その数、わずか十数頭といわれる、四国のツキノワグマ個体群。謎に包まれていたその生態が、今少しずつ明らかになろうとしています。絶滅寸前の危機にあるこのツキノワグマ個体群を守るため、WWFは調査により明らかになったデータを基に、国と自治体に対し、新たな保護政策の実施を要望しました。
絶滅寸前!四国のツキノワグマ
ツキノワグマは日本ではもともと、本州、四国、九州の山林に生息していましたが、九州の個体群はすでに絶滅したとみられており、四国の個体群も徳島と高知の県境に位置する剣山山系に、10数頭から多くても数10頭が生息しているのみと推測されています。
すでに個体数が激減し、くわしいことが分かっていなかった四国のツキノワグマについて、NPO法人四国自然史科学研究センターが生息調査を開始したのは、2005年のことでした。
同センターではWWFの支援のもと、クマの生態を明らかにするため、剣山山系で5頭のツキノワグマを捕獲し、発信機をつけて追跡調査を実施。クマがどのように食物を確保し、越冬・繁殖しているかを調べました。
この結果、現在、国によって指定されている国指定鳥獣保護区や緑の回廊区域は、わずかに生き残っているツキノワグマの生息地を、十分にカバーしていないことが明らかになりました。
現存するツキノワグマの個体数の少なさや、現行の保護政策、法体制のもとで、四国のツキノワグマが将来にわたり安心して生き続けることは、非常に困難であると考えられます。

2003年9月18日に高知県香美市物部町で撮影された、四国のツキノワグマ。 多年にわたり、その確かな姿は確認されず、絶滅が心配されてきた。 この写真は、NPO法人四国自然史科学研究センターの調査で撮影されたもの。
長期的な保護管理政策を!
2009年1月29日、国内でクマの保護問題に取り組んでいる、日本クマネットワーク、WWFジャパン、四国自然史科学研究センターは、連名で、環境大臣、林野庁長官、徳島県知事、高知県知事、愛媛県知事に対し、要望書を提出しました。
この要望書は、現在の「国指定剣山山系鳥獣保護区」を、明らかになったツキノワグマの行動範囲を考慮して拡大し、国と地方自治体が連携して、長期的な視野に立った計画的な保護管理施策を立案、実施することを求めるものです。
もとより、ツキノワグマは県境を越え、広い範囲を生息地として移動しながら生きる野生動物。その具体的な保護対策の実施には、国と各自治体の連携が不可欠です。
これまでに行なってきた調査により、四国のツキノワグマ個体群は、本州や大陸のツキノワグマと異なった遺伝的特性をもった、希少な個体群であることも明らかになりました。
2008年に施行された「生物多様性基本法」でも、生物多様性保全のため絶滅危機種の保護に取り組むことが謳われています。WWFはこれを実現する上でも、今回の要望書の実現が重要な一歩になると考え、国や自治体に対する働きかけを継続してゆきます。
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