Media Advisory 2007年12月17日
【日本・東京発】2007年12月7日に原油流出事故が発生した韓国の忠清南道泰安(テアン)郡沿岸は、黄海の海洋生態系を保全していく上で、きわめて重要な海域である。泰安郡沿岸域は、WWF(世界自然保護基金)によって、黄海・渤海・東シナ海の一部を含む約46万平方キロの海域「黄海エコリージョン」の中の“優先保全地域”のひとつに位置づけられている。
WWFは2002年から、黄海エコリージョンの保全に取り組んでおり、2006年12月には、黄海エコリージョンの海洋生態系を支える生きものにとって重要な生息地を、科学的知見に基づいて抽出した「黄海エコリージョン優先保全地域」を発表している。23カ所選ばれた優先保全地域の中のひとつが、泰安郡沿岸の内海である淺水湾(チョンス湾)を中心とした地域である。
淺水湾周辺は、国際的に重要なツル類やカモ類の飛来地であり、貴重な海浜植物が生息する地域でもある。現在、WWFとともに黄海エコリージョンの保全活動を進めている韓国海洋研究院(KORDI)が、原油流出による生物多様性への影響の把握に務めている。現地では、漁業などへの被害が報じられているほか、韓国の環境NGOである環境運動連合によると、油に汚染されて死亡した水鳥(カンムリカイツブリなど二十数羽)も確認されているが、生態系への被害規模の全容は、まだわかっていない。
今後、KORDIでは、長期的な影響のモニタリングを行うため、現地調査を行う予定だという。WWFジャパンは、1997年に日本海で発生したロシアタンカー「ナホトカ号」からの大規模な油流出事故の際に、生態系への影響調査や情報収集などに携わった経験と情報をKORDIに提供している。
WWFの黄海エコリージョン保全活動のリーダーである東梅貞義(とうばい・さだよし)は「流出した油の種類や海岸の地形、気象などが違うので単純には比較できないが、97年のナホトカ号の2倍近い規模の油が流出したことを考えると、この地域の海洋生態系に深刻な影響が及ぶ危険が懸念される。WWFでは、KORDIを通じてすでに油が漂着している海岸における被害の状況把握に努めているが、今後、内湾へ被害が拡大しないことを願っている。WWFジャパンがこれまで蓄積してきた野生生物に関する油流出事故への対応ノウハウをKORDIにできるだけ伝え、その活動を支援していきたい」と話している。
ナホトカ号事故では、記録されただけでも1315羽の鳥類が油による被害を受けたことが判明した。把握しきれなかった鳥類、海浜植物、無脊椎動物などへの被害は、その何倍にも上ると推定されている。WWFジャパンでは、KORDIを通じて現地の支援ニーズを把握しながら、今後の対応を検討していく予定である。
添付資料:
1.黄海エコリージョン優先保全地域マップ 2.黄海エコリージョンにおけるWWFの活動
<添付資料1> 黄海エコリージョン優先保全地域マップ

<添付資料2> 黄海エコリージョンにおけるWWFの活動
1)黄海エコリージョンとは
黄海は、中国と朝鮮半島に囲まれた海域であり、世界最大級の大陸棚を持つことから、きわめて高い生物の多様性を誇ると同時に、古くから豊かな漁場として利用されてきた。
WWFでは、黄海、渤海および東シナ海の一部を含めた約46万平方キロの海域を、つながりのあるひとつの生態区「黄海エコリージョン」とし、海洋生態系と、沿岸にすむ人々の暮らしが、共に今よりも豊かになることをめざし、保全活動を展開している。
2)優先保全地域とは
WWFとKORDI(韓国海洋研究院)とKEI(韓国環境政策評価研究院)は2002年7月から、黄海の海洋生態系を支えている生きものにとって重要な生息地はどこかを、科学的知見を集めて割り出すプロジェクトに取り組んできた。2006年12月には「黄海エコリージョン優先保全地域マップ」を発表。広大な黄海エコリージョンにおいて、どこを優先的に保全すれば高い効果が得られるかを明らかにした。このマップは、UNDP(国連開発計画)による黄海の環境保全政策にも活かされている。
3)黄海エコリージョン支援プロジェクトとは
2007年9月、松下電器産業株式会社の支援を受けて、黄海の海洋生態系の保全をめざす7年間のプロジェクト「黄海エコリージョン支援プロジェクト」が発足した。黄海エコリージョンの優先保全地域において適切な保全と効果的な管理を行い、広く一般の関心を確実に高めることをめざす。
中国においては、WWF中国と、中国の沿岸および海域の利用・管理を管轄する中央官庁である中国国家海洋局(SOA)が協働する形でプロジェクトが進められる。韓国においては、KORDI(韓国海洋研究院)が主要な推進主体となる。
黄海エコリージョン支援プロジェクトの7年間の計画
(1)第1ステージ(2007.8~2010.3)
中国および韓国の地域社会が主体となって行う普及啓発活動と、生息地保全活動を公募し、活動資金の助成と、経験や情報を交換する学びの機会の提供を行う
(2)第2ステージ(2010.1~2013.3)
中国・韓国でそれぞれ1カ所ずつモデル地区を設けて、国際基準の生息地管理手法を利用しつつ、3年間で地域の特性に合った保全の取り組みを、地域社会と協働で行う
(3)第3ステージ(2013.4~2014.9)
第1ステージの助成事業による事例と、第2ステージのモデル地区の成果事例をまとめ、中国・韓国をはじめ、世界に“アジアの里海共生モデル”を発信し、より広い地域で同様の取り組みの展開を呼びかける



