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活動トピック

WWFのトラ保護活動

トラとその生息地の自然を守るために

野生のトラの絶滅を食い止めるため、WWFはいくつかの長期的な保護プロジェクトを展開しています。虎骨やサイ角といった漢方薬に重点を置いた、違法な野生生物取引に関する調査や監視活動、生息地の保全の強化、保護区の管理官やトラと地元の人々の間で起きる軋轢の軽減、地域の自治体を通じたフィールドスタッフや、公園管理官、住民に対する普及や訓練の実施、密猟の防止がプロジェクトのねらいです。

また、トラの生息地以外の国々でも、積極的な支援と協力の呼びかけを行なってきました。1993年「プロジェクト・タイガー」の20周年を記念して、IUCNのキャット・スペシャリスト・グループのメンバーとWWFを含めた世界中の専門家が「グローバル・タイガー・フォーラム」を発足させる署名を行ないました。
この署名には、トラの生息国である14カ国中、中国、北朝鮮、ラオスを除く11カ国が参加し、1994年3月にはニューデリーで初めて、各国政府の高官が集った会合を開きました。さらにWWF主催の1995年3月の会合で、カンボジア、ラオス、ベトナムの専門家が初めて顔を合わせ、トラを救うための地域協定が作成されました。

資金支援については、1993年、WWFオランダがインドシナのトラ保護プロジェクトを支援するため、70万USドルの寄付を集め、WWFイギリスも1995年にインドシナトラおよびベンガルトラ保護の募金キャンペーンを行いました。WWFドイツも同年11月にアムールトラ保護のためのキャンペーンを行っています。

さらに、1998年には、年の干支である寅年に合わせ、WWFは国際的なトラ保護のPRを行ないました。
WWFジャパンも1997年から98年にかけて、国内でトラ保護の呼びかけを行ない、トラ保護や調査のための募金を行なったほか、トラを脅かす密猟の大きな原因となっているトラ骨の日本国内での販売規制を含めた法体制の改正などを求めました。多くの方にご協力をいただいた署名や、政府への働きかけの結果、2000年4月、日本では「種の保存法」が改正され、トラの身体を含めた製品の国内での売買が禁止されることになりました。

世界各地での取り組み

インド

トラ保護活動と保護区管理

1991年、WWFはイギリスの海外開発庁と協力し、ランサムホール国立公園一帯で、地域の環境開発プロジェクトを支援しました。このプロジェクトは、一般の地域と保護区の間に位置する緩衝地帯(バッファー・ゾーン)で行なわれ、公園近隣の3つの村がその試験的な実施場所に選ばれました。
プロジェクトのスタッフは、人々が暮らす上で公園内の資源を利用しなくてすむ方法を模索し、地域の人々と共に、バッファー・ゾーンの荒廃した自然を回復する取り組みを行なっています。また、このプロジェクトでは、燃料用の薪のための植林や、畜産技術の改良、土壌や水の保全計画、生活のための労働を強いられている女性への支援を行ないました。

また、1994年のグローバル・タイガー・フォーラムでは、WWFはインド政府によるトラ保護活動の新しい取り組みを支援するため、10万USドルの資金提供を行いました。また、長期間に及ぶ保護区プログラムを計画。インドにおけるトラ保護区のネットワーク強化のため、国内の野生生物専門家であるランジットシン博士をコンサルタントとして起用し、様々な活動を展開しました。
1995年から96年にかけて、WWFはインドのマナス、ドュドワ、ランサムホールの各保護区を始めとする特定のトラの保護区を選出し、その各地域で環境開発と保全を両立する提案を実施してきました。その主な活動は以下のような内容でした。

  • 保護区内におけるNGOの監視ネットワークの設立

  • 活動をアピールするキャンペーン活動を行い、メディアの関心を引く

  • 保護区のデータベースの作成

  • 普及や教育活動の実施

  • 政府の政策や保護計画、法律、またその決定に対する助言や提言

  • 保護に関わる人たちの人材育成


インドのトラ保護政策が開始から25周年を迎えた1998年の寅年、インド政府は大々的な保護活動の拡張を発表しました。保護のための予算がほぼ倍額の1100万ドルに増額されたほか、23カ所のトラ保護区が25カ所に拡充されたのです。また既存の保護区についても、地域での取り組みを重視した保護計画が進められることになりました。

