ページ内を移動するためのリンクです。

WWFの活動

【報告書】Lifting the lid on Italy’s bluefin tuna fishery イタリア・クロマグロ漁業の実態(要約)

地中海の2008年クロマグロ漁期におけるイタリア漁船および畜養場の管理ルール遵守に関する評価

全文のダウンロード

報告書   (PDF形式:英文/4MB)
Lifting the lid on Italy’s bluefin tuna fishery

 

要約

本報告書はWWFの委託により独立系コンサルタント会社ATRTが調査のうえ作成したものであり、地中海のクロマグロ漁業におけるイタリアの役割を初めて詳 細に分析したものである。本報告書の知見は、イタリアがこの地域における乱獲と漁業管理ルール違反の主な犯人の一人であるという一般的な見解を裏付けてい る。

2008年4月、WWFは、地中海の漁業資源に対して漁船が装備過剰の状態にあることを初めて数値的に示した報告書を公開した (*1) 。この研究では、EU加盟国のなかで最も装備過剰な国としてイタリアを挙げ、巻き網漁船の漁獲能力が同国の国別割当量の2倍に上っていると推定している。 この研究は、前年の実際の漁獲量が過少に報告されている可能性に注意を促すと共に、国際管理ルールの組織的違反と国別割当量の超過を指摘している。

鍵 となる2008年漁期にイタリアのクロマグロ漁業がどう行われたかを解明するために、本報告書の著者は、貿易データの徹底分析と同時に広範な実態調査を 行った。後者には、海上でのイタリア漁船のリアルタイムな監視に加え、イタリア、クロアチア、マルタを拠点とするすべての畜養場で飼育されているクロマグ ロのバイオマスの(航空調査による)現場分析が含まれている。この壮大なプロジェクトによって、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT、漁業の持続可 能な管理を任務とする機関)とEUが合意した国際管理ルールの遵守(およびその欠如)の度合いを含め、地中海クロマグロ漁業でイタリア関係者が担う役割の 全体像を明らかとした。

巻き網漁の漁期を2週間早く終了させる(2008年6月15日)とのEUの決定によってイタリアの巻き網漁船 の漁獲が同年の割当量に達しない(これによりイタリアの漁業関係者が欧州委員会を欧州裁判所に提訴するという極端な手段をとるまでに至った)との見解をイ タリア政府が持っている今こそ、WWFによるこの研究は大きな意味を持つ。

今回の報告書は、2007年のデータをレビューし、 2007年のクロマグロ国別割当量においてイタリアの超過量が最低でも1,653トンにのぼり、公式に認められた超過量である327トンの5倍以上である ことを明らかにしている。また、クロマグロ漁船の船籍に深刻な矛盾があり、ICCAT、EU、国の漁船籍簿の記録に大きなズレがあることも明らかにしてい る。関連する公式船籍簿を照合したところ、2008年に地中海クロマグロ漁業で活動していただろう巻き網船は最大で163隻であった。合計15の巻き網漁 船団、つまり漁業集団が2008年漁期に操業していたことが判明し、これには、リビア、トルコ、およびアルジェリアのものと思われる他の船との共同操業も 含まれている。後者の共同操業については、2008年漁期にアルジェリア船とトルコ船との間で書類の上で割当量を移転した違法操業に関与していたことが分 かっている。

この報告書には、地中海中央部水域での違法な空中魚群探索活動のハブとしてイタリアの空港が主要な役割を2008年に 担っていたことを示す広範な現場情報が記載されている。さらに、イタリアの魚群探索航空機が稼動して(アメリカ、フランス、スイスなど他国と共に)イタリ アの巻き網漁船の違法行為を幇助していた。

イタリアを拠点とする合計5つの畜養場が2008年に活動していたことが分かり、そこには 活きたマグロ2,410トン分のバイオマスがあると推定されている(推定投入重量2,241トンと同等)。このマグロは2008年漁期に操業していたイタ リアの巻き網船によってもっぱら獲られたものである。

さらに、控え目に見ても1,321トンのクロマグロがアドリア海における春先の漁でイタリアの巻き網船に捕獲されていると推定され、このうち853トンはクロアチアの畜養場で飼育されていたであろうと推定される。

