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WWFの活動

IUCN勧告「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」が採択される

2008年10月14日 Media Advisory

 スペインのバルセロナで開催された第4回IUCN世界自然保護会議において、日本の環境NGO(注1)が提案した「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」勧告案(CGR4. MOT027)が、賛成多数で採択された。今後、この勧告案は第4回IUCN世界自然保護会議で採択されたIUCN勧告となる。

    注1:ジュゴン保護キャンペーンセンター(14)、日本自然保護協会(4)、WWFジャパン(1)、エルザ自然保護の会、日本雁を保護する会、日本湿地ネットワーク(カッコ内はIUCN会議への参加者数)

第4回IUCN世界自然保護会議報告(2008年10月5~14日 スペイン/バルセロナ)

勧告の採択

この勧告案に関する採決は、10月14日午前の本会議において電子投票によって行われた。議長による勧告案が議会に提案され、日本政府、提案団体がそれぞれコメントを行い、最後に採択が行われた。投票総数は、政府が104、NGOが252、合計356であった。

投票の結果

投票の結果は以下のとおりである。

  賛成 反対 棄権
政府 56 6 42
NGO 202 3 47

勧告の内容

 採択された勧告は、別ページに掲載したとおりである。なお、勧告の原文は英語であり、以下は日本の環境NGOによる仮訳である。
 提案団体提出の原案と比較すると、コンタクト・グループ・ミーティングやプログラム・ヒヤリングを通して幾つかの修正/訂正が行われた。しかし勧告は原案の内容を維持し、勧告対象をより明確にするものとなっている。

 事実関係を述べる前文においては、原案の「撤回した」(withdrew)が「再考慮した」(reconsidered)(前文6)へと変更され、National Historical Preservation ActがNational Historic Preservation Act(前文8)へと修正された。
 具体的な勧告を記述する主文では,まず日米両政府をひとまとめにして扱っていた原案に対して、勧告では日本政府、米国政府に対して個別に勧告を行っている(主文3、4、5)。日本政府に対しては、「学者、研究者、NGOとの協議を通し」(in consultation with academics, researchers and NGOs)、「全ての選択肢を含んだ」(including all options)を環境アセスを要求している。「全ての選択肢」(all options)の表現が「ゼロ・オプション」を含む事を、採択前に行われた提案団体のコメントで確認した(主文3)。

 米国政府に対しては、日本政府の行う環境アセスへの参加、ならびに行動計画の準備に参加することを要求している(主文5)。
 最後に原案はIUCN事務総長とIUCNの種の保存委員会(SSC)に対し、国連環境計画(UNEP)と「移動性野生動物種の保全に関する条約」(CMS)の国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進の支援を求めていた。しかし採択された勧告では、IUCN事務総長と種の保存委員会(SSC)に対して直接、国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進を求める内容となった(主文5)。これはIUCNのプログラム委員会(Program Committee)からの提案に基づいての変更である。

本会議における勧告に対する関係者のコメント

 本会議における勧告の採決に際し、提案団体と日本政府の各代表は以下のような主旨のコメントをした。これは提案団体の録音にもとづいて発言主旨を要約したものであるが、日本政府の発言に関しては、本人の確認を得ていない。この文書の記載者の責任により以下に記載する。
 

(1) 外務省(日本政府機関)

 日本政府はコンタクト・グループを通して、提案団体との勧告案の文言調整に努力し、意義ある協議が行われた。これまでの事実認識の相違に対し、共通理解に至る部分もあった。
 しかしわれわれは、勧告文言の修正/提案において、最終的に合意に至れなかった。提案団体の原案ならびに修正/訂正提案には、事実を反映しない表現があり、不必要な勧告を含んでいる。

 勧告案は、日本政府に対し普天間代替基地建設に関わる環境アセスメントを求めているが、日本政府はすでに環境アセスに着手している。環境政府は、日本の法律や規則に基づいて、学者、研究者、NGOの意見を環境アセスに反映させることを要求されている。

 また環境アセスメントの結果、ジュゴンに対して悪影響があると判断された場合、影響の回避、緩和の施策を要求されている。
 また日本政府は、ジュゴンとその棲息地の重要性を認識しており、すでに地域住民の意見を取り入れるなどジュゴン保全のための施策を行っている。
提案団体の事実認識の相違ならびに不必要な勧告を含むこの勧告案を日本政府は支持できない。
 

(2) 提案団体(吉川秀樹 ジュゴン保護キャンペーンセンター)

 われわれの勧告案は、生物多様性を推進する国際的動きと、ジュゴンの保全に向けて行われてきたこれまでの取り組みを反映している。
 幾つかの修正/訂正案については合意に達したことを歓迎するが、最終的には勧告文言の合意には至らなかった。日本政府が主文第2項目に対して提案した修正/訂正案は、ジュゴン保全への「覚え書き」への日本政府の参加を除くものであり、また主文第2項全体を削除するものであった。

 日本政府が主文第3項に対して提案した修正/訂正案は、日本政府がジュゴンの棲息地における米軍基地建設に対して行う環境アセスメントから「ゼロオプション」を排除するものであった。その提案は、環境アセスメントの結果がどうであれ、日本政府が基地建設を行うことを可能にするものである。

 以上のような日本政府の修正/訂正案には、われわれは同意できない。
  最後にこの勧告案主文第3項における「全ての選択肢」は、「ゼロオプション」を含むものであることを明確にしておく。