WWFのTCP(Tiger Conservation Programme)

WWFは1997年に設立したトラ保護プログラム(TCP:Tiger Conservation Programme)での活動を通じ、インド政府の取り組みを支援しています。このプログラムの部長には、1972年にインドでトラ保護活動の第一歩を踏み出し、以後NGOによる保護活動などを通じて大きな功績を残してきた、ランジットシン博士が就任。以後、このTCPはWWFのトラ保護活動において、最も重要な取り組みとなりました。
TCPの活動は、保護区のみに限らず、トラが生息する地域に広く共通した持続的な利用と保全をめざすものです。この取り組みの中には、各地域での保護計画や、保護区をめぐる中央政府と州政府の間の協力体制を補強する活動が含まれます。
TCPは、特に重要な7つのトラの生息地域に、ラジオや自動車、ボート、そして活動資金を供給し、さらに9つの国立公園に対しても支援を行ないました。また、あまり知られていない生息地についても、保全することで長期的なトラ保護に繋がると考えられる場所については、支援を行なうことにしています。
TCPの主な活動は、次のとおりです。

  • 特に重要なトラの生息域で政府が実施する密猟対策や、調査・保護の上で必要とされる技術を支援すること
  • 違法な取引を監視するトラフィック・インドの活動を強化し、密猟対策のためのネットワークを各地域にも広げること

  • トラの生息地での調査と現状の評価を行なうこと

  • 保護区の管理活動を支援すること

  • 人とトラの間で起きる衝突を減らすこと

  • 保護に携わる人材の育成を支援すること

  • トラ保護に関する広報活動を行なうこと


また、TCPは、トラの調査方法に関するフィールド・マニュアルも作成。さらに、インドのトラ研究機関やトラフィック・インドと共に、野生生物の密輸対策として、インド-チベット国境警察のトレーニングも実施しました。これまでに、TCPが支援してきたインド国内の保護区は、19カ所にのぼります。この他、家畜がトラに襲われた際に、被害に遭った地域住民に対して補償を行なう制度の導入にも協力。この制度は、1998年にスタートしました。
しかし、それでも保護区外の地域では、トラと人間の衝突が続いている場所が多く、根本的な解決が必要とされています。1999年、TCPは、1998年1月から1999年9月までの間にトラに殺された家畜の数は1225頭にのぼると発表しました。

バングラデシュ

ガンジス川の河口、バングラデシュとインドの国境を越えて広がるマングローブの大湿地帯スンダーバンズは、世界最大のトラの個体群が生息する保護区です。ここには、インド側とバングラデシュ側、双方併せて、500頭から600頭以上のベンガルトラが生息していると考えられています。しかし、ここでも、森林の違法な伐採や木材の取引、野生動物の密猟や密輸、過剰な漁業などが起こっており、トラをはじめとする多くの野生生物に危機が迫っています。
これらの問題に対し、WWFはバングラデシュ政府と協力しながら、活動を行なっています。また、2001年には、インドとバングラデシュのトラ保護関連の専門家を集め、保護や調査のための技術向上をめざしたワークショップを開催しました。

ネパール

WWFはネパールの野生生物国立公園省の設立を支援し、インドサイやベンガルトラなどの保護に長く携わってきました。その主な活動は、チトワン国立公園、バルディア国立公園、さらにスカラ・パンタおよびパルサ野生生物保護区などで行なわれました。
1991年、WWFは国立公園野生生物保護局に対してチトワン国立公園、バルディア国立公園でのトラやインドサイの密猟問題対策を支援するプログラムを立ち上げました。アメリカのマッカーサー基金と共に、WWFは密猟対策部隊を保護区内に組織。1995年には、WWFオランダが資金支援を行ない、さらに組織を拡大しました。この組織の編成による取り組みは、のちにパルサ野生生物保護区にも広げられることになります。
また同じく1995年には、国立公園野生生物保護局の後援で第二回ワシントン条約トレーニングと一般への啓発ワークショップが開催されたほか、トラの保護プランに必要な機器の提供や、生息調査を実施したりしたほか、メディアや学校を通じ教育プログラムも実施されました。

