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WWFの活動

1万6,928種が絶滅の危機に 2008年版IUCNレッドリスト発表される

2008年10月6日

スペインで開催されている世界自然保護会議において、2008年版のIUCNのレッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物種」が発表されました。この最新版のレッドリストに、絶滅のおそれの高い種として記載された世界の動植物などは、1万6,928種にのぼります。

絶滅危機種が622種増加

2008年10月6日、IUCN(国際自然保護連合)の総会・世界自然保護会議が開催されているスペインのバルセロナで、2008年版のレッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物種のリスト」が発表されました。

現在までに、種として記載されている世界の野生生物の数は、164万2,189種。IUCNでは、今回のレッドリストにおいて、その4万4,838種について、絶滅の危機をランク付けしました。
その結果、絶滅のおそれが高いとされる3つのランク、CR、EN、VUに掲載された種数は、合計で1万6,928種にのぼり、前回の2007年度版よりも、622種増加しています。これは、評価対象となった4万種あまりのうちの38%を占めています。

タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii) タスマニア島に生息。現存する有袋類では最大の肉食獣。近年、伝染病によって、急激に数が減っている。 
写真(C)KLEIN&HUBERT / WWF

今回のレッドリスの発表に際しては、数年ぶりに哺乳類の大々的な調査が行なわれ、その危機が改めて浮き彫りになったほか、両生類や、アオサンゴをはじめとする無脊椎動物などについても掲載種数が増加し、世界的な野生生物と地球環境の危機が明らかになりました。

レッドリストの絶滅危機種
【CR】Critically Endangered 近絶滅種 (絶滅危惧1A類)
【EN】Endangered 絶滅危惧種 (絶滅危惧1B類)
【VU】Vulnerable 危急種 (絶滅危惧2類)

掲載された野生生物の実例

今回、調査データの充実によって、インドに生息するオオツチグモ類や、今回初めて魚類で調査対象となった161種のハタ類などからも、今回新たにリストに掲載されることになった種が挙げられました。
オオツチグモ類は「タランチュラ」と呼ばれ、世界中の飼育マニアによる需要が乱獲を招いているほか、道路や住宅の建設によって生息環境が破壊されていることが、危機の原因となっています。
ハタ類については、インド・太平洋のサンゴ礁に生息するオオアオノメアラをはじめとする20種について絶滅の危機が明らかになり、過剰な漁獲などがその原因として指摘されました。

また、アフリカのタンザニアで発見され、2008年2月に新種として記載されたハネジネズミ類の一種も、VUとして掲載されました。このハネジネズミが生息する、ウズングヮ山系の2カ所の森は、いずれも山火事などの危機にさらされているということです。

すでに危機が知られていた野生生物としては、オーストラリアのタスマニア島にのみ生息する有袋類タスマニアデビルが、危機の度合いの低いLC(低危険種)から、二番目に危機の度合いの高いENに「格上げ」されました。
タスマニアデビルは過去に一度、大きく数を減らししながらも、手厚い保護活動によって、絶滅を免れてきた歴史があります。しかし、この10年ほどの間に、顔に悪性腫瘍のできる伝染性の病気によって、個体数が激減。10年で6割も減少したと見られています。

同じく、東南アジアの沿岸部や大河にすむイラワジイルカも、2007年度に「DD(情報不足種)」とされていましたが、ダム開発や森林伐採、漁獲や混獲などの深刻な被害により、明らかに絶滅の危機にあるVUにランクされました。

このほかにも、熱帯アジアの沼沢地や森にすむスナドリネコや、カスピ海に生息するカスピカイアザラシなどが、生息環境の悪化などによりそれぞれVUからENとなったほか、乱獲によって減少したキューバワニもENから絶滅寸前のCRにランクが上がるなど、いくつかの種について絶滅危機の度合いが高まっています。

さらに、前回のリストに続き、サンゴ類などの無脊椎動物の掲載種数が増加した今回のレッドリストには、沖縄県石垣島の白保に大群落があることで知られる、アオサンゴもVUとして初めてリストアップされました。
アオサンゴは、普天間米軍基地の移設計画が進められている、沖縄島の大浦湾にも大きな群落があることが近年調査によって明らかになり、その危機が心配されています。今回のリストの発表により、このサンゴが世界的にも貴重な生物であると、あらためて認められたことは、その生息環境である海域の保全の必要性を、より強く訴える力となりそうです。

