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WWFの活動

【資料】COP14/CMP4におけるCDMをめぐる議論の要約と分析

概要

2008年12月1日から13日までの、ポズナニ会議でのクリーン開発メカニズム(CDM)をめぐる議論は、第1約束期間における改善点をめぐる議論が主であり、将来(2013年以降)のCDM(もしくはそれに代わる仕組み)についての議論は次回に持ち越された。第1約束期間における改善点については、いくつかの決定が出された。項目としては、たとえば、指定運営機関(DOE)の役割の強化、追加性審査およびベースライン決定における客観性の強化、プロジェクト分布の地理的不均衡問題の是正などが含まれる。ただし、今回出された決定は、いずれもCDM理事会に対して作業を求める形式となっており、即時に効果が現れるような決定は少ない。将来の議論については、2月6日までに各国からの意見提出を募り、それを基盤として議論が行なわれる予定である。

背景

今回、CDMに関する議論は以下の4つの議題項目に関して設置されたコンタクト・グループにおいて、並行して行われた。

AWG KP議題項目「手段の分析」:

今回のAWG KP会合の議題には、先進国が目標達成に使用することが可能な「手段」(means)の分析が含まれていた。これは、既に2008年内に行なわれた3つの会議でも継続的に議題として挙がっていた項目で、具体的には、柔軟性メカニズムおよび森林吸収源の将来枠組みにおける扱いなどがこの議題項目には含まれる。CDMは、3つの柔軟性メカニズムの1つであるため、この項目に当然含まれる。以下の4つの議題項目と異なるのは、ここでの議論は主に将来(2013年以降)に焦点があるということである。

COP/MOP議題項目「CDM関連争点」:

この議題項目は、もともとCDM理事会の報告を年1回COP/MOPが受け取るという毎年のCOP/MOPで恒例の項目である。それに合わせてCDMに関する一般的な事項を議論することが慣例になっている。今回も、例年と同じように、CDMの運営に関わる様々な議論が行なわれた。

COP/MOP議題項目「議定書9条に基づく見直し」:

この議題項目は、2006年のCOP/MOP2で行なわれた第1回に引き続き、第2回目の京都議定書全体の見直しを行なうべく設定されたものである。2007年末のCOP/MOP3において、今回の見直しにあたって重点を置くべき事項5つが確認された(FCCC/KP/CMP/2007/9/Add.1)(*1)。その5つの中に、柔軟性メカニズムの範囲・有効性・機能が含まれるため、CDMに関する議論も対象になっていた。

SBSTA議題項目「二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い」:

2006年のCOP/MOP2の決定において、二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトのCDMでの扱いについては、今回の会合までに決定を出すことが合意された。そして、SBSTAが今回の会合までにCOP/MOP決定についての提案を準備する予定となっていた。

以下では、基本的にこれら4つの場それぞれの議論の概要を示すが、今回、「CDM関連争点」と「議定書9条に基づく見直し」の2つの議題項目に含まれる論点では、いくつか重複が見られた。たとえば、両方の議題項目とも、プロジェクト分布の地理的不均衡の問題について議論をする予定となっていたし、追加性審査・ベースライン決定の問題についても、両方の場で議論が可能であった。このため、COP/MOP議長は、これら2つの議題項目において扱うべき論点についての仕分けを行い、特に、地理的不均衡の問題については、「CDM関連争点」において優先的に議論すべきという提案をした。ただし、全ての国がそれに納得をしたわけではなく、実質的な議論では、重複は若干残った。

  • (*1)5つの項目とは、1)CDMプロジェクトからのCERの一部("収益の一部"(share of proceeds))をとり、適応基金の資金源にするという仕組みを、他のメカニズム(共同実施(JI)・排出量取引)にも拡大するという提案の検討、2)附属書I国の中にあり、まだ目標を持っていない国が排出量削減数値目標を持つための手続きの簡易化の検討、3)議定書関連機関に勤める個人の特権・免除の検討、4)柔軟性メカニズムの範囲・効果・機能(プロジェクト分布の地理的不均衡を含む)についての検討、5)気候変動の悪影響の検討である。

CDMの将来に関する議論

2013年以降、CDMをどのような形で継続していくのか(いかないのか)という問題や、その代替となるような仕組みについての議論は、理論的には2つの場で起き得る。1つは、AWG LCAであり、もう1つはAWG KPである。

