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WWFの活動

足を失くしたトラ... スマトラ島・自然保護区にも迫る危機

スマトラ島中部のテッソ・ニロ国立公園内の森林で、罠にかかって足の一部を失ったスマトラトラが確認されました。WWFは周辺の住民と野生動物の衝突の回避をめざし、生息域である森林の保全と、野生生物保護に対する理解を求めています。

(C)WWF-Canon / Michel TERRETTAZ

(C)WWF Indonesia

自動カメラで撮影されたトラ。オスの個体とみられ、右の前足が切断されている。 現在、テッソ・ニロ国立公園内で生息が確認されている野生のトラは5頭。さらに、WWFなどが保護区拡大を提案している区域にも、少なくとも2頭が生息すると推定されている。
(C)WWF Indonesia

20070405ga.gif テッソ・ニロ周辺のトラの出没状況(2005年)。青いマークがトラが確認された場所。保護区外の地域での記録が多いことが分かる。(地図はクリックすると拡大されます)
(C)WWF Indonesia

国立公園内に仕掛けられた罠

  かつては、島全体が熱帯林に覆われていた、インドネシアのスマトラ島。その中西部リアウ州のテッソ・ニロ地域には、アマゾンに劣らない豊かな生物多様性を誇る貴重な熱帯林が今も残ります。
このテッソ・ニロの森林は現在、国立公園として法的な保護下にありますが、現実には、森林や野生生物の保護・管理体制は万全とは言い難い状況が続いており、違法な伐採や密猟が跡を絶ちません。そして、その実証となる事実が、また一つ確認されました。
トラバサミなどの罠にかかって、右前足の一部を失った野生のトラが、公園内で確認されたのです。

 WWFは現在、テッソ・ニロとその周辺の森林で、絶滅が危惧されるトラ(スマトラ産の亜種スマトラトラ)の保護活動を実施しています。トラの生息数や行動域の調査のため、森に自動カメラを設置し撮影を行なっていますが、そのカメラが、右前足の一部を失った一頭のオスのトラの姿を捉えたのです。

 写真が撮影されたのは、2007年3月と5月のことでした。2006年11月に、「罠から逃げ出したトラがいるようだ」との通報があったことから、撮影されたのはこの時、罠から逃げた個体であるとWWFは推定しています。

  専門スタッフによると、トラの健康状態は良好だとのことですが、WWFインドネシアの密猟対策チームのオスマンティは、今後について懸念を述べています。
「今は状態が良さそうに見えても、今後もこのトラが野生で生き続けられるかどうか、まったく保証はできません。怪我をしたトラは、野生の状態で獲物を捕らえるのが難しくなります。その結果、民家付近に出没し、家畜や時には人間を襲うようになるかもしれません」。

減少する森と野生動物

  世界でスマトラ島にだけ生息する野生のスマトラトラは、全体でも400頭以下と考えられており、現在、最も絶滅の危険性が高い野生生物の一つに数えられています。しかし、その主な生息地であるスマトラ島の熱帯林は、紙パルプやヤシ油生産などを目的とした開発によって、年々減少・劣化の一途をたどっており、危機はますます深刻になっています。
さらに、森の奥にまで道が伸び、人やトラックが入れるようになったことで、高価な伝統薬の原料となる虎骨などを狙った密猟の脅威も増大。豊かな森の景観と共に、スマトラトラは減少の一途をたどっているとみられています。

 スマトラの熱帯林を保全し、トラの生息数を回復させてゆくためには、より広域の森林をまず保護区とし、違法伐採や密猟の取り締まりなどの管理を徹底していくことが不可欠です。
2005年からWWFはインドネシア政府と共同で、保護区とその周辺で、野生動物を狙う罠を取り除く活動を実施してきました。今までに発見し、取り除いた罠は、101例にのぼり、そのうち75個はテッソ・ニロ国立公園と、隣接するリンバン・バリ野生生物保護区の区域内に仕掛けられていました。
一部は明らかにトラ用の罠で、密猟者が骨や毛皮の採取を目的に仕掛けた物でしたが、地域の住民が「ブッシュミート」を得るために仕掛けた物も多く確認されました。

 

森の未来を握る保護区のあり方

(C)WWF Japan
伐採されるリアウ州の森。伐採や火入れ(放火)の後は、ヤシ油を取るためのアブラヤシのプランテーション(植林)にされる地域も多い。
(C)WWF Japan

  「ブッシュミート」は、地域の住民がタンパク源として食べたり、売って現金を得るために狩られた野生動物の肉のことで、開発途上国における野生動物保護には、しばしばかかわってくる問題です。これを解決するためには、地域住民の理解を求める一方、これらの資源に頼らずに生活できる手段を確立しなくてはなりません。

 テッソ・ニロ周辺でも、WWFは地域住民に対して、罠の使用を止めるよう呼びかけ、森林の景観保全についての理解を求めています。
違法伐採や野生動物の密猟、農園への転換など、公園での違法行為が続くことになれば、野生生物のすみかはますます減少し、すみかを追われた野生生物と住民との衝突が、より増大する可能性があります。そして、住民が自分の生活を防衛するために罠を使用する、という悪循環が生まれてしまうことになりかねません。

 テッソ・ニロ国立公園は保護区に指定されているものの、公園の内部では、密猟や違法伐採が横行しており、その管理体制は不充分と言わざるを得ません。しかし、WWFをはじめとるする環境保護団体は、現在3万8,576ヘクタール(東京都区部の62%に相当)にすぎないテッソ・ニロ国立公園の面積を、あえて10万ヘクタールまで拡大するよう、インドネシア政府に求めています。
数年越しのその提案は未だ実現を見ていませんが、現地で実際に生活を営む住民の理解と、保護政策に責任を負うべき政府の政策が同時に進まなければ、環境保護は成功しません。今、残されている最後の天然林を未来に残すためにも、一刻も早い対策の実施が必要とされています。

記者発表資料

2007年7月5日 【インドネシア、ジャカルタ発】
罠で足の一部を失ったトラ、国立公園内で撮影される~WWF、自動カメラで確認

▼WWFインターナショナルのサイト(英語)
05 Jul 2007
WWF photographs three-legged Sumatran tiger
http://www.panda.org/about_our_earth/about_forests/forest_news_resources/?108160/

 

2007/7/05

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