2005年春、ラムサール条約登録地であり、日本最大級のガン類の越冬地である宮城県伊豆沼で、温泉掘削計画が持ち上がりました。多くの自然保護団体がこれに反発。全国的にも反対の声が高まりました。その後、県から掘削許可を得た土地の所有者は、最終的に計画を断念。許認可の失効期限が過ぎたことで、正式に温泉掘削計画は白紙に戻り、伊豆沼の自然は守られることになりました。
渡り鳥の飛来地に温泉?
宮城県栗原・登米市の伊豆沼および内沼は、毎年10万羽ものガン類が訪れる国内最大級の水鳥の越冬地。湿地を保全する国際条約「ラムサール条約」にも登録されている、世界的にも重要な湿地保護区です。
ところが2005年、伊豆沼の北岸で温泉の掘削計画が持ち上がりました。地元在住の男性が、宿泊施設付の温泉建設計画の許可を県に申請したのです。
現行の法制度のもとでは、この温泉掘削計画に違法性はありませんでしたが、この開発が実現すると、塩分を含んだ温水が1日50トンあまり排出され、伊豆沼に流入するおそれがあったため、その生態系が深刻なダメージを受けることが予想されました。
計画に対し、自然保護団体は一斉に抗議。2006年には地元で、ガン類の保護活動に取り組む人たちが「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」を発足。県知事に対し、許可を出さないように求めると同時に、抗議のハガキを宮城県に送る、全国運動が呼びかけられました。
しかし県側は、伊豆沼の自然環境に配慮する必要性を認めながらも、違法性がないことなどを理由に、2006年3月24日、最終的には掘削許可の判断を下しました。


白紙になった温泉掘削計画
これに対し、2006年4月25日、WWFジャパンは宮城県知事に対し要請書を提出。近年、伊豆沼の水質汚染が進んでいることを指摘した上で、温泉から排水が継続して流入する事態になれば環境は更に悪化するとして、掘削許可の撤回と、伊豆沼の環境保全への配慮を求めました。
全国から県知事宛に届いた抗議のハガキやファックス、e-mail は4,000通を超え、「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」が中心となった反対活動も続けられました。
そんな中、掘削予定地に「売地」の看板が立てられたのは2007年9月頃のことでした。温泉法の規定により、予定地が第三者に売却されると許可は失効します。また、掘削許可には期限があり、許可から2年以内に事業を完了しなくてはなりません。
その後、特に計画の実施に向けた動きがないまま、2008年3月24日、今回の温泉掘削計画は期限切れを迎えました。理由は、申請者である男性の個人的な都合によるものとされていますが、地元から起きた反対運動の輪が全国に広がり、あらためて伊豆沼の自然の重要性が認識されたことは、今回の結果と、今後の伊豆沼の環境保全にも、よい展望をもたらす一つのきっかけになったといえます。
国際的な湿地保護区として継続的な保全を!
環境省の調査結果によると、伊豆沼では近年、水質の汚染が次第に進んでいることが明らかになっており、また今後も、周辺地域で新たな開発計画が持ち上がらないとは限りません。
ラムサール条約では、条約に登録された湿地の生態系が、汚染や人為的干渉により危機にさらされている場合、「モントルー・レコード」という登録湿地の特別なリストに記載して、問題の解決を図ることが推奨されています。WWFは日本政府に対し、伊豆沼の現状をラムサール条約事務局に報告し、モントルー・レコードに記載することで、水質汚染の改善を含めた環境の保全をさらに進めるよう要請しています。
関連情報
記者発表資料 2006年4月25日
宮城県知事に、ラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」の環境保全を要請 温泉掘削許可の見直しとモントルー・レコードへの記載提案を!
伊豆沼の保全を求めるアクションにご賛同をありがとうございました
「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」 では、今回の温泉の掘削事業について、認可の取り消しを求めるハガキを、宮城県知事に対して送るアクションを広く呼びかけました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。




