マグロの資源が減っているのに、安価なトロが今もあふれている日本。一般の消費者が資源の状況を実感するのは、とても難しい状況ですが、安くて大量のマグロが並ぶ背景には、実はさまざまな問題があります。
どこのマグロが減っている?
日本をはじめ、世界中では毎年大量に消費されているマグロ類。しかし近年、中にはその資源量が懸念されるマグロも出てきました。原因はやはり「獲り過ぎ」です。
水産庁は、数種のマグロについて、資源状態を3つの段階(高位、中位、低位)にわけて評価しています。
| ビンナガ | 太平洋 | |
|---|---|---|
| ビンナガ | 南大西洋、インド洋 | |
| キハダ | 太平洋、大西洋、インド洋 | |
| メバチ | 西太平洋、インド洋 | |
| クロマグロ | 太平洋 | |
| メバチ | 東太平洋、大西洋 | |
| ビンナガ | 北大西洋 | |
| クロマグロ | 大西洋 | |
| ミナミマグロ | 南半球 |
資料:水産庁「平成17年度 国際漁業資源の現況」を基に作成/(*:東大西洋のクロマグロ資源量はWWFの調査による)
まず、全体的に資源状態が良くないのは、ミナミマグロです。そして、西部大西洋のクロマグロ、大西洋や東部太平洋のメバチが、資源水準がもっとも低いランクになっています。
これらは比較的冷たい海域に棲む、脂ののったトロの多いマグロです。つまり、刺身として消費されるマグロは、その多くが、資源が減少し始めているということになります。
一方、温かい海域にすむ、脂の少なく缶詰などにされることが多いキハダや、ビンナガは、資源水準が真中か、良好のランクです。これは、刺身としての需要が、世界のマグロ資源を圧迫している、一つの現れと言えるかもしれません。

このまま、適切に資源を管理せず、マグロを消費し続けた場合、マグロがいずれ食べられなくなってしまう日が来るかもしれません。
そうならないようにするためには、マグロを漁獲し、消費している国々が、国際条約の約束を守って、しっかり資源や漁獲を管理すること。そして、国だけでなく流通関係者さらには消費者が、資源の変化や違法な漁業を監視して、適切に管理されたマグロのみを消費することが大切です。
マグロの資源管理および漁獲量の割当について
海の中の魚は適切に資源管理をすれば、持続的に利用することができます。適切な管理とは、獲ってよい魚の量、大きさや時期を決めたり、獲る目的のない生物まで獲らないようにしたり(混獲の回避)、漁獲の際に海の生物がすむ生息環境を破壊しないようにすることです。
マグロについては、世界の海域ごとに、マグロの資源管理を目的とした5つの国際条約機関があり、資源管理のためのルールを定めています。

違法漁業と過剰な漁獲
海を広く回遊するマグロは、一つの国だけでは資源管理ができません。そこで、国際条約機関によって資源管理のためのルールが定められています。
現在、世界には海域ごとにマグロの資源管理を目的とした5つの国際条約機関があり、海域ごとに各国が獲ってよいマグロの量や大きさ、漁期などを魚種ごとに定めています。
しかし、せっかく、マグロの資源管理のための国際的な枠組みがあっても、それが活かされなかったり、枠組みを逸脱した違法な漁業が横行すれば、資源は枯渇してしまいます。実際、このような例は、世界中の海で後を絶ちません。最近でも次のような違法漁業や過剰漁獲が行われてきたことが明らかになっています。
違法漁業、過剰漁獲の事例
■中国船によるメバチの原産地偽装
■日本船によるミナミマグロの過剰漁獲
■台湾船によるメバチの原産地偽装
■地中海のクロマグロの違法漁獲
さまざまな問題
マグロの問題は、資源の乱獲だけではありません。その生産の過程では、次のような問題も起きています。
蓄養マグロの問題
スーパーマーケットなどで、「養殖」と表示されているマグロは、実は完全な養殖ではなく、「蓄養(ちくよう)」という方法で供給されたものです。「蓄養」は、海で獲ったマグロを生け簀で育てて、餌をたくさん与えて大きく太らせ、脂(トロ)を乗せた上で売りに出す、という方法。資源の乱用や餌の扱いによって、深刻な海の環境問題になり始めています。
マグロ漁による混獲の問題
漁業で目的外の生物を捕獲してしまうことを混獲といいます。マグロ漁でもこの混獲の問題が起きています。たとえば、延縄漁ではウミガメや海鳥が、巻網漁業ではウミガメやイルカ、獲る必要の無いマグロの幼魚が混獲されており、大きな問題になっています。仮に、一隻の漁船が混獲してしまう生物の量は少なくても、全世界で操業する漁船の数を考えると、その影響ははかりしれません。




