2007年5月、タイのバンコクでIPCC(気候変動に関する政府間パネル)により、地球温暖化の影響を食い止めるための道筋を示した報告書が採択されました。深刻化する温暖化の現状が次々と明らかになる一方で、日本はどのような取り組みを目指すべきなのでしょうか?
2050年までに排出量を半分に!
2007年に入り、気候変動問題に関する諸問題を評価・研究する組織であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の3つの作業部会から、相次いで第4次評価報告書が発表されました。 温暖化が進んでいる「根拠」を示した第1作業部会報告書、その「影響」を明らかにした第2作業部会報告書に続き、5月4日に公開された第3作業部会報告書で、IPCCは温暖化への「対策」をまとめました。
これらの報告書では、今すぐ温室効果ガス排出量の削減に取り組みはじめれば、2015年までに排出は減少傾向に転じること、そして、2050年までに現在の排出量の半分まで削減ができれば、地球温暖化の脅威を防ぐことは可能であることが示されています。これを実現させるためには、2008年から始まる京都議定書の第1約束期間を第一歩とし、その後も、大幅な排出削減を実現していくことが必要になります。
ところが一方で、カナダは4月末に、京都議定書で定められた温室効果ガス削減目標を達成できないことを明らかにしました。先進国のこうした態度は、気候変動の被害を最も受けている途上国の不信を招き、第1約束期間が終了した後の2013年以降の地球規模の取り組みを難しくするものです。
原単位あたりの削減という問題
たとえば、自動車を1台作る場合

それまで、製造する際に出していたCO2を
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エネルギー効率を上げて、減らすことができれば、
自動車1台あたりの製造時の
CO2排出量は減る!

製造時のCO2排出を削減しても、
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生産する台数を増やしてしまうと、結果的に全体の総排出量は減らないことになる。(逆に増えてしまう可能性もある)
★しかし、経団連の「自主行動計画」では、総排出量が減らなくても、原単位あたりの削減ができれば、それでよいとしており、しかも企業はどちらか、都合のよい目標を選べばよいことになっている。
日本は脱温暖化社会に転換できるか?
日本では現在、経済産業省と環境省による合同審議会で「京都議定書目標達成計画(以下「目達計画」)」の見直しが行なわれています。
しかし4月中旬にまとめられた「論点整理」では、日本全体の排出量が2005年度で基準年より8.1%も増大しているにもかかわらず、今の「目達計画」の延長線上での追加対策しか検討されていません。
カナダ同様、日本も京都議定書の目標である-6%の達成は、はなはだ危うく、委員の中には、京都議定書の目標を達成しない可能性を語る人も出始めています。 政府や産業界の、温暖化問題に対する危機感、責任感は極めて希薄であり、また温暖化を引き起こし、すでに世界中の多くの人々や生態系に被害を与えているという意識が低いといわざるを得ません。
最大の問題は、エネルギー・産業部門が日本の温室効果ガス排出量の64%を占めているにもかかわらず、この部門への対策が、日本経団連の「自主行動計画」に全面的に依存していることです。
この 「自主行動計画」には、排出量の削減目標が業界単位で定められていますが、企業単位での目標は設定されていません。各企業の削減目標は明らかにされていないばかりか、「計画」としての削減目標が達成できなかった場合も、その責任の所在が決められていないのです。
さらに、ほとんどの業界が、排出量の総量規制ではなく「原単位(生産量や売上高あたりのCO2排出量あるいはエネルギー消費量)」目標を選択しているため、全体の削減量は保証されていません。(右図参照)
排出量が急速に伸びているオフィスビル・店舗・家庭などの民生部門、運輸部門が最大の問題、という点ばかりが、業界によって強調されているにもかかわらず、