最後に、これに加えて1,159トンのマグロがイタリアの漁船によって2008年に捕獲されてマルタとチュニジアの畜養場に送られたと推定される。

こ のように、WWFの報告書に盛り込まれた2008年漁期のイタリア漁船によるクロマグロの推定漁獲量は最低でも合計4,887トンにのぼる。これは極めて 控え目な数字である。というのは、アドリア海以外での延縄漁船の推定漁獲量は情報が入手不可能なため一切含んでおらず、さらにイタリアの最低割当超過量 724トンが含まれていないからである。今年予定されていた巻き網漁の当初の終了日をEUが15日早めなければ、イタリアのクロマグロ漁船の漁獲量は最終 的にどうなっていたことだろう。加えて、ポッツオーリ、ビーボバレンチア、ポルトパロ、チェトラーロといったイタリアのいくつかの関連するクロマグロ漁港 はクロマグロの荷揚げ港としてICCATに正式に登録されているが、一匹のクロマグロの水揚げも報告していないことを報告書は明らかにしている。

こ の報告書が(EUの有力加盟国に関する)示している知見は、国際専門家パネルが作成した2008年9月公表のICCATのパフォーマンスに関する最近の独 自判断 に盛り込まれた結論を補強するものだ、というのがWWFの意見である(*2)。ICCATの委託によるこの報告書は、東大西洋と地中海のクロマグロ漁業に おける管理の不徹底を「国際的な恥」とし、持続可能な漁業管理の条件が整うまでICCATは漁を直ちに停止すべきであると勧告している。

WWFはクロマグロ漁の一時停止を引き続き提唱し、同時に、小売業者、調理師、飲食店、消費者に対し、地中海のクロマグロが危機から無事回復するまで、クロマグロ不買運動の拡大に加わるよう促すものである。

(*1) Race for the last bluefin, WWF, March 2008. www.panda.org/tuna
(*2) Report of the independent review ICCAT. G.D. Hurry, M. Hayashi & J.J. Maguire, September 2008. www.iccat.int

WWF報告書の主要知見

WWF報告書 『イタリア・クロマグロ漁の実態』は以下のことを明らかにしている。

1. 2007年、イタリアはTACを38%超過している
2007年のイタリアによるクロマグロのEU TAC超過量は最低でも1,653トンにのぼる。これは同年の割当量の38.15%に当たり、ブリュッセルが言うイタリアの2007年の公式超過量327 トンとは対照的である。5,990トンという2007年のイタリアの大量の漁獲量の内訳は、ICCAT統計報告書に示されている漁獲量、報告されていない イタリアによるクロマグロの推定漁獲・畜養量、貿易統計に示されている2007年にイタリアが捕獲し加工したクロマグロの輸出量、イタリアが捕獲しイタリ アの主要な鮮魚市場で2007年に取引された漁獲量である。

2. 漁が早期に終了したにもかかわらず、イタリアは2008年のTACを724トン上回っている
クロマグロ漁をEUが2008年6月15日に終了させ、その結果、巻き網漁を2週間早く終了させるとEUが決定したことで、イタリアの巻き網漁船による漁 獲が同年の割当量に達しなかったとイタリアの産業界と政府が主張するに至ったにもかかわらず、全ての供給元から全ての手段で2008年に捕獲・販売・輸出 されたクロマグロの量を合計すると、イタリアはTACを少なくとも724トン超過しており、2008年の合計推定漁獲量は4,887トンであることを今回 の報告書は明らかにしている。

3. 2008年に捕獲された4,000トン以上のマグロが、イタリア、チュニジア、マルタ、クロアチアの畜養場に活きたまま送られた
今回の報告書のために行った航空調査によると、推定2,410トンの活きたマグロ(推定投入重量2,241トンと同等)がイタリアで稼動中の5つの畜養場 におり、これらはすべて2008年漁期にイタリアの巻き網漁船によって捕獲されたと思われる。さらに、現場調査と業界報告書によると、これ以外にも839 トンと320トンのマグロがそれぞれマルタとチュニジアのマグロの生け簀に活きたまま送られた。また、記録が示すところによると、少なくとも853トンの マグロがイタリアの漁船に捕獲されクロアチアの畜養場に送られたと思われる。したがって、マグロ畜養場に送るためにイタリアの巻き網漁船が捕獲したと思わ れるクロマグロの総量は4,253トンとなり、これだけでイタリアの2008年のTACを上回っている。

