サケは日本で最も人気の高い魚の一つです。しかし、その多くが養殖されたサケであることは、意外に知られていません。あのおいしそうな赤い色も、実は養殖の過程で人工的に着けられたものです。
養殖サケの氾濫
天然の大西洋産のサケ「タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)」の漁獲量は、1990年以降、漁獲量が急減しました。代わりに急増したのが養殖物の生産量です。天然物の漁獲量と比較すると、養殖物は生産量が二けたも上回っており、現在は、養殖サケが市場を席巻しているのが現状です。
世界のサケ養殖の2大生産地は、北欧のノルウェーと、南米のチリです。日本もそこから、養殖物のサケを大量に輸入しています。
ここでいう養殖サケとは、サケの卵を孵化させ、それを川に放流して、海から帰ってくる魚を獲る、というものではありません。卵から育てる完全養殖で、最初から最後までいけすで育てます。
しかしこの結果うまれてくる、大海原を知らないサケが、問題を引き起こしています。
問題は、この養殖のサケが養殖場から逃げることで起きています。ノルウェーでは、サケの養殖場から、30万匹とか40万匹という数のサケが、川へ逃げていることが報告されています。河川によっては、そこで見られるサケのうち、5割以上が養殖場から逃げたサケだったという例もあるほどです。
この事態は、天然のサケと、逃げた養殖サケが、限られた食物を争う競合を招くほか、養殖物のサケと天然物のサケが交尾・産卵することで、遺伝子が撹乱されてしまう可能性を高めることになります。
また、過密した状況で育てられた養殖のサケには、寄生虫がたくさん付きますが、これらが天然のサケにも蔓延し、天然のサケの生存が脅かされることにつながります。
ノルウェーに次ぐ世界第二位の養殖サケ生産量を誇るチリでは、湖などの淡水域で育てた稚魚を、海中の養殖場に移して成長させています。
しかし、チリのパタゴニア湖では、養殖されているサケの生産量がこの10年間で倍増しており、養殖場から流れ出る有害な物質などにより、湖の汚染が進んでいることが、明らかになっています。
天然のサケと異なり、養殖サケは非常に計画的に生産することができ、色も当たり外れが少ないといわれています。また、マグロと同様、豊富な餌を与えることで、脂(脂肪)も乗っており、日本で高い人気を博しています。
参考資料(PDF形式)
WWFノルウェー
WWFチリ
日本産のサケは?
北海道でも天然のサケが獲れて、もちろん日本でも消費されますが、輸入される大量の養殖サケが市場を席巻しています。
一方、ヨーロッパやアメリカでは、養殖物よりも天然物を求める需要が非常に高まっているため、日本産の天然サケが、加工工場のある中国を経由して欧米へ輸出される量が増えています。
日本では、近くで獲れる天然サケを輸出し、地球の反対側から、養殖したサケを輸入しているのです。
密漁も起きている?
さらに、日本人は知らないうちに、密漁された安いサケを食べているかもしれません。2003年に、日本はロシアから2万892トンの冷凍ベニザケを輸入しましたが、ロシアの統計に載っている日本への冷凍ベニザケの輸出量は1万3,516トンでした(公式統計2003年)。
これは、ロシアの漁獲統計に載らない、密漁されたサケが日本に輸入され、流通した可能性を物語っています。

(C)WWF-Canon/Miche lGUNTHER
タイセイヨウサケの天然物の漁獲量と養殖物の生産量

資料:FAO Fish

洋上に作られたサケの養殖場。丸い生け簀の中でサケを育てる。
すし屋やスーパーなどでは、よくきれいなオレンジ色のサケを見かけるが、その大半も、実は養殖されたサケである。
色がきれいなのは、養殖サケが、与える餌に身が赤くなる成分であるアスタキサンチンを人工的に添加されているため。
天然サケの身が赤いのは、自然の中でサケが食べているエビやカニの殻に、アスタキサンチンが含まれているためだが、養殖されたサケは、天然のエビやカニを食べる機会がないため、身が赤くならない。(C)WWF-Canon/WWF-Canada/Robert Rangeley
ロシアから日本への冷凍紅サケ




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