AWG LCAにおいては、「緩和」(mitigation)の議論の一部としてこれらの論点を議論することができる。途上国における削減行動の議論、すなわち、「当該国にとって適切な緩和行動」の一形態として、CDMの継続や、CDMに代わる仕組みの議論が存在しえるからである。ただし、現在までのところ、AWG LCAでの議論はカバーされる領域が非常に広いため、CDMの将来に関する個別具体的な議論は起きていない。各国からの提出意見をまとめたいわゆる「アセンブリー・ペーパー」(assembly paper)には、CDMの将来および代替の仕組みに関するアイディアも多く含まれているが、会議場での詳細な議論、そして具体的な交渉にまでは発展していないのが現状である。アセンブリー・ペーパーは、ポズナン会議の期間中に一度再編された(FCCC/AWGLCA/2008/16/Rev.1)が、今後、2009年2月6日までに再度意見提出を募り、次回会合では、再び議長が土台となる文書を準備する予定である。したがって、次回以降の会議で、議論がこちらでも本格化していく可能性はある。

しかし、現状では、CDMに関する議論は、先行して議論が行なわれてきたAWG KPにおいて具体化している。上述した通り、「手段の分析」という議題項目の論点の1つとして、CDMは重要な位置を占めている。

1つ前のアクラでのAWG KP会合では、2つの論点のリストが、AWG KPの結論に対する附属書という形で採択された(FCCC/KP/AWG/2008/5の附属書IおよびII)。2つのリストの違いは、附属書Iのリストに載っている方の論点はやや詳細な選択肢が示されており、附属書IIのリストに載っている方の論点は、純粋な論点の羅列になっている点である。一般的な理解としては、附属書Iのリストに載っている論点の優先度がより高い。今回の会議に先立ち、議長が論点をさらに整理・詳述した文書を準備した(FCCC/KP/AWG/2008/INF.3;以下、INF文書と略す)。

今回の会議では、この「手段の分析」を議論するための非公式協議の場が設けられた。この非公式協議は非公開であったため、議論の全容を知ることはできなかったが、実質的な議論はあまりされなかったようで、最終的には今後の日程についてのみ合意がされた。その日程は、他の日程とともにAWG KPの作業計画として採択された。それによると、2009年2月6日までに、各国は上述の2つのリストおよび議長の準備したINF文書を踏まえての意見を提出することになっている(FCCC/KP/AWG/2008/L.19の第7段落)。関連して重要なのは、同じ作業計画の中に、「セクター単位での排出量を対象としたアプローチ」についても、2009年2月15日までに意見を提出することになっている点である(前掲文書の第12段落)。この「セクター単位での排出量を対象としたアプローチ」という議題項目は、国際航空・船舶という「セクター」を対象とした削減の仕組みについての議論が含まれるが、同時に、セクターを対象としたCDM(いわゆるセクターCDM)のような考え方も、議論の対象として混在している。

CDMの運営上の改善点についての議論(議題項目「CDM関連争点」)

今回の会議では、CDMの運営上のいくつかの改善点が議論になった。最終的な決定は、FCCC/KP/CMP/2008/L.6にある(*2)。

  • (*2)厳密には、L.xという番号の付くL文書は、各会議の総会に提出される最終決定草稿文書であり決定文書そのものではないが、多くの場合はそのまま採択される。今回も特に変更はなく採択された。正式な決定の文言が今回の会議の報告書に含まれるまでには時間がかかるため、本稿ではこの文書をそのまま使う。

指定運営機関(DOE)の役割(第26-27段落)(*3):

ポズナニ会議の直前に開催されたCDM理事会において、世界でも有数のDOEであるDNVの資格停止が発表された。ここ数年、本来であればCDMプロジェクト承認プロセスにおける最初の評価者としてのDOEが、その責任を十分に果たしておらず、結果として非追加的なプロジェクトが多く発生することの遠因になり、かつCDM理事会本体のプロジェクト評価に関わる業務量超過の原因になっていることが批判されてきた。