4. イタリアは地中海の違法クロマグロ魚群探索航空機のハブ
クロマグロ漁業会社は過去にクロマグロ魚群探索航空機を使ってきたことで悪名高く、2006年から使用を厳しく禁止されているにもかかわらず、2008年 のクロマグロ漁期にも使用していた。イタリアはこのような活動のハブとなっており、イタリアのクロマグロ漁業会社や地中海中央部で操業する外国のクロマグ ロ巻き網漁船のために複数の外国籍航空機を飛ばしていた。さらに、イタリアの複数の着陸場と空港がイタリア籍と外国籍の違法なマグロ魚群探索航空機の発射 台となり、これらの航空機がEU空域を出てリビアやチュニジアやエジプトに飛び立つのに使われていた。これらの国々は、イタリアのようにICCATのルー ルの完全執行を当局が意図的に拒否している国である。特にランペドゥーサ、パンテレリア、マリーナ・ディ・モーディカの各空港が違法魚群探索航空機によく 使われている。

5. イタリアの漁船統計はまるで悪夢
EC船籍簿(CFR)によると、ICCATには611隻が登録されているが、このうち稼働中のクロマグロ漁船として登録されているのは103隻のみで、ク ロマグロ畜養で稼働中なのは82隻のみである。しかし、一連の照合を行った結果、2008年のクロマグロ漁期に地中海でクロマグロの捕獲と畜養に直接関与 したことが確実視または推測されるものと本報告書で特定されたイタリア船籍の船は合計283隻にのぼり、そのうち27隻が延縄漁船、162隻が巻き網漁 船、73隻がトロール漁船、21隻がタグボートで、公式記録が示すよりもはるかに多い。これらのうち、47隻には漁船モニタリングシステムが装備されてお らず、160隻はクロマグロの漁業許可証を持たず、82隻は2008年にICCATに登録すらされていなかった。

6. イタリアの巻き網漁船は船の集団、つまり漁船団として構成されている
イタリアのクロマグロ巻き網漁船は漁船団と呼ばれる小集団を組むことが多い。これに関する詳細な現場調査の結果、15の漁船団が特定された。このうち2つ は北アドリア海で操業し、2つは中央アドリア海、3つはイオニア海で操業し、6つは地中海中央部で操業し、2つはティレニア海で操業している。捕獲したマ グロがどこの畜養場に送られるかに応じて、イタリアの漁船は外国の漁船ともチームを組むことがある。2008年には、イタリアの漁船は、トルコ、ギリ シャ、リビア、フランス、そしてアルジェリア籍と思われる巻き網漁船とチームを組んだ。2008年のアルジェリアのクロマグロ割当量のほとんどは、書類の 上での違法な割当量移転行為によって実際にはトルコが獲ったと考えられる。事実、アルジェリアの7隻のクロマグロ巻き網漁船はすべて2008年漁期には明 らかに機能しておらず、公式にこれらの漁船が捕獲したとされている漁獲量は信頼できない。

 

For further information:
Gemma Parkes, WWF Communications Officer, +39 346 387 3237, gparkes@wwfmedpo.org

Notes to editor:

  • WWF’s report, Lifting the lid on Italy’s bluefin tuna fishery, is based on a study by independent consultancy Advanced Tuna Ranching Technologies (ATRT SL(C)(R)TN). The full study can be downloaded at: www.panda.org/tuna .
  • High resolution photos available (Username: intranet@wwfint.org / Password: dropbox) at:
    https://intranet.panda.org/documents/document.cfm?uFolderID=59126&uDocID=71706 .
  • The report’s estimate of total bluefin tuna catch in 2008 by the Italian fleet is likely to be highly conservative. Only long-line vessels operating in the Adriatic Sea have been taken into account, whereas catches outside this area are known to be substantial.
  • Press release, interviews, footage and background information available on request.

  

全文のダウンロード

報告書   (PDF形式:英文/4MB)
Lifting the lid on Italy’s bluefin tuna fishery

2008/10/01

キーワード

関連するWWFの活動

マグロについて

マグロ、カツオ、サンマ、サケ、サバ、タコ、イワシ... 日常さまざまなところで目にし、耳にし、口にする海の幸。日常生活には欠かせないこれらの海産物は、私たちが世界で最も大量に消費している「野生生物」です。海産物は、文字通り「海の幸」。豊かな海の自然があってこその恵みに他なりません。 しかし、普段当た...続きを読む

あなたの支援で、できること。たとえば… 資源の持続可能な利用を促す WWF会員が125人集まれば、企業が自ら、違法伐採の木材商品を購入していないか、チェックできるウェブサイトを作ることができます。 「あなたの支援でできること」を見る