日本から空路で1時間半の距離に位置するロシア極東地域。ここには、世界的に貴重な自然林が今も残されています。しかし、ここでも野生生物の密猟や密輸が起きており、2007年に入ってから、すでに4度にわたる、大規模な違法取引が発覚しました。自然や野生生物への影響が心配されています。

押収された毛皮とクマの足(掌)。(C)WWF Russia
極東ロシアの地図
希少な野生生物の密輸が発覚
世界の多くの国々では、今も野生生物の密猟や違法取引が多発し、貴重な生態系を脅かしています。ロシア極東地域も例外ではありません。
2007年、ロシアの国境警備隊や税関担当者は、すでに4度にわたり、密猟により入手されたと考えられる、大量の物品を押収しました。
まず1月、総量360キロにのぼるクマの足(掌)と、シベリアトラ(アムールトラ)3頭分の毛皮と骨、そして、サイガの角531本が押収されました。
クマの足は「熊掌」と呼ばれる手のひらの部分で、中華料理の高級食材として知られています。また、サイガとは、中央アジアに2種が生息するウシ科のアンテロープの一種で、その角は主に「羚羊角」と呼ばれ、トラの骨「虎骨」と共に、漢方薬の原料として珍重されます。
クマの足は、翌2月にも、130個が押収されたほか、7月にはウラジオストクの税関で、トラの骨を密輸しようとしていた人物が検挙されました。そして8月、480キロものクマの足とシベリアトラ1頭分の毛皮と骨、薬草の一種であるジンセン20キロが押収されました。
ツキノワグマやサイガ、シベリアトラなどは、いずれもIUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」(絶滅のおそれのある種のリスト)に、その名前が記載されている野生生物です。「ワシントン条約」によって国際取引が規制されており、ロシアの国内法で狩猟や取り引きが禁じられているものも含まれています。
希少な自然と野生生物を守ってゆくために
これまでに摘発されてきたクマの足は、極東ロシアの森に生息するヒグマとツキノワグマ、双方のものが入り混じったものでした。この2種のクマは、いずれも極東ロシアを含む、東アジアに広く生息している動物であることから、現地の森で狩猟または密猟されたものが多く含まれているものと考えられます。また、極東ロシアにしか生息していないシベリアトラについては、長い間法律で狩猟が禁止されてきたことから、密猟によるものであることは、ほぼ間違いありません。
このことは、極東ロシアの森林生態系を脅かす問題が、決して伐採や開発だけではないことを物語っています。
密猟や違法な取引(密輸)は、ロシアでは今も後を絶ちません。その主な理由は、ロシアでは特にソビエト連邦崩壊後、森林管理や密猟、密輸の取り締まりに割かれる人員や予算が、大幅に減らされてきたためです。
ソ連時代は、森林は全て国有財産とされ、諸外国との経済交流も制限されていたことから、密猟や密輸も、強い国家権力のもとで厳しく取り締まられていました。
しかし、ソ連が崩壊すると、森林の管理が地方政府の管轄に移されたため、多くの地域で予算や人的資源の不足が発生。それがそのまま、密猟や密輸の取り締まりをゆるめる結果を招くことになりました。
WWFは、国境警備の強化を求めると共に、情報提供や技術支援、あるいは国立公園のレンジャーの人件費などを含めた資金的な面からの支援を行なってきましたが、根本的な改善はなかなか見られません。
国際的な視野で応援を!
WWFは現在、極東ロシアの自然を保全するため、アムール川(黒龍江)流域を中心とした森林保全活動を展開しています。その内容は、フィールドでの調査活動から、地域住民を対象とした普及啓発まで、多岐にわたります。この取り組みには、WWFジャパンをはじめとする、ロシア国外の多くのWWF事務局も参画、現地での取り組みを長期的に支えていく活動を行なっています。
ロシア国外でも、多く取り組むべきことがあります。一つは、それぞれの国が、密猟や違法な形で取引きされるものを輸入したり、国内で販売することを厳しく規制することです。
また、現地の自然の大切さ、たとえばロシアの森が、いかに重要な価値を持っているかを、国際社会が知ることも重要です。日本にとって、ロシア極東地域はまだまだ近くて遠い場所といえるでしょう。しかし、そこからは今も多くの木材が輸入されており、その環境にはさまざまな形でかかわっています。
日本を含めた海外の企業や組織、一人ひとりの人々が問題に目を向け、環境破壊や野生生物の違法取引を無くす国際世論を作ってゆくことも大切です。
記者発表資料
2007年9月11日
「ロシア極東地域で外貨獲得の犠牲になる野生生物、国境を越えて中国へ」
▼このニュースの英文は、以下をご覧ください(WWFインターナショナルのサイト)
"Illegal bear and tiger parts seized in Russian Far East" (28 Aug 2007)
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