世界の一大消費国となりつつある中国。近年、中国国内では、野生動植物の消費も拡大しつつあります。野生生物の国際取引を監視する「トラフィック・ネットワーク」は、2008年11月11日、中国での野生生物の消費の現状をまとめた報告書を発表しました。
再び増え始めた「消費」
2003年、動物による媒介が指摘されたSARSをめぐる不安により、一時落ち込んでいた中国での野生動物の消費が、近年再び増える傾向にあることが、調査により明らかになりました。
この調査は、WWFとIUCN(国際自然保護連合)の共同プログラムで、野生生物の国際取引を監視する「トラフィック・ネットワーク」が、中国南部の5つの都市で行なったものです。
その結果をまとめた報告書『The state of wildlife trade in China(中国における野生生物取引の現状)』によると、食料品店25店のうち13店が、レストラン50店のうち20店が、野生動物を販売していたことが明らかになりました。
調査で見つかった野生動物は、全部で56種。このうち8種は、中国の法律で保護されており、17種は、国際取引を禁止または厳しく管理している「ワシントン条約(CITES)」により保護されている種でした。
中でも、違法な取引が目立ったのは、淡水性のカメとヘビです。
中国では、淡水カメと、ヘビのほとんどが肉あるいは薬用のために売られていますが、利用されているこれらの野生動物の中には、過剰な捕獲によって、絶滅の危機にさらされている種も、少なからず含まれています。

マルスッポン(Pelochelys cantorii)。東南アジアの大河川に生息し、一生の9割以上を泥の中で過ごすといわれる。スッポン類では世界最大級。食用にするため乱獲され、絶滅の危機が高まっている。写真はメコン川で撮影されたもの。
(C) WWF Cambodia/ You Porny
漢方薬と木材の利用
トラフィックの報告書は、中国が世界第二の木材の輸入国であること、そして漢方薬に代表される、野生動植物を利用した伝統薬の取引拡大も指摘しています。
中国に木材を最も多く供給しているのは隣国のロシアで、さらにアフリカから輸入される木材の割合も増加しています。とりわけアフリカと中国の木材取引については、違法な伐採や取引を助長している可能性があるほか、アフリカの地域住民に対する利益の公平な分配についても、きちんと行なわれているかどうか、疑問視されています。
また、中国における漢方薬の取引はSARSが流行した2003年以降、年に10%の規模で拡大を続けています。
中国から輸出される漢方薬の多く(6億8,700万米ドル(約673億円))が、アジア諸国向けですが、ヨーロッパ(1億6200万米ドル(約158億円))や、北アメリカ(1億4,400万米ドル(約141億円))といった地域も、規模の大きな市場もなりつつあります。
トラフィックは現在、北京中医薬研究所など、いくつかの機関と協力し、薬用やアロマ用に使われる植物を、持続可能な形で採取するための国際的な基準づくりを進めていますが、このような取り組みを、今後さらに広げてゆかなければ、過剰な消費によって絶滅の危機にさらされる野生の薬用植物は、増え続けることになるでしょう。
シベリアジャコウジカ(Moschus moschiferus)。分泌腺が高価な香料「麝香」の原料となる。
(C)Gerald S.CUBITT /WWF-Canon
密猟と密輸の問題が続く象牙
(C)WWF-Canon / FolkeWulf
中国政府に求められる対策の強化
一方、改善の兆しが見られたものもありました。
違法な象牙の取引が、減少しつつあることが明らかになったのです。中国国内で、違法に販売されている象牙の数が、この1年間で大幅に減少。中国政府による管理の強化が、結実した形となりました。
しかし、トラフィック中国プログラムの徐宏発教授は、こう警告します。
「この減少は喜ばしいことですが、当局には警戒を怠らないように求めるものです。特に、違法な象牙のロンダリングが起こらないよう、注意する必要があります」。
今回のトラフィックの報告書では、他にも、減少が心配されるジャコウジカから採れる香料「麝香」の違法取引や、ガラパゴス諸島の海洋生態系を脅かしているナマコの密漁と密輸、ロシアのサケの漁場と中国市場のつながりなどについても、調査結果をまとめており、今後さらに拡大が懸念される中国の消費が、世界の生物多様性に与える影響を指摘しています。
WWFは、違法取引を阻止し、絶滅のおそれのある世界の野生生物の消費を減らすため、中国当局に取り締まりと、情報発信や教育活動の強化を求めています。
報告書のダウンロードはこちら
『The State of Wildlife Trade in China in 2007』
中国における野生生物取引の現状(PDF形式:2.25MB / 英語・中国語)
http://www.trafficj.org/publication/08-State_of_Wildlife_China.pdf
WWFインターナショナルのサイト
11 Nov 2008
Chinese wildlife consumption on the rise
http://www.panda.org/about_our_earth/about_forests/forest_news_resources/?149941/
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