記者発表資料 2009年3月17日
このまま温暖化が進むと、今世紀後半には地球の平均気温は4度上昇する(註1)と予測されています。その結果、海面が上昇、異常気象が頻発し、地球は大きな負担をおい、この日本にも計り知れない悪影響が起きることになります。
しかし今ならまだその被害を、なんとか許容できるレベルで留めることができるのです。そのためには、全世界が協力して、京都議定書に続く2013年以降の温暖化対策の国際約束をしなければなりません。先進国には2020年までに1990年比で25~40%の排出削減が、そして主要な途上国にも大規模な排出削減努力が求められています。
日本政府は、2020年の中期目標を6月に発表することにしています。
しかし、日本経済団体連合会を始めとする多数の業界団体が本日の各紙朝刊に掲載した、CO2排出削減対策に伴うコスト負担に関する「考えてみませんか?私たちみんなの負担額」という意見広告は、中期目標達成の「コスト負担が過大になりすぎる」という誤った認識を誘導しています。
1. 日本の一世帯当たりの負担が105万円になる?
(広告では、90年比で3%削減するためには52兆円かかり、世帯数で割ると105万円になるとしている)
- (ア) 52兆円は1年の負担額ではなく、今から2020年までの累積額である。総世帯数で割ると一世帯あたり1年間の負担はざっと7万円である。
- (イ) 52兆円は、家庭だけが負担するものではない。国や企業を含めた負担額であり、国内で使われれば内需拡大、雇用増大につながる投資である。
- (ウ) 52兆円には、省エネ効果で浮くエネルギーコスト削減分などは含まれていない。国立環境研究所の試算だと4%削減ケースでは、追加費用よりも、エネルギーコスト削減額の方が上回り、日本全体では「負担」でなく「得」になる(註2)。
2. 日本は世界トップレベルの低炭素社会? (添付資料参照)
- (ア) 1990年にはそうであったが、今は追いつかれてしまっている。
- (イ) GDPあたりのCO2排出量は、指標の選択によっては全く違った数字になる。為替レートではなく、物価の違いを反映する購買力平価で見ると、日本はほぼヨーロッパと同じであり、決してトップレベルというわけではない。
- (ウ) 一人当たり排出量では、途上国と大きな差がある。
3. 排出削減の努力をコストが高いからと敬遠しても、温暖化を放置した結果進んでしまう悪影響に対処する費用は、その数倍にのぼると予測される。
温暖化の経済分析・スターンレビューによると、世界全体で対策費用は世界GDPの1%だが、悪影響に対処する費用は、GDPの5%から20%もかかってくると予測されている。(註3)
今は、京都議定書に続く次の国際約束を決める大事なときです。今私たちの世代が決断することが、将来の地球の運命を決めるのです。温暖化対策のコストを避けるために緩い目標で済ませるというなら、温暖化の悪影響のコストはいったい誰が負担するのでしょうか?
WWFジャパンは訴えます。大事なのは、地球環境の存続です。その地球の将来がかかった決断の時期に、コスト負担が過大であるという誤った認識を広めて、温暖化対策を渋るのは、誰ですか?
註
1)IPCC第4次評価報告書第1作業部会
2)国立環境研究所:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai03tyuuki/siryou2-2_1.pdf
3)スターンレビュー(気候変動の経済学、ニコラス・スターン、2006)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=9176&hou_id=8046
添付資料
「経団連他諸団体による意見広告についてのコメント」
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