採択された勧告の意義

1. 10月14日午前のIUCN(国際自然保護連合)本会議で、勧告「国連の2010年国際生物多様性年におけるジュゴン保護の促進」が賛成多数で採択された。投票結果は、政府では賛成56、反対6、棄権42、NGOでは賛成202、反対3、棄権47であった。日本政府は、提案者のNGOとの合意形成が不調に終わったため棄権することを本会議で表明した。

2. 今回のバルセロナ(2008)でのIUCN勧告では、以下の点が特に注目すべきポイントである。

  1. UNEP(国連環境計画)およびCMS(ボン条約)に対して、国連の2010年国際生物多様性年には,特にジュゴン保護を推進するように求めている。

  2. 日本をはじめとするジュゴンの生息国に対して、ジュゴンへの有害な影響を最小化し、ジュゴン保護のためのCMS覚え書への参加を求めている。

  3. 日本政府に、ジュゴン生息地でのUSMC(米国海兵隊)基地建設に関する EIA(環境アセスメント)においては、科学者、NGOと相談して、環境保全と野生生物保護を考慮し、すべてのオプション(基地を造らないというゼロ・オプションを含む)を含めて実施することを求めている。

  4. 日本政府に、沖縄ジュゴン生息地でのUSMC基地建設による有害な影響を回避または緩和するための行動計画を作成し公表することを求めている。

  5. アメリカ政府に、EIAと保全の行動計画の策定を完遂するために、日本政府と協働するように求めている。

  6. 勧告では,IUCN事務局長および種の保存委員会に対して、アンマン(2000)、バンコク(2004)の勧告にもとづいて、国連の2010年国際生物多様性年の中でのジュゴン保護の促進を求めている。

3. バルセロナ勧告(2008)は、アンマン(2000)、バンコク(2004)に続き3回目である。通常、過去と同じ内容の勧告は受理されないことになっているが、沖縄のジュゴンに関しては連続して受理され、賛成多数で採択された。その理由として、今回はCMS覚え書きや国連の2010年国際生物多様性年との関連づけが評価され期待されたためと考えられる。したがって,沖縄のジュゴン問題とその解決がより国際な関心を呼び、大きなテーマになってきたと言うことができる。2010年には、名古屋でCBD(生物多様性条約)のCOP10(第10回締約国会議)が開催されることから、日本にとって国連の2010年国際生物多様性年は重要な節目となる。さらに、その中で、特にジュゴン保護の重要性を広めることが、沖縄のジュゴンとその生息地の保護の実現およびUSMC基地建設の中止へと直接的に結びつくという大きな意義がある。

4. また,今回の勧告では,UNEPおよびCMSに対してだけではなく、IUCN事務局長およびIUCN・SSC(種の保存委員会)に対して、アンマン(2000)、バンコク(2004)の勧告にもとづいて、同じく国連の2010年国際生物多様性年におけるジュゴン保護の促進を求めている。これは、IUCN自身に対しての要請であり、勧告と言うより決議の意味を含んでいると思われる。沖縄のジュゴンに関する過去の2回の勧告にもとづいて、IUCNが自ら、沖縄を含めてジュゴン保護の促進に取り組む姿勢を示した意義はたいへん大きいといえる。

5. 沖縄のジュゴン生息域でのUSMC基地建設に関しては、日本政府に対して、科学的で適正な国際水準のEIAが求められていると言ってよい。これは前回、前々回の勧告から引き継がれており、今回はさらに、日本政府に対して、科学者やNGOと相談して、環境保護および野生生物保護のために、ゼロ・オプションはもちろんのことすべてのオプションを含めてEIAを実行することが求められた。政府は、現在行っているアセス法の精神に背く不当なEIA手続きを反省し、科学的かつ適正なEIAに切り替えることを求められているのである。

6. また、日本政府には、沖縄ジュゴン生息地でのUSMC基地建設による有害な影響を回避または緩和するための行動計画を作成し公表することが求められている。行動計画作成とその公表を求めた意義は大きい。ジュゴンは、鳥獣法により保護すべき動物とされているが、生息地での具体的な保護計画は立てられていないことから、保護の実効性は何もないのが現状である。政府は、早急に保護計画の作成と保護区の設置にむけて動き始めるべきである。

7. USMC基地建設には、アメリカ政府が関与していることが、いわゆるジュゴン訴訟においてサンフランシスコ地裁で認められている。したがって米軍基地の建設と運用という日本側が知り得ない情報を多数含んでいる施設建設では、EIAにおいて、アメリカ政府が日本政府と協働することは不可欠である。勧告はこの点を再再度求めている。

8. アンマン(2000)、バンコク(2004)、バルセロナ(2008)と続く3回のIUCN世界自然保護会議において、ジュゴン保護の勧告が連続して賛成多数で採択された意義は大きい。この3回、8年の間に、ジュゴンの保護は、沖縄という地域の問題から国連の2010年国際生物多様性年における保護活動へと広く発展してきたのである。絶滅危惧種である沖縄のジュゴンの生息域に、米軍基地を建設し軍事活動を行うというオプションが、世界の自然保護の潮流から大きく外れていることは明らかである。

(文責:吉川秀樹・花輪伸一)

IUCN勧告「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」(仮訳)

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2008/10/14

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