記者発表資料 2008年12月9日
生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)が、2010年に愛知県名古屋市で開催される。我が国はホスト国として、それにふさわしい行動を世界に示す必要がある。そのもっとも望まれる行動のひとつに、「種の保存法(正式名称:絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」の大幅な改正があげられる。
同法は、92年のリオデジャネイロにおける地球サミットで採択された生物多様性条約を、我が国が批准するための条件として整備され、93年4月から施行されている。それ以来、15年以上が経過するが、この間、おこなわれたのは微細な改正のみであり、大きな改正はない。同法で保護対象とされる国内の希少野生生物種の数はわずかであり、生物多様性条約はもとより、国際的な希少野生生物種を守るワシントン条約の趣旨をも十分に反映した法律の作りにはなっていない。
G8に名を連ねる先進国のメンバーとして、このような実効性の乏しい法律を放置していてはCBD・COP10を迎えることはできない。我が国は野生生物の一大消費国として、その国際的な責務を果たさなくてはならない。
おもな問題点
種の保存法で国内希少野生動植物種として保護対象に指定されているのは81種にすぎず、指定がほとんど進まない
環境省の作成するレッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)には3155種が掲載されている。したがって、2.6%が同法の保護対象になっているにすぎない。
今夏9種が指定を受け、ルリカケスが指定解除になったのがニュースになったほどである。政府は『第三次生物多様性国家戦略』(07年11月閣議決定)において、15種程度の追加をうたっているが、これでも100種に満たず、実質的に希少生物を守る役割を果たしていない。
指定が種の単位であるため、地域的に絶滅のおそれのある種が法律の外に置かれている
たとえば、全国的にみればツキノワグマは絶滅の危機に瀕していないため、四国や紀伊半島など地域的に絶滅の淵に立つツキノワグマの個体群が指定対象にならない難点がある。
公共事業を種の保存法の適用除外とする規定がある
大規模公共事業が、我が国の沿岸海洋、淡水域、森林等の生態系に大きな影響をおよぼしてきたのは明らかであり、公共事業が同法の点検を受けずに済ませられる規定は、法律としての効力を自ら弱めてしまっている。
絶滅のおそれのある野生生物の生息地を守る保護区の設置が進まない
種の存続に関して重要なのは、生存に適した「生息地」が保全されることである。絶滅のおそれのある野生生物の生息地を“重要生息地”としてリストアップし、保護区として順次指定していく必要がある。ところが、『第三次生物多様性国家戦略』でも新たな保護区の設置が言及されておらず、まったく進展が見込めない。我が国の場合、“重要生息地”は民有地であることが多く、土地所有者の理解が欠かせない。その土地を所有していることにインセンティブが働くような仕組みを同法に設けない限り、いつ開発の脅威にさらされるかわからない。土地所有に関わる税の減免など、税制上の優遇措置が望まれる。
市民提案の条項がない
米国の絶滅危惧種法(Endangered Species Act of 1973)では、絶滅のおそれのある野生生物の保護を市民が請求できるようになっている。法律への指定を市民が訴え出ることができるのである。先延ばしされていたホッキョクグマをすみやかに同法の指定種にするよう市民団体が提訴し、ようやく本年5月14日に指定されたのは記憶に新しい。
この仕組みは、京都府、徳島県などの希少種保護条例にも盛り込まれている。実際、京都府の「絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」によって、本年3月11日に24種が指定されたが、そのうち6種は全国で初めての住民提案にもとづくものであった。なお、府の条例制定には当会も委員として協力した。
このように、我が国の国法は、米国の法律のみならず、自治体の条例にも後れを取っている。
罰則規定があまく、再犯が多い
同法に違反すれば、当然ながら罰則を受ける。しかしながら、最高で懲役1年、罰金100万円であるため、高値で取引される野生生物を海外から密輸して得られる利益に誘惑されて、再犯を繰り返す者がいる。犯罪の抑止効果としては、罰則規定があまい。
2004年に成立した特定外来生物法では、個人で3年以下の懲役、300万円以下の罰金。法人となると罰金が最高1億円となっている。種の保存法の罰則規定もこの水準に引き上げるべきである。
2008年5月に超党派で可決成立した「生物多様性基本法」の附則第2条にも、種の保存法をはじめとする生物多様性保全に資する関連法の改正をうたってあり、着手すべきである。おそくとも2010年の通常国会で可決成立させ、同年10月のCBD・COP10に備えなくては、間に合わない。そのためには、今年度から改正の日程に載せる必要があると考える。
以上のとおり、生物多様性条約第10回締約国会議にむけて、ホスト国たるにふさわしい存在感を示すためにも、種の保存法の大幅な改正を求めるものである。
問合せ先
WWFジャパン 自然保護室 草刈秀紀/広報担当:大倉寿之 Tel:03-3769-1713
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