四川大学生命科学学院 冉江洪さんの報告 ~商業的森林伐採ではなく、伝統的な植林を
2008年5月12日に四川省■(ブン:さんずいに文)川県で起きた地震は、人々を傷つけ、その財産を奪っただけでなく、生物の多様性にもさまざまなダメージを与えました。
地震の被害を受けた場所は、世界中でも屈指の生物多様性に飛んだ地域であり、WWFが選んだ世界200カ所の重要地域にも含まれています。ユネスコの世界遺産に指定されている場所も4カ所を数えます。
チュンライ山脈のジャイアントパンダ生息地、九寨溝、黄龍、都江堰~青城山です。そして何より、ジャイアントパンダや、キンシコウといった希少な生きものたちの重要な生息地なのです。地震は、パンダの生息地に広範囲にわたって深刻な影響を及ぼしました。

現地を訪れた冉江洪さん(中央)
50%以上の生息地が失われた保護区も
ジャイアントパンダは、数百万年前からこの地に暮らしてきました。進化論の観点からすれば、パンダは自然災害に対する耐性を発達させているはずで、地震も、それほど大規模な個体数の減少にはつながらないと考えるのが普通です。しかし、急激な人口の増加が、パンダから多くの生息地を奪ったため、パンダのふるさとと呼べるのは山岳地域や谷間だけになりました。
その生息地が、各地で地震によってひどく破壊されています。龍渓虹口自然保護区と、白水河自然保護区は、ともにパンダの重要な生息地ですが、50%以上の生息域が失われました。パンダの主な食べ物であるタケ類の自生地が、広範囲にわたって消失したほか、パンダが水を飲んでいた谷川が地滑りによって埋まってしまっています。地滑りは、パンダが日常的に、また季節的に移動するのを妨げるものともなっています。
もし、被災地にパンダが生息可能な地域が残っていたなら、商業的な森林伐採はせず、在来の樹木を植えることによって科学的な再生を図れば、パンダの暮らしが回復する可能性があるでしょう。しかし、パンダにとって、分布を広げる可能性のある新たな生息地はありません。これまで続いてきた人為的な影響が、パンダがこの災害を越えて生き延びることをより難しくし、個体数の増加を妨げているのです。
状況に応じたきめ細かい対応を
パンダの生息地が不足している以上、現在、もっとも優先されるべき保全策は、パンダの生息地の回復を図ることです。私たちは、パンダの食べ物となる動植物の変化や、移動を妨げているものの存在について、詳しい科学的な調査を行ない、生息地の再生計画を立てる必要があります。
地滑りによって、砂や礫に覆われた場所ならば、自然の回復に任せるべきですし、泥で埋まっている場合には、パンダの食べ物となるタケ類や、在来の樹木などを植えるといった再生方法を実施すべきです。大規模な地滑りがパンダの移動を妨げている場合は、パンダや、その他の希少な生き物が行き来できる簡単な小道を造るといった人工的な方法を実施すべきかどうか、検討する必要があるでしょう。
地方政府と、保護区の管理当局は、パンダの生息地の回復を図る際に、外来の樹木を植えたり、商業ベースでの植林が行なわれないよう、注意を払うべきです。もし、パンダの生息地が、人工林や、商業的生産林に置き換わってしまった場合、パンダは、すみかを失うことになるでしょう。結果として、さらに人為的な影響が生息地に及ぶようになり、パンダの生存を脅かすこととなるからです。
中国各地で使用できるガイドラインが必要
現在はまだ、パンダの生息地や、植生の回復状況を包括的に調査をすることは不可能です。重要なのは、地方政府や保護区の管理当局が使用できるような、データ収集や科学的な植生の回復に関する原則やガイドラインを作っておくことです。こうしたガイドラインは、パンダにとって何が重要かという視点を取り入れるのに役立つだけでなく、パンダの保護と、その生息地に隣接する地域共同体の発展を、バランスをもって両立させることの助けにもなるでしょう。
世界中の人々が、パンダの保護に支援の手をさしのべてくれています。私は、パンダが必ずこの危機を乗り越えること、そして彼らの故郷がほどなく再生されることを信じています。

モニタリングのために作られた調査ルート。急斜面の険しい山林を分け入っていく。千佛山自然保護区にて。

パンダの生息地が広がる岷山山脈。その南部では特に被害が大きく、全体の35%が地震の影響を受けたとみられる。

ターキンによる獣道をたどるレンジャーたち。青木川自然保護区。

ターキンは、四川省の山岳地帯に生息する、きわめて希少な偶蹄類の一種。(写真は現地で撮影したものではありません)
| WWF中国プログラムオフィサー 陳燦より |
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龍渓虹口自然保護区は、成都の町からそれほど離れていないため、自然環境が人為的影響を受けやすい場所でもあります。 |
▼この現地レポートのオリジナルはこちら(英文/PDF:1.7MB)
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