環境保全の取り組みの主役は、あくまでも地域の人々です。この「黄海エコリージョン支援プロジェクト」では、地域の自治体や学校、そして漁業などに関わる人々と、黄海の大切さ、豊かさについて意識や考え方を共有し、自主的に環境の保全に取り組んでもらうことを目指しています。実際に支援を行なってきたプロジェクトの事例を紹介します。
大学生+小学生で、黄海の生きものの保全をアピール
【中国】山東省威海市・煙台市/山東大学威海キャンパス (Shandong University Weihai Branch)
黄海と渤海の間に突き出た中国最大の半島です。半島の先端にあるのが威海市、そのすぐ西側に広がるのが煙台市です。両市とも水産業が盛んで、煙台市の海岸線は観光地としても人気があります。
煙台市の北海岸には、30あまりの島々が連なる長島県があり、国および山東省が指定する自然保護区となっており、ゴマフアザラシも生息しています。黄海のゴマフアザラシは、生涯を黄海で過ごす(他の海域の個体群とは交流していない)貴重な個体群と見られています。
ゴマフアザラシをはじめとする海の生きものをテーマに、「大学生+小学生」という組み合わせで普及活動に取り組んだのは山東大学威海キャンパスの学生さんたちです。李斌さんと王菲さんに、1年間のチャレンジを話していただきました。
学生たちのパートナーシップ
--なぜ、「大学生+小学生」という組み合わせなのでしょう?
「小学生は自由なアイデアを持っているし、大学生は自分たちで行動する力を持っています。また、小学生が参加するとなれば、大学生は模範となるような行動をとろうとするでしょう。活動が最も効果的になる組み合わせだと思います。これは、大学のほうでも奨励されているやり方なので、それを実践してみるよい機会だという意味もありました。」
--小学生と一緒に、どのような活動を実施されたのですか?
「ひとつは海岸清掃です。海の環境に関心を持ってもらうのによい活動だと思ったからです。もうひとつは、ゴマフアザラシのいる長島で、保護区を訪問したり、アザラシを守ろうというパンフレットを作って、観光客に配るという活動を行ないました。」
--海岸清掃は、誰もが参加しやすい活動ですよね。
「はい。ただ、子供たちを海岸へ連れて行くということで、思った以上に安全面を心配する声がありました。小学生の参加を得るには、まず、校長先生にお会いして、一緒に活動したいと申し入れるのですが、最初の学校には、危険なことがあっては困るからといって断られてしまいました。また、参加を承諾してくれた小学校でも、保護者の許可が必要だといわれました。そのときには、校長先生が、保護者の方々に説明をしてくださったので助かりました。」
アザラシという動物
--アザラシの保護区訪問となると、もっと大変だったのでは?
「船に乗って海へ出て、アザラシを観察するということは、やはり危険なので見送りました。その代わり、傷ついて保護されているアザラシを見学させてもらいました。参加してくれたのは長島の地元の小学校です。世界一大きい、アザラシの模型があるという学校なんです。その小学校のシンボルとして、地方政府が贈った模型なんだそうです。」
--地元では、ある程度、アザラシへの関心は高いのでしょうか?
「存在は知られていましたが、保護が必要だとは思われていなかったようです。小学校の子供たちが配ったパンフレットを見て、アザラシは保護すべき動物だと知って驚いた、というのが地元の大人達の反応でしたから。」
--子供たちは、パンフレットの配布を恥ずかしがったりはしませんでしたか?
「思った以上に積極的でした。海岸清掃の時にも、海をきれいにすることに賛同する署名のようなものを集めたのですが、それもとても熱心に集めてくれました。私たち大学生にも、サインするよう求めてきたのには笑ってしまいました。中国では、海岸清掃はアースデーなど特別な日にやる場合が多かったのですが、最近は、普段の日にもおこなわれるようになってきています。」
--参加してくれた小学校とは、今後も活動を続けるのですか?
「長島の小学校では、アザラシの保護区を見に行ったあと、校長先生から子供たちに絵を描くよう勧めてくださいました。その絵を使ってカレンダーを作り、地域の人たちに配ることができました。海岸清掃をした小学校は、校長先生がとても熱心な方なので、今でも連絡をとりあっています。」
広がる取り組み
--他にも、大学生だけで実施した活動もあったそうですが。
「はい。アザラシ保護区の実地調査や、野生動植物の写真コンクールなども行ないました。また、海鮮レストランに、法律で捕獲が禁止されている海洋生物の写真を配って、食べないように呼びかけるという活動です。」
--門前払いされることも多かったのでは?
「最初は、ボランティアでやっているということさえ信じてもらえませんでした。何度も通って、また、法律で禁止されている生物の料理を出さないことは、レストランの営業を妨害することではなく、却って信頼を得ることにつながるのだと訴えました。やっと受け入れてもらったときや、アザラシの保護に賛成だというオーナーの店に当たったときには、とても達成感を感じました。」
--今後はどのような活動に取り組んでいく予定ですか?
「今年一年で、延べ962人の大学生と、160人の小学生が活動に参加しました。今後は、やはり大学生と小学生の組み合わせで、生物の多様性への関心を高める活動に取り組みたいと思っています。政府やマスコミとも一緒に活動できるよう、関係づくりもしていきたいですね。」

王菲さん(上)と李斌さん(下)