DNVの資格停止は、そうした文脈の中で発表されたため、この問題の深刻さを端的に示したことになる。こうした事態をうけて、主にEUが、DOEのパフォーマンスを評価するため体制を強化する提案を行なった。交渉のある地点では、現状、プロジェクト実施者がDOEを選択し、支払いを行なう形式となっているのを改めて、条約事務局がDOEを割当て、支払いを行なう形式で行なうことの検討をするという案も議論されたが、最終的な合意文書には反映されなかった。

これは、現行の形式では、DOEにとってプロジェクト実施者は「顧客」であり、厳しく審査して、プロジェクトの有効化を行なわなかったり、時間をかけてコスト高になったりすれば、顧客を失うことにつながる可能性があるため、そうしないようにするインセンティブが構造的に存在するとの批判から生まれてきた考え方である。

最終的なCOP/MOP決定は、CDM理事会に対し、以下の3つを行なうことを指示している。第1に、DOEのパフォーマンスを監視する仕組みを作ること。第2に、DOEが要件を満たすことを保証する仕組みを作ること。第3に、DOEの「公平性および独立性」(impartiality and independence)に関する分析を行ない、その結果を次回のCOP/MOP5にて報告すること、である。

  • (*3)括弧内は、最終決定草稿文書(FCCC/KP/CMP/2008/L.6)における該当段落。

追加性審査およびベースライン決定における客観性の強化(第36-37段落):

CDMのプロジェクト審査において、追加性審査およびベースラインの決定は鍵となる部分だが、その実践については多くの批判がされてきた。一方では、追加性審査が、様々な問題から結果として多くの非追加的なプロジェクトを生み出していると批判している。WWFが専門家に委託して行なった調査では、実に20%のCDMクレジットが、非追加的なプロジェクトから発生したクレジット(つまり削減になっていない)であるという推計もされており、問題は深刻である。

他方で、現状の追加性審査は、「プロジェクトがCDM無しでも実施されたかどうか」ということを審査するため、プロジェクト実施者の主観に関わる部分(例:どれくらいであれば十分投資に値すると判断するか)を判断したり、審査の中で使う指標の統一性がなかったりして、審査の透明性を損ねているという批判がされている。後者の批判について注意すべきは、この批判は、追加性審査をより強化したいと考える環境NGOや専門家も主張しているが、追加性審査をより簡易にかつスムーズにしたいと考えているプロジェクト実施企業や専門家、コンサルタントも主張しているという点である。

こうした2つの全く異なった思惑から、結果としては、似たような提案、すなわち、追加性審査の客観性を高めるという提案が出てきている状況はやや皮肉といえる。今回の議論の中では、各国の間で、なんらかの形でより「客観性」を導入するということ自体については意見の違いが少なかったようだが、そのあり方については意見が分かれた。客観性の強化を主に主張したのは、EU、アルゼンチン、ニュージーランドであった。
この議論の中でポイントとなったのは、「ベンチマーク」という言葉の使用であった。EUとアルゼンチンはベンチマークの使用を導入することに前向きであったが、多くの途上国(ブラジル、インド、南アフリカ、韓国等)はこれに反対した。その主な理由は、ベンチマークというのが、先進国によって「強制された」基準を示唆するからであった。

最終的には、「ベンチマーク」という言葉の使用は避けられる形で合意がされ、追加性審査の中の重要要素である投資分析(investment analysis)、障害分析(barrier analysis)、一般慣行分析(common practice analysis)の各分野において、客観性の導入を強化することをCDM理事会に求める決定がなされた。

プロジェクト分布の地理的不均衡(第51-54段落):

2009年1月現在、CDMのプロジェクトとして国連に承認・登録されているプロジェクトの数は約1300件あるが、その4分の3が、上位4カ国(インド、中国、ブラジル、メキシコ)に集中しており、アフリカは地域全体でも全体の2%程度にしか満たない。
こうしたプロジェクトの地理的不均衡の問題の改善については、過去の会議でも議題に挙がっていたが、今回は特に集中的に議論が行なわれた。

コンタクト・グループの議長が最初に出してきた決定草稿文書の中では、いくつかの優遇措置のようなもの実施をCDM理事会に求める内容になっていた。
具体的には、CDMプロジェクトの承認プロセスを迅速化したり、(一番難しい部分とされる)方法論の開発を促進したりすることを、CDM理事会に求めることが提案されていた。