スナドリネコ(Prionailurus viverrinus)
写真(C)Gerald S. CUBITT/ WWF-Canon

イラワジイルカ(Orcaella brevirostris)
写真(C)Alain COMPOST/WWF-Canon

キューバワニ(Crocodylus rhombifer)
写真(C)Michel ROGGO/WWF-Canon

保護活動の成功

一方、今回のリストでは、過去のレッドリストで「野生絶滅種(EW)」として記載されていた動物が、人工繁殖の成功によって飼育下で数を回復し、野生に戻される取り組みが成功しつつある例も、いくつか見られました。

北米の大平原に生息していたクロアシイタチは、獲物であるプレーリードッグが、牧草地の害獣として駆除されたため、一度は野生から姿を消しましたが、アメリカ政府による20年に及ぶ人工繁殖活動と、綿密な再導入計画が実現した結果、今回の2008年版のレッドリストでは、EWからCRとなり、絶滅種ではなく、野生種として再びリストアップされることになりました。

家畜ウマの原種といわれるモウコノウマも、家畜ウマとの競合や交雑によって一度絶滅しましたが、今回のリストでは、長い保護回復活動の結果、クロアシイタチ同様、野生復帰を果たしたものとみなされ、EWからCRにランクが変更になりました。
これらの動物については今後、生息可能な環境をどれだけ保全できるかが、さらなる回復のカギとなります。

さらに、2008年版のレッドリストでは、アフリカゾウが絶滅危機種から外れ、より危機の低いランクの「NT(近危急種)」とされました。これは、主にアフリカ南部の国々で近年アフリカゾウの個体数が増加している傾向を受けたものと考えられます。
しかし、100年前には1,000万頭がいたといわれるアフリカゾウが、100年間で47万頭まで減少した経緯や、現在もアフリカ各地で続いている象牙の密輸問題、生息環境の悪化を考えると、楽観は許されません。

アオサンゴ(Heliopora coerulea)
写真(C)S.Yasumura/WWF

クロアシイタチ(Mustela nigripes)
写真(C)Helmut DILLER/WWF-Canon

アフリカゾウ(Loxodonta africana)
写真(C)M.Yoshida/WWF

野生の危機を、より明らかに

今回、IUCNでは、最新版のレッドリストの発表に際して、Sampled Red List Index (SRLI)という、新しいイニシアチブを発表しました。これは、IUCNとロンドン動物学協会が協力して開発したもので、レッドリストの掲載情報を基に、今後の絶滅の危機の深刻度や、保全活動の結果を予測するというものです。

IUCNでは2008年版のレッドリストに掲載された、哺乳類、鳥類、両生類から1,500種のサンプルを抽出し、この予測を行なうことにしていますが、今後はさらに、サンプルを取得する分類群を無脊椎動物や植物にも広げてゆくことにしています。関係者は、この仕組みが、より範囲が広く、精度の高い情報をもたらすものになるとして、世界の生物多様性全体の劣化を把握し、その保全を図るための基盤にしたいと考えています。

レッドリストに記載された野生生物種の数の多さは、その生息環境である地球の自然が、どれだけ失われたかを示すものでもあります。過剰な開発や汚染、そして温暖化による気候変動が、背景にあることは、間違いありません。
WWFは今後も、世界のさまざまなレベルの社会や、各国政府や国際機関が、IUCNのレッドリストを科学的なツールとして、その政策や資金の使い道を考える上で参考にし、活用していく取り組みを支援してゆきます。

IUCNの「レッドリスト」は全てデータベース形式になっており、インターネット上で公開されています。

IUCNのホームページ (英語) http://www.iucn.org/

IUCNのレッドリスト http://www.iucnredlist.org/

レッドリストについて

世界にはどれくらい、絶滅の危機に瀕している野生生物がいるか、ご存知でしょうか? 世界的な自然保護NGOであり、野生生物に関する国際的な知見をたばねるIUCN(国際自然保護連合)では、絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリストを作成しています。

2008/10/06

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