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活動トピック

トラを脅かす問題

トラは20世紀初頭、世界におよそ10万頭いたと考えられています。しかし、現在では、バリ島、ジャワ島、カスピ海沿岸などではすでに絶滅しており、その他の地域でも生息地が狭められ、数も激減しました。

減少の要因

トラはその美しい縞模様の皮のために、毛皮や壁掛け、絨毯などに使われてきました。ファッションや、上流階級の人々の地位や権力を表わすためにトラの皮は一時多くの需要がありました。また、漢方薬にすることを目的とした、トラの骨などを取るための狩猟も、さかんに行なわれてきました。

1975年、ワシントン条約によって絶滅の危機に瀕する動植物の取引が規制されるようになりましたが、今も密猟は無くなっていません。現在起きている深刻なトラの密猟は、主にアジア地域で使われる漢方薬の需要に、大きな原因があります。

ハンティング

1930年頃まで、インドではトラ狩りが頻繁に行なわれていました。特に、当時の植民地時代には、イギリス人や上流階級の人々による狩りが多く行なわれていました。これらの狩は、トロフィー(動物の頭部を剥製にした壁飾り)を競う、いわばスポーツのようなものでした。当時は特に狩りを規制する法律もなかったため、多くのトラが殺されたといわれています。
 現在は、トラが生息する多くの国では、トロフィーを目的にした狩猟は禁止されています。しかし、インドをはじめ、トラが生息する各国で行なわれてきた、毛皮などを目的としたハンティングは、トラの個体数を大幅に減少させる、大きな原因になってきたと考えられています。

生息地の減少

1940年から1980年にかけてアジアの各地では、トラの生息環境が劣化・減少しました。インドでは農地開発、スマトラ島ではアブラヤシのプランテーション(植林)のために広大な森林が次々と伐採されました。
 森林が減少すると、そこに生息する多くの動植物が減少し、それによりトラは食物を見つけることは困難になります。そして、家畜や時には人を襲うようになり、トラと人々の衝突が起るようになりました。害獣とされて毒殺されたり、銃殺されるケースも少なくありません。

また、人口が増加し、トラが生息していた地域に、集落やプランテーションが作られることによって、生息地が分断されると、少ないトラの個体数の間で交配が繰り返されるため、遺伝子の多様性を喪失させるため、産まれる子の数の減少や、生き残る確率の低下を招くことにつながると考えられています。
 トラの生息地は今、人口の増加や開発の拡大によって、またそこから派生するさらに多くの問題によって、急激に失われつつあります。現在、トラが生息できる環境は、人口の少ない地域や、管理の行き届いた国立公園のような豊かな自然が残る、限られた場所にしか残されていません。

薬としての需要

多くの国で、トラの取引が違法とされる現在においても、生息国の各地では、密猟は起きています。漢方薬などの伝統的な薬剤の原料とされるトラの骨や体の部分は、高価な値段で取引されており、トラが減少する主要な原因となっています。1970年以降、東南アジアの経済発展に合わせてその需要は増加。さらに、トラが使用されている薬はアジアだけにとどまらず、ヨーロッパやアメリカ合衆国など、アジア人の活動する場に広く出回っています。

 漢方薬などの伝統的な薬剤として使われる体の部分

  • 脳...吹き出物、にきび
  • 眼球...癲癇(てんかん)
  • ひげ...歯ブラシとして加工される
  • 骨...体力回復、しびれ
  • 雄の生殖器...強壮剤
  • 尾...皮膚病


 トラの体の各部分は、アジアで1000年以上も前から薬として使われてきました。また、薬としてだけでなく、お守りとしても崇められてきました。トラがお守りや病気に効力を持つとする文化は、アジア各地に古くから見られるものです。
 現在、漢方薬などの原料として、トラの需要がどれだけあるのかは、明らかではありません。しかし、1995年にはインドだけで115頭のベンガルトラが密猟されました。今も、薬の原料とすることを目的とした密猟は、世界中でトラを絶滅に追いこむ、大きな要因になっています。

日本とのかかわり

日本はかつて、トラを使用した医薬品を多く輸入し消費する、世界でも最大級の市場の一つでした。
 中国は1993年、日本に対するトラの骨の医薬品の輸出を禁止しましたが、日本国内では、その後も小売業者が在庫を売ることが合法的に認められていました。また、1993年に中国からの輸入が禁止された後も、新たにトラの医薬品が日本に持ち込まれている可能性があることが、トラフィックの調査により明らかになっています。また、観光客などがトラの骨を海外(中国、香港、マレーシア、タイ)で購入しており、手荷物の一部として日本に持ち込むケースも多くありました。これは、ワシントン条約によって禁止されている行為ですが、日本ではなかなかその取締りが十分にできていません。

WWFとトラフィックは、この現状の改善を求めて日本政府に働きかけ、署名活動や市場調査など、さまざまな取り組みを行なってきました。そしてその結果、2000年4月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が改正され、トラを使用している医薬品の、国内での製造、販売が全面的に禁止されました。
 しかし、現在もアジアだけでなく、ヨーロッパなどでもトラを利用した医薬品が使われていると言われ、その需要がトラの密猟を後押ししています。トラを脅かす密猟の問題は、トラが生息する国だけでは解決できない問題なのです。

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