問題となったのは、その優遇措置の適用範囲であった。議長の当初の提案では、2つの条件が付けられていた。1つ目は、「(CDM理事会で承認・)登録されたプロジェクトの件数が5件未満」の国という条件である。2つ目は、「特に、後発開発途上国、小島嶼国およびアフリカの」国という条件である。これらについて、一部の途上国、特に、コロンビア、ボリビア、ペルーらが、自国にもこのような優遇措置が適用されるように条件を変更することを主張した。

提案された修正の一例としては、先の1つ目の条件を「登録されたプロジェクト総数の5%未満しか件数を持たない国」というものがあった。もし仮にこの条件が適用されると、これは事実上、上位4カ国以外全ての国にこの優遇措置が適用されることを意味した。また、上述の国々は、2番目の条件に関する文言を消去することも主張した。こうした修正が適用されれば、おそらく、中程度に発展している国々のプロジェクト件数は増加するかもしれないが、本来の目的である最貧国やアフリカでのプロジェクト件数の増加にはあまりつながらない可能性があった。こうした修正については、EUや日本は基本的には反対していた様である。

最終的な決定文書での文言は、CDM理事会に対して、「登録されたプロジェクト件数が10件未満の国々、特に後発開発途上国、小島嶼国、およびアフリカ」についてはCDMに関するプロセスを迅速化することを求めると同時に、「CDMに十分に参画できていない国々」("countries underrepresented in the CDM")のニーズに対応して、方法論の開発・承認を促進することが求められている。

CDM理事会決定の根拠(第12段落):

CDM理事会の決定は、しばしばその根拠が不透明であったり、一貫性が無かったりするという批判が多くのプロジェクト実施者や国々から上がっていた。
EUは、過去の決定を整理された形で「分類し、索引を付け、公表する」ことと、各決定の決定根拠を公表することをCDM理事会に対して求めることを提案した。ブラジルやコロンビアはこうした提案、特に後者についてはあまり好ましくないという意見を示した。最終的には若干の条件が付けられる形で妥協がはかられ、CDM理事会は決定根拠を発表することを求められた。

植林・再植林CDM(AR CDM)の適格性を「枯渇した植林地」(Planted Forests in Exhaustion; PFE)に拡大する(第42段落):

これは、ブラジルが提案した考え方である。基本的には、産業植林などで、植林と伐採のローテーションが何回か繰り返されて生産性が落ちた地域で、再度別種の植林を行なうようなケースを、CDMプロジェクトとして認めるべきであるという主張であった。
植林がされた土地は、当然ながら定義上「森林」なので、対象地域が森林でないことが条件になっているAR CDMの適格性は満たさない。しかし、ブラジルの主張は、人為的な関与がなければ生産性が落ちた(枯渇した)地域での適切な植林は行われないので、一概に非適格としてこのようなケースを排除すべきではないという考えであった。

森林の自然な成長等の問題については、追加性審査やベースライン決定において判断すればよいという立場である。この提案は多くの国々よって反対されたが、ブラジルは固執したため、後述する二酸化炭素回収地中貯留の問題とともに閣僚級会合に最終決着が託された。しかし、最終的な結論は出ず、妥協として次回のCOP/MOP5に決定が先送りされた。

二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い(第41段落):

この問題は、後述するように元々はSBSTAの議題項目として設定された。しかし、SBSTAでの議論が決着を得ることをできずに、再び結論を先送りにしたことで、サウジアラビア、カタール、アルジェリアなどの産油国は、この問題を「CDM関連争点」および「議定書9条に基づく見直し」の双方の議題項目において盛り込むことを強く主張した。
「議定書9条に基づく見直し」の議論では比較的早くこの問題は消えたが、「CDM関連争点」の決定層公文書におけるこの問題の該当文言は、上述のブラジル提案のPFE問題とともに、閣僚級会合にまで議論がもつれ込んだ。

最終的には、PFE問題とともに、妥協として次回のCOP/MOP5に決定が先送りされた。これら2つの問題は意図的にパッケージ化されたようである。その理由は、おそらく、二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトをCDMプロジェクトとして認めることに反対をしている国の急先鋒がブラジルであることと関係がある。

CDMの組織構造上の課題を中心とした議論(議題項目「議定書9条に基づいた見直し」)