しかし、1990年代初頭、チトワン国立公園では、大規模なトラの密猟が起こり、公園西部では生息個体の25%が密猟に遭いました。1995年にチトワン国立公園やパルサ野生生物保護区で押収された虎骨は8件。その大半は完全な骸骨の状態でした。
その後、ネパール政府は保護の取り組みに乗り出し、1993年、村人の通報で35人の密猟者や取引人を拘留したほか、トラフィックと共同で取引の現状調査を実施。WWFも、1990年から1994年にかけて行なわれたこれらの取り組みを支援しました。その結果、一時は個体数の減少に歯止めがかかり、密猟は減少。しかし、完全に密猟や密輸が無くなったわけではなく、継続した取り組みが求められています。

チトワン国立公園

1989年、WWFはネパールでトラ関連の環境保全型開発プロジェクトを開始しました。その最初のフィールドになったのが、インドサイやトラなど、多くの野生生物が生息するチトワン国立公園周辺の森林です。米国国際開発庁(USAID)の援助やマッカーサー基金の支援を基に、野生生物管理トレーニング施設用の場所や機材を選定し、その場所で生活している農民たちとともに植林事業を開始しました。

燃料になるなど実用性が高い固有種7種の若木を数万本と、草が植えられました。原則的に自然資源の利用を禁じた自然保護区と、地域住民が利用可能な周辺の緩衝地帯(バッファー・ゾーン)を分けた国立公園の管理手法は、ネパールでは1993年に法制化され、今に至っています。
この他にもWWFは、ネイチャーコンサーバンシー、世界資源研究所と共に取り組んでいる生物多様性ネットワークの活動を通して、国立公園の周辺に住む約6万人の農家の人々が参加した普及プロジェクトも実施しました。これは各地域で行なわれていた森林保全プログラムの成功を拡大させる試みで、村の人が利用する森林資源の確保や、洪水の防止、そして木材の伐採により劣化した森林をよみがえらせることを目的としたものです。とりわけ、荒廃してしまった1000ヘクタールのバッファー・ゾーンで森林を回復させることは重要でした。

また、このプロジェクトで実施したエコツアーによる利益は、地域住民に還元されたほか、森林保全プログラムの費用に充てられました。プロジェクトは生物多様性ネットワークによって1994~1997年にかけて初期段階の実施が支援され、WWFアメリカも資金支援を行ないました。さらにWWFは、キングマヘンドラ自然保護財団に対しても技術支援を実施しました。

バルディア国立公園

チトワン国立公園と並び、ネパールで最も重要な国立公園が、バルディア国立公園です。WWFは1973年からバルディア国立公園での野生生物とその生息地の保護プログラムを支援してきました。以後、1990年代後半までにWWFはさまざまな支援を行ない、資金の一部は公園内に生息するトラの保護活動や、チトワン公園から同じく絶滅の危機に瀕したインドサイの再導入などに使われました。
また、WWFはキングマヘンドラ自然保護財団やネパールの国立公園局と協力しながら、地域に根ざした持続可能な開発と、生物多様性の保全活動にも取り組みました。

ブータン

狩猟の禁止や、罰金の強化にもかかわらず、90年代のブータンではトラの密猟が無くなることはありませんでした。密猟や生息地の分断・喪失の脅威と戦うため、WWFはいくつかの国立公園を中心とした地域で、トラの保護プロジェクトを支援しました。
1995~1996年に実施した密猟対策プログラムには9万6,000ドルを支援したほか、トラやその食物となる草食動物の調査を実施する森林レンジャー育成のためのトレーニング、フィールドマニュアルの作成などを支援しました。

