ページ内を移動するためのリンクです。

WWFの活動

四国のツキノワグマ、希少性を遺伝子解析で裏づけ! 遺伝子のさらなる解析と保護増殖策の検討が求められる

記者発表資料 2008年4月11日

 現在、四国のツキノワグマは徳島県と高知県をまたがる剣山山系一帯に十数頭から数十頭が生息すると推定され、九州地方に次いで絶滅の危機に立たされている。九州地方では、ここ十数年はツキノワグマの生息を示す証拠が得られず、既に絶滅したとも考えられている。科学的な研究により、ツキノワグマが絶滅を免れ、健全に存続できる頭数(最少存続可能個体数)は100頭と考えられているが、四国ではその頭数を大きく下回り、絶滅の危険性が極めて高い。その保護を目的として、2005年よりWWFジャパン(東京都港区)とNPO法人四国自然史科学研究センター(高知県須崎市)は剣山山系に生息するツキノワグマを5頭捕獲・放獣し、その内4頭に電波発信機を装着して、生息頭数や生態を明らかにするための調査研究を継続してきた。

 その調査の一環として九州大学大学院比較社会文化研究院自然保全研究室小池裕子教授に協力を求め、捕獲、採取したツキノワグマ4頭の血液サンプルを対象に遺伝子解析を行った。四国のツキノワグマは四国固有の遺伝的形質を持つ可能性が考えられていたが、その生物学的な希少性を裏づける遺伝子レベルでの研究は十分に行われてこなかった。九州大学自然保全研究室では、以前よりツキノワグマの進化系統や集団が持つ遺伝的特性について研究を進めており、今回、四国で現存する4個体の血液サンプルを含め、過去の捕獲・狩猟個体の組織片7個体の計11個体からDNAを抽出し、その希少性についてDNAレベルでの解析を行った。その結果、本州では見られない四国独自の遺伝子タイプを確認することができた。
  解析を行った九州大学自然保全研究室安河内氏によると、現存する4個体全ておよび過去に捕獲された2個体から本州産とは異なる遺伝子タイプが共通して検出され、現存個体は四国固有のツキノワグマであることが示されたとしている。さらに、本州のツキノワグマの解析結果との比較により、四国の個体群は早い段階で独立し、独自の遺伝的特徴を保持してきたと示唆している。解析に用いた遺伝子はミトコンドリアという細胞小器官に含まれるミトコンドリアDNAで、その一部の遺伝子タイプについて本州のツキノワグマと四国のツキノワグマの比較を行ったものである。この研究成果は、現存する四国の個体群が日本の中で遺伝的に独立性の高い希少な個体群であることを裏づける科学的根拠となる。
  生息頭数の減少による近親交配や遺伝的劣化なども考えられ、さらなる遺伝解析を早急に進め、四国のツキノワグマの遺伝的多様性やどの程度危機的な状況であるかを調べる必要がある。また、それに応じた保護策の強化も図りたいところである。現行の鳥獣保護区や緑の回廊では、生息域を十分にカバーしきれていないからである。  

 


図:日本のツキノワグマの遺伝子タイプによる近隣結合樹  <九州大学自然保全研究室作成>

 

図の説明

  上図の近隣接合樹は日本のツキノワグマの系統樹を示す。最も遺伝的な距離が小さい遺伝子タイプ(ハプロタイプ)を組み合わせて結合していくことにより東日本から西日本までのツキノワグマの遺伝的な系統樹を作成した。共通祖先の分岐点を推定するために、比較グループとしてユーラシア大陸産のツキノワグマの遺伝配列を用いている。
  この系統樹から、国内のツキノワグマから検出されたほとんどの遺伝子タイプは連続性が非常に高いことが示される。その一方で、四国のツキノワグマのみで検出された遺伝子タイプJ1は80%以上の確率でそれらとは異なる単系統のグループを形成し、独立性の高いグループであることがわかった。このことから、国内のツキノワグマの分散過程で四国の集団が比較的早い段階に分岐したことを示唆する。図中では青丸で示すJ1が四国に現存する4個体を含め、合計6個体から検出された四国独自の遺伝子タイプを示す。青字は現存する4個体の識別番号を示す。また、国内で広範囲にみられる遺伝子タイプJ3(青字)についても四国グループで検出されている。

 

お問合せ先:

NPO法人四国自然史科学研究センター 理事 金澤文吾
TEL・FAX:0889-40-0840 携帯TEL:090-1842-4563 E-mail:kanazawa@lutra.jp
九州大学大学院比較社会文化学府自然保全研究室 安河内彦輝(ヤスコウチ ヨシキ)
TEL: 092-726-4769 (研究室)
WWFジャパン 自然保護室 草刈秀紀 TEL:03-3769-1713/広報担当:大倉寿之

>>>関連記事へ

  

2008/4/11

関連するWWFの活動

日本のクマについて

日本にはヒグマとツキノワグマという、2種のクマが生息しています。いずれも、国内で最大の陸にすむ野生動物です。しかし、このクマたちはしばしば、人里へ現れて人間と軋轢(あつれき)の問題を起こすことが知られています。野生のクマと、いかに接し、共に生きてゆくのか。これらは国内の自然保護と、日本の社会に根ざし...続きを読む


法制度の改善

日本各地には今も豊かな自然が残っています。 WWFジャパンは、生物多様性を保全する取り組みとして、主に法制度の改善を国に強く働きかけています。これは、日本全国の環境行政と、生物多様性の保全に広くかかわる法律、制度の改善は、国内全体に広く、効率的に、その成果を及ぼすことが可能な取り組みです...続きを読む

あなたの支援で、できること。たとえば… 野生生物を守る WWF会員が10人集まれば、ベンガルトラを密猟するため仕掛けられた罠を探す金属探知器を、1台購入することができます。 「あなたの支援でできること」を見る