CDMの組織構造上の課題は、主に「議定書9条に基づいた見直し」という議題項目の下で設置されたコンタクト・グループで議論された。今回の議定書9条に基づく見直しには、前述の通り5つの論点が含まれていたが、そのうちの1つがCDMを含む柔軟性メカニズムの範囲・有効性・機能が含まれていた。論点は、柔軟性メカニズム全体、つまり、CDMだけでなく共同実施(JI)や排出量取引も対象としていたが、議論はほぼ全てCDMを念頭においたものであった。

この議定書9条に基づく見直しの決定草稿文書では、CDMに関係する文言は最終的には合意はできていたが、他の部分、特に、いわゆる「収益の一部」拡大問題において合意ができず、議論は閣僚級会合まで挙げられた。しかし、閣僚級会合においても合意ができなかったため、最終的には文書は全く採択されず、完全な決裂という形で終わってしまった。このため、ほぼ合意ができていたCDMの部分も結局流れてしまった形になる。以下は、CDMに関する争点の一部を、この「ほぼ合意」ができていた文書に基づいて示したものである。便宜上、「合意された」という説明をしているが、決定には含まれていない。

事務局への一部作業の委任:

現在、未承認・登録のものも含めたCDMプロジェクトの総数は、4,000以上になっている。すでに承認・登録されたプロジェクトの数は約1,300あるので、2,700のプロジェクトが今後承認プロセスに入ってくる可能性がある(*4)。

過去に承認してきた1300というのは、2001年からの累計数であるので、2,700という数字は極めて大きい。しかも、最終的な承認を行なうCDM理事会は、多くて1~2月に1度しか会合を開かないことになっているため、理事会が許容しうる作業量を超えてきていることは間違いない。これについては、CDM理事会を常設化するなどの案もあったが、今回、議論の中心となったのは、議長が決定草稿提案に示した、事務局に一部作業を委任するという案であった。

特にEUは、プロジェクトの技術的な問題を評価する作業は事務局に委任し、理事会はより管理的な作業に専念すべきとの提案を示した。これには、中国が強く反対をした。その理由は、ドイツ・ボンに拠点を置き、スタッフの人員もヨーロッパ色が強い事務局に対する不信感が大きかったようである。
日本も、これによって問題が解決するとは考えておらず、事務局の非効率性が是正されないと効果は薄いと考えていたようである。こうした対立があったため、最終的には「補助機関の役割を強化することで、意思決定過程を迅速化する」ということをCDM理事会に求めることで妥協が図られた。また、その結果について、次回のCOP/MOP5において報告を行なうことを勧告している。

  • (*4)提案はされていても、最終的には登録が申請されないプロジェクトもあるため、2,700が全て登録申請される可能性は少ない。他方、今後、プロジェクトの数が増える可能性もある。

TORおよび行動規範(code of conduct):

EUは、CDM理事会構成員の行動規範およびTORを設定することを提案した。これもまた、中国からは強く反対された。日本も、CDMの役割は過去のCOP/MOP決定によって定められており、何か足りないとすればそこを見直すことから開始すべきであると反対した。この点に関して具体的にどのような議論が起きたのかの詳細は不明だが、最終的には、CDM理事会に対して行動規範の作成とその暫定的な適用を求める形で妥協が成立した。

CDM理事会の決定に関する控訴の仕組み:

一部の国々から、CDM理事会の決定に対して控訴を行なうことを可能にする仕組みを作るべきだとの提案がされた。これについても、具体的な議論の詳細は不明である。合意された文言では、CDM理事会が行なう分析に基づいて、COP/MOP5において検討を行なうことが述べられていた。

二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い(SBSTA議題項目)

2006年にナイロビで開催されたCOP/MOP2において、二酸化炭素回収地中プロジェクトをCDMで認めるかどうかについては、今回のCOP/MOPで決定するという決定がされていた。

しかし、過去2年間の議論において、この問題に関する賛成派と反対派の対立の溝は埋まっていなかった。一方では、ブラジル、インド、小島嶼国連合(AOSIS)が、かたくなにCDMとして認めることに反対していた。
その理由としては、CDMは再生可能エネルギーや省エネルギープロジェクトを優先すべきということや、大量のクレジットが出てくることによる市場へのインパクト、そして何より、技術としての安全度・信頼度について十分な試行がされていないことなどが挙げられていた。