ロイヤル・マナス国立公園 およびブラックマウンテン国立公園

ブータン国内にあるトラの最も重要な生息地は、インドとの国境付近に位置するロイヤル・マナス国立公園です。ここはインド領内のマナス・トラ保護区と地理的に繋がっており、豊かな生態系が保全されているため、トラは2つの国を行き来しています。さらに、ここに緑の回廊(コリドー)を作り、ブータンで新たに設置された、ブラックマウンテン国立公園にもトラが移動できるようにする計画を立案。トラの生息域の拡大を目指しました。
しかし、ブータン側のマナス国立公園内には、手付かずの森が広く残っているものの、公園周辺では開発や伐採が進んでいるため、楽観はできません。また、周辺にすむ住民とトラとの間に起きるトラブルを防ぐために、トラなどの野生動物が家畜や農作物を食い荒らすことを防除する必要があります。作物の被害が深刻な地域では電気フェンスを設置するほか、住民が農業以外からも収入が得られるよう模索が行なわれ、さらに、ブータン女性連合とともに、女性の起業に対する援助や農家の人々が低金利で受けられる融資の整備などが実施されました。

WWFは世界各地から寄せられた資金を元に、ブータン森林局が必要としていた警備用道路の敷設や、国立公園スタッフの住居、フィールドで使用するさまざまな機材、国立公園の境界線の設置などを準備するため、ロイヤル・マナスでのプロジェクトに約50万ドルの資金支援を計画。1994~1995年にロイヤル・マナス国立公園へ9万5,000USドル、ブラックマウンテン国立公園に8万5,000USドル、その他、野生動物の重要な生息地の保護計画のために16万USドルの支援を行いました。

1990年代の終わりに、WWFがブータンで支援した調査活動によると、ブータンには、極東ロシア、スンダーバンズ(インドとバングラデシュの国境地域)に次ぐ、規模の大きなトラの個体群が生息していることがわかりました。この結果を受け、WWFはトラの継続的な調査とその結果の蓄積、フィールド・スタッフの養成、密猟の防止、地域での普及活動などの取り組みを行なっています。

ロシア

WWFはロシア環境省、ロシア科学アカデミー、ウラジオストック環境研究所、イギリスのタイガートラスト、アメリカ国際開発局など様々な団体・機関と協力して、極東ロシア沿海地方を最後の生息地としているシベリアトラの保護に取り組んでいます。
1991年のソ連崩壊以後、ロシアでは国立公園の管理や密猟、密伐採の取締りが行きわたらず、シベリアトラもその影響を受けています。それまで微増しているとさえ言われていた個体数は再び減少。さらに広域で進む森林伐採が、深刻な危機を招いています。

1998年に起きた大規模な森林火災は、240万ヘクタールの森を焼き払い、トラの生息地の分断と、食物となる草食獣の減少を引き起こしました。また2001年から2002年にかけての冬には、沿海地方西南部で前代未聞の大雪が降り、食物を失った多くのシカなどが餓死したため、シベリアトラやアムールヒョウも危機に見舞われました。このような突然の気候の変動は、地球温暖化の影響が原因とも言われています。
WWFは1990年代からシベリアトラの保護活動を本格化させ、長期間にわたる生息環境の保全と生息数の調査、メディアを使った保護区内や地域全体で行われる保護教育の支援、地域の住民と野生生物が共存できる資源管理、分断されたトラの生息地をコリドーでつなぎ、保護区を拡大する取り組みなどを行なっています。1998年にはWWFドイツが、沿海地方の二つの保護区に対して、30万ドルの資金支援を行ないました。

現在も横行し続ける密猟の防止も、大きな課題です。ロシア・中国の国境地帯をはじめとする地域では、今も密猟と密輸が盛んに行なわれています。WWFは密猟の取り締まりプロジェクトに対する支援を実施。この結果、パトロールが継続されて行なわれるようになりました。1998年の一年間に、5つの密猟防止チームが調査した船や自動車は、337にのぼります。
また、WWFロシアは1998年、極東ロシア地域および東アジアに生息する、トラを含めた野生生物の取引に関するワークショップを開催しました。これは、ワシントン条約に基づいた適切な取引管理の施行をめざしたものです。

