東南アジアの熱帯林に生きる
オランウータンの生息する熱帯林は、自然が非常に豊かな環境で、他にも多くの生きものたちが生活しています。
熱帯林は、地球上で最も多様な生物が生きる自然環境の一つです。さまざまな種類の植物の育つ森には、それぞれの植物を利用して生きるさまざまな昆虫、鳥や小動物、また、それらを捕食する動物が生息しているからです。
オランウータンのすむ、ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島の熱帯雨林も、きわめて野生生物が豊かな地域です。その一つ、ボルネオ島のマレーシア領サバ州を流れるキナバタンガン川は、中流から下流にかけて6万5000平方キロにおよぶ氾濫原(定期的な増水によって形成される)になっており、ここにはオランウータンやアジアゾウ、テングザル、サイチョウ、マレーコウノトリなど、多くの哺乳類や鳥類が生息しています。
失われる熱帯の森
しかし、オランウータンの生息する森は、現在どんどん失われつつあります。
地形のなだらかな平地にある森林は、多くの動植物を育む一方で、人間にとって利用しやすい場所でもあるからです。大きく育った樹木は材木として伐採され、海外へも多く輸出されています。
また人口の増加に伴う居住地や食糧の増産、ヤシ油生産のためのアブラヤシプランテーションなどは、大昔からあった自然の森を開発し、そこに息づいていた生きものたちを追いやっています。
現在のオランウータンの生息地は、ボルネオ島では東北部と西南部に分断され、スマトラ島でも北西部の小さな地域にしか残っていません。
また近年は、大規模な森林火災も多発しています。その原因を特定するのは難しいことですが、これはエルニーニョ現象のような異常気象や、熱帯林を農地や人工林へ変えるための火入れなどによるものと考えられています。
ボルネオ島のキナバタンガン川下流周辺の森林も、一見豊かに見えますが、実際の森林は、川岸に沿ってわずかに残る程度にまで減ってしまっています。しかも、残された森林は分断されつつあり、オランウータンやアジアゾウなどそこに生息する大型動物は移動が困難になって、人間とのトラブルも生じています。
一度火災に遭った場所や放棄された農地は、雑草やツル植物に覆われてしまい、どんなに時間が経っても、本来の熱帯林の景観を取り戻すことはありません。そして、このような状態では、オランウータンやサイチョウが食べる実をつける樹種は、根付くことも生育することもできません。地上数十メートルにもなる高木の育つ熱帯の森でのみ生きることの出来る動物たちは、今危機的な状況にさらされているのです。




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