他方で、サウジアラビアを筆頭とする産油国、EU、カナダ、ノルウェイ、日本らの国々は全てCDMに入れることに賛成の立場をとっていた。EUは過去の会議において、とりあえず試行期間を設け、その期間内はプロジェクトのクレジット期間や発行クレジット量に条件を設定する形でテストをしてみてはどうかという立場をとっていた。今回の会議でも、両者の溝は埋まらず、SBSTAの決定文書では端的に今回決定に至らなかったことが述べられている(FCCC/SBSTA/2008/L.21)。

会期の日程上、このSBSTAにおける結論は他のCDM関連の議題項目よりも先に出された。このことが、サウジアラビア、カタール、アルジェリア等の産油国の他の議題項目での態度を硬化させる要因になったようである。

まとめ

以上で見てきたように、今回の議論の主要な部分を占めたのは、CDMの運営ルール上の様々な課題と、組織構造上の議論であった。CDMは、京都議定書の他の制度と異なり、2001年時点から運用が開始されているため、議論の性質も、実践の中から発生してきた課題に対応するかなり具体的な性質を持ったものとなってきている。中でも特筆すべきは、DOEの役割強化、追加性審査での客観性強化、そしてプロジェクト分布の地理的不均衡是正のための措置であろう。

まず、DOEの役割強化は、CDMが仕組みとして適切に機能していくためには極めて重要な事項であるため、今回、それへ向けての決定が出たことは歓迎すべきである。DOEによって十分にプロジェクト評価が行われないことが、結果的にCDM理事会に大きな負担をかけ、承認プロセスの遅延を招く要因の1つとなっていることも考えると、CDMという仕組みを改善していくにあたっての1つの鍵を握る部分であるといえる。いかにそれを達成していくべきかについては、今後の理事会での議論を見ていく必要がある。

追加性審査の客観性強化についても、より基準がはっきりしてくるという意味では基本的には好ましいと考えられる。しかし、これに関しては、追加性審査をより緩くさせるための機会ととらえる関係者もいるため、却ってCDMの環境十全性が損なわれる結果とならないよう、注視していく必要がある。

プロジェクト分布の地理的不均衡の是正については、弱いながらも2つの措置が注目に値する。1つは、承認プロセスの迅速化であるが、具体的に何を行なうのかが不明であるため、現時点では判断がつかない。もう1つの方法論開発に関する措置は、対象となる国の定義("underrepresented in the CDM")がいかになるかという点がポイントになる。

いずれの論点についても、理事会に対して作業が求められたことになるので、具体的な影響は今後に発生してくると考えられる。むしろ、注目すべきは今回の地理的不均衡に関する議論が引き起こした対立の難しさであるかもしれない。今回の議論は、地理的不均衡を是正するための特別措置について、どの国が適格性を有するかを議論したということから、これからより広い文脈でおきると予想される途上国の差異化の議論を先取りした部分がある。その議論が、今回の会議全体が最終日に深夜までもつれ込む要因の1つになるほどの対立をもたらしたというのは、今後の議論にとっても示唆的である。

今回は本格的な議論にはならなかったが、CDMの将来についての議論も、今後本格化していくと考えられる。特に、2月6日が締め切りとなっているAWG KPに関する意見提出や、2月15日が締め切りとなっているAWG LCAに関する意見提出をベースとして、今後、どの程度議論が収束していくのかが見どころである。これまでにも、セクトラル・クレディティング・メカニズムやノールーズ目標などの新しいメカニズムの考え方や、CDMクレジットの割引(ディスカウント)、持続可能性評価の取り入れなど、様々なアイディアが出されているが、メカニズム全体がどういう仕組みになるのか、そして、それがより大きな「緩和」への取り組み全体の中でどのように位置づけられるのかを示した提案というのはほとんど無い。コペンハーゲン合意までに、どの程度詳細が決定されなければならないのかという問題と共に、今後、CDMの将来が、将来枠組み全体の中でどのような位置づけになるのかについての議論が必要となってくると考えられる。

 

【COP/MOP4】国連気候変動ポズナニ会議 関連情報

 

2009/1/22

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