インドネシア

WWFは、世界でも最大級の熱帯域の自然保護区、スマトラ島のケリンチ・セブラ国立公園で、これまで多年にわたり自然保護活動の支援を行なってきました。
WWFは、1976年以降、インドネシアでのオペレーションタイガーの一環として、スマトラ島とジャワ島で複数のプロジェクトを支援。このプロジェクトでの調査によって得られた研究データが、1980年のグヌン・ルーサー国立公園、1981年のケリンチ・セブラ国立公園の設立を含めた多くの保護区の設立につながりました。
この2つの国立公園は、スマトラトラの大きな生息地であり、保護活動を行なう上でも、きわめて重要な地域です。1995年から1996年にかけ、WWFは約44万6,000USドルをケリンチ・セブラでの活動に拠出しました。また、この公園内には約2万8,000人の住民がいますが、これらの人々による地域のコミュニティーやNGOが参加する保護活動の強化・育成は、スマトラでの保護プロジェクトの大きな目標となっています。

スマトラ島北部の山岳地域にあるグヌン・ルーサー国立公園でも、公園周辺で生活する人間とトラの生息圏が交錯し、トラブルが起きています。この問題は、スマトラ島でのトラ保護活動における最大の難関といえるでしょう。
WWFは、この問題に対するフィールド・モデルを考案・実施し、公園管理のために、組織的な住民の支援を得ようとしています。政府の支援によって地元に産業が作られ、地元経済が活発化することでトラの密猟などを軽減することをめざしています。

タイ

タイにおけるWWFのトラ保護は、1976年のカオヤイ国立公園に対する支援活動に始まりました。以後、カオヤイ国立公園とフアイカエン、トゥンヤイナレサン保護区などの地域が主な活動の場となってきました。
1994年と1996年には、WWFはタイ森林局が実施したトラ生息国・消費国会合に参加し、その会議の開催を支援しました。また、1998年の寅年には、WWFはアマリ・ホテル・リゾートと共に、アニマルプラネットの後援を得て、トラ保護のためのキャンペーンをテーマにしたシンポジウムを開催しました。このシンポジウムには、100の教育関係機関、26のNGO、50人のジャーナリストを始め、多くの人々が参加しました。この他、署名活動や、タイ語版のトラ関連報告書の出版も実施しました。

フィールドでの活動としては、WWFはフアイカエン野生生物保護区での活動を長く支援してきました。1990年代の後半には、保護区内に小さなビジターセンターの建設に出資。同区での普及教育活動の推進をはかりました。カメラトラップを用いた調査も実施。
タイ国内では、ほとんど唯一、エリア内で人が生活していないプーケオ野生生物保護区も、重要なフィールドの一つです。ここでは、基本的なトラの生息状況に関する調査と、保護区の管理体制の確立が課題でした。1993年、WWFは保護区のスタッフと共に、野生動物保護のためのトレーニングを実施。さらに同区では、1994年から97年にかけて、絶滅の危機に瀕したターミンジカの再導入計画に取り組みました。また近年は、付近の住民を対象にした普及活動も実施しています。

マレーシア

1995年、WWFはマレーシア野生生物国立公園局(DWNP)とともに、トラとその食物となる野生動物が生息する地域で、保護にかかわるレンジャーを対象としたトレーニングコースを実施しました。この企画には、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレーシアから17人が参加し、2週間のフィールド訓練が行われました。

1998年の寅年、マレーシアはトラ保護計画を発表。最初に国家的な計画を立案した国の一つとなりました。
DWNPおよびWildlife Conservation Society(WCS)、フロリダ大学、そしてWWFマレーシアは、この計画案を支持し、調査活動や人材育成、広報物の制作、地域への普及活動などを支援。日本でトラ保護のために集められた寄付金も、一部この取り組みに活用されました。

DWNPとWCSは、視認が難しい密林に生息するインドシナトラを調査するため、カメラトラップ(動物が前を通ると自動的にシャッターが下りる、赤外線を利用したカメラ)による、長期的な調査を支援しました。3つの州にある6カ所の森林を対象に、1997年12月に始められたこの取り組みは、現在では完了し、調査結果の分析が保護計画に役立てられています。

