共同記者発表資料 2007年12月12日
四国のツキノワグマは、現在、高知県と徳島県をまたがる剣山山系にわずか十数頭から多くても数十頭が生息しているのみと推測され、絶滅のおそれが高い状況にある。NPO法人四国自然史科学研究センター(高知県須崎市)とWWFジャパン(東京都港区)は、その保護を目的に、2005年から剣山山系にて野生のツキノワグマを捕獲・追跡する調査を継続している。調査研究を目的として2006年までに剣山山系にて捕獲したツキノワグマは4頭で、いずれも捕獲場所は徳島県側(徳島県那賀郡那賀町)であった。剣山西部におけるツキノワグマの生息状況を調べるため、昨年から高知県長岡郡大豊町の山中において捕獲を試みていたところ、今年9月4日にツキノワグマ1頭の捕獲に成功した。高知県側でのツキノワグマの捕獲は、1986年2月香美市物部町別府(旧物部村別府)でのメスグマの狩猟記録以来21年ぶりとなる。高知県では1986年11月から捕獲禁止措置をとり、1986年以降は捕獲記録がなかった。
捕獲したツキノワグマはオスの成獣で、推定体重50kg程度とやや小柄の個体であった。捕獲地点から500mほど離れた場所で、昨年10月26日に無人カメラにて大柄のツキノワグマ(推定体重70kg以上)を撮影している。今回捕獲したツキノワグマは、体の大きさから撮影した個体とは別の個体と判断され、剣山西部においても複数のツキノワグマが生息していることがわかった。また、捕獲個体は左手首から先端部分が欠如していることを確認した。左手が欠如している理由としては、先天的な異常、物理的な事故、人為的なワナ等によるものが考えられるが、確かな理由は確認できなかった。この個体については麻酔の覚醒が早まり、発信機を装着せずに放逐したため、放逐後の移動経路や行動圏は分かっていない。
今回ツキノワグマが捕獲された付近は林業が盛んな地域である。農林業に大きな被害をもたらしているシカやイノシシなども多く生息しており、周辺ではツキノワグマの錯誤捕獲をまねく「ククリワナ」が使用されることもある。剣山西部でのツキノワグマの生息状況を引き続き調査するとともに、錯誤捕獲時の人身被害を未然に防ぎ、速やかにツキノワグマを放逐できる体制整備について県や各行政機関に要望していきたいと考えている。
添付資料)1.昨年の撮影地点と今回の捕獲地点、追跡個体4頭の行動圏
2.昨年の無人撮影写真と今年9月4日捕獲個体の写真
添付資料

昨年の撮影地点、今回の捕獲地点、4頭の行動圏

(C)NPO法人四国自然史科学研究センター
右写真:2006年10月26日、高知県長岡郡大豊町の山中にて撮影、体長120cm以上、体重70kg以上の大柄ツキノワグマと推測
下写真:2007年9月4日、高知県長岡郡大豊町の山中で捕獲されたツキノワグマ。オスの成獣。年齢不明(比較的若い)。推定体重50kg、体長100cm程度と小柄な体格。左手首から先端部分が欠如しているのは、先天的な異常か物理的な事故、人為的なワナなどいくつか理由が考えられる。高知県側では21年ぶりの捕獲記録となり、大豊町と香美市の境を含む剣山西部に複数のツキノワグマが生息していることが確認された。

(C)NPO法人四国自然史科学研究センター
関連するWWFの活動
日本のクマについて
日本にはヒグマとツキノワグマという、2種のクマが生息しています。いずれも、国内で最大の陸にすむ野生動物です。しかし、このクマたちはしばしば、人里へ現れて人間と軋轢(あつれき)の問題を起こすことが知られています。野生のクマと、いかに接し、共に生きてゆくのか。これらは国内の自然保護と、日本の社会に根ざし...続きを読む
法制度の改善
日本各地には今も豊かな自然が残っています。 WWFジャパンは、生物多様性を保全する取り組みとして、主に法制度の改善を国に強く働きかけています。これは、日本全国の環境行政と、生物多様性の保全に広くかかわる法律、制度の改善は、国内全体に広く、効率的に、その成果を及ぼすことが可能な取り組みです...続きを読む





