、湖そのものだけでなく、周辺の川や水路、水田といった水環境、その全てがつながり合うことで育まれているのです。

 このような魚たちの習性は、沿岸に住む人たちの昔ながらのさまざまな社会活動が、琵琶湖の自然を育み、多様なものにする上で、大切な役割を果たしていたことを物語っています。
 しかし、この水のつながりが今、大きく変わり始めています。ここわずか 50年ほどの間に、昔ながらの水路は、あちこちで大きな段差のあるまっすぐなコンクリートの水路に整備され、ヨシの茂っていた湖岸でも護岸が進められてきました。人と湖との接し方の変化が、自然環境にも変化をもたらすことになったのです。

 この変化は、ニゴロブナのように、水田で生まれ、ある程度の大きさまで育ってから、琵琶湖に戻っていく、そんな生活史を持つ魚たちから産卵場所を奪い、危機的な状況に追い込む大きな原因になっています。また、ブルーギルやブラックバスのような外来種の移入も、この打撃に追い打ちをかけています。

2009/9/14

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