WWFマレーシアとDWNPが協力して開発した「マレー半島に生息するインドシナトラのための普及教育プログラム」は、1998年から2001年にかけて展開されました。このプログラムは、トラが生息する地域の周辺にすむ人たちを対象にしたもので、人とトラの間に起きるトラブルを解消できる地域社会のモデル作りを含めた取り組みです。この活動を通じ、学生や猟師、牧場主、プランテーションのオーナーなど、多様な人々に対する働きかけが行なわれました。また、この他、マレーシア国内のワシントン条約の専門家と共に、国際取引に関する政策に関しても提言などを行なっています。

ベトナム

現在、ベトナムでは11カ所の保護区でトラの生存が確認されています。その保護に乗り出すべく、ベトナム政府は、トラ保護計画案を創案。WWFは、ブークァン、モンネ、キャロック国立保護区、カティエン国立公園など、トラが生息しているとみられる地域での保護活動や調査に対し支援を行なってきました。
1995年には、ベトナム森林局やIUCNのキャットスペシャリストグループとともに初めてのインドシナトラのトラ保護ワークショップを開催しました。またWWFはベトナム政府のトラ保護計画案の修正を支援し、税関職員90人を対象とした初めてのワシントン条約ワークショップを開催。3万8,000USドルの支援を行いました。さらに、マレーシアで開催された2週間のトレーニング・ワークショップにも、WWFの資金支援を受けたベトナムの科学者9人が参加しました。

ベトナムでの活動の鍵となるのは、教育や印刷物、PR活動などによる、密猟の防止です。これらの活動は、各地の森林保護局、地元の人々などと協力しながら、特にベトナム中西部、ラオスとの国境に近い地域で集中的に行なわれてきました。トゥア・ティエンフー県には、1990年代末で33万7,000ヘクタールの森林があり、その半分がアンナン山脈の山系に属する多様性豊かな自然林ですが、そこはインドシナトラにとっても貴重な生息地です。しかしここでも、トラは危機に追い込まれていると見られています。

WWFはここで、トゥア・ティエンフー県の森林保護局と共に、トラをはじめとする保護区内の野生生物の保護を行なうため、周辺住民の関心を喚起する取り組みを行ないました。この中には、ビデオやポスター、書籍のリストなどの作成といった取り組みが含まれており、地域の学校でも、それぞれの地域で取り組む野生生物保護のありかたや、人と野生生物の衝突問題などについての普及活動が行なわれました。

カンボジア

長く内戦の混乱にさらされてきたカンボジアでは、近年になって、環境保全のための取り組みが盛んになり始めています。1998年、WWFはWCSと共に、環境保全にかかわる人材の育成を支援するプロジェクトを開始しました。現在、カンボジア国内における環境保全活動の第一線に立つ人たちの中にも、このWWFとWCSのトレーニングを受けた人が少なからず参加しています。
また、WWFはWSC、ブロンクス動物園と共に、自動撮影などの技術を使った写真撮影による調査を実施。2000年には、カンボジア国内の人たちを対象にした、そのためのトレーニングも行ないました。
現在、カンボジアに生息するトラの数は、ごくわずかと見られていますが、WWFはトラのみならず、さまざまな野生動物を保護し、残された自然環境を守るために、カンボジア政府に対して国立公園の管理活動などを支援しています。
WWFはまた、ベトナム、カンボジア、ラオスの三国での活動を統括するWWFインドシナオフィスを中心として、これらの活動の拡大・普及を目指しています。

国際ネットワークでの活動

Tiger Emergency Fund(TEF) トラ緊急基金

絶滅の危機にさらされているトラにとっては、何がいつ、大きな打撃になるかわかりません。密猟や、人間とのトラブル、生息環境の減少だけでなく、火災や洪水のような災害も、大きな脅威になります。
このような予測し得ない問題が起きた時、トラを絶滅から救うには、迅速な対応が必要となります。1998年の寅年、IUCNとWWFは協力して「トラ緊急基金」を設立し、緊急の保護アクションが必要とされる際の資金源を確保する取り組みを行ないました。これにより、1万ドルの資金が緊急に活用できる体制を作りました。
1998年にシベリアトラが生息する極東ロシアで起きた森林火災対策は、この資金を導入した最初の取り組みになりました。この時の鎮火活動のために使われたヘリコプターやブルドーザーのレンタル料などに使用されたものです。
同じく1998年にインド北東部のカジランガ国立公園が空前の大洪水に巻き込まれ、道路や橋が破壊され、公園の設備が大打撃を受けた時にも、この基金は活用されました。デリー市のトラ保護プログラム(TCP)オフィスは、ボートやトラック、夜間調査用の機材、麻酔銃などの備品を基金によって借り受け、現地での洪水対策への緊急支援を行なったのです。さまざまな取り組みの結果、国立公園はほどなくもとの機能を取り戻し、インドサイやベンガルトラの生息地は無事保全されたのでした。
また、2001年にも、インドを代表するトラの生息地の一つコーベット国立公園で起きた密猟問題への緊急対応としても、基金が活用されました。

トラの国際取引に関する取り組み

1994年以降、WWFは国際自然保護連合(IUCN)との共同プログラムであるトラフィック(TRAFFIC)の活動を積極的に支援してきました。トラフィックの取り組みは、トラなど絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を監視し、過剰に利用されている動植物について保護のための提言をする、というものです。トラの製品は1975年に国際間の取引が禁止されましたが、その後も需要は高まり続けていたため、その対策として、市場調査と取り締まりの強化が必要とされていました。
現在、トラに関わる活動としては虎骨の消費を減らし、代替品を普及させることをめざしています。これまでも、トラの生息国や虎製品の消費国に対して、ワシントン条約に基づいた規制強化のための資金援助や、違法取引の禁止を求める要請を行なってきました。

1995年3月、WWFはIUCNのSSC(種の保存委員会)キャットスペシャリストグループとベトナムの森林局(ワシントン条約のベトナム管理当局)とともに、インドシナトラに関する最初の地域会合をハノイで開催しました。加盟国であるベトナムのみならず、非加盟国であるカンボジアやラオスもトラ取引の取締りを支持することを表明しました。インドと中国の間でトラや絶滅の危機にある他の種を保護する法施行活動について、政府間合意が同年4月に交わされ、12月には中国とベトナムの間でも交わされました。

同じく、1995年4月には、ロシアにトラフィックの事務所を立ち上げ、野生生物の国際取引に関する幅広い活動を支援。漢方薬での使用を目的にした、東アジア向けのトラ骨の密輸などについて調査を行ないました。
また、1995年8月、WWFはベトナムの国境付近に勤務する税関職員90名の訓練用に資金を提供しました。ワシントン条約事務局とトラフィックサウスイーストアジアがベトナム森林局後援のワークショップを開催したほか、同年9月にはミャンマーがトラの全面保護を盛り込んだ法案を可決したと発表しました。
1994年に開かれたフロリダのフォートローダーデールで開かれたワシントン条約第9回締約国会議では、なかなかトラ製品の取引が無くならない現状を変えるため、各国政府に働きかけ、それぞれの国内での取引の中止を求めるという内容の決議を、満場一致で採択しました。しかし、1997年にジンバブエのハラレで開かれた第十回会議では、フロリダ会議での決議内容が十分に実現されていない、という点が指摘され、WWFはトラフィックと共に、いまだに国内での取引を規制していない国や地域に対する働きかけを行ないました。

1997年12月、WWFの支援のもと、トラフィックは絶滅のおそれのある野生生物の医療利用に関する国際シンポジウムを開催。さらに、アメリカとカナダのチャイナタウンでの調査を実施し、その半数近くで、トラを含めた絶滅のおそれのある野生生物を含む医薬品が販売されていることを突き止めました。
翌1998年の寅年、WWFは国際的なトラ保護を求めるキャンペーンを展開。WWFはシベリアトラの密猟が激しくなっていたロシアで、条約事務局とトラフィックを支援し、ワシントン条約のワークショップを開催したほか、トラ保護に関するWWFのレポートを、中国語やタイ語、日本語に翻訳し、刊行するなどの普及活動を展開。日本でもトラの身体を使った漢方薬などの国内売買の禁止を求め署名活動などを実施し、その結果、2000年4月には、「種の保存法が改正」され、トラの国内取引が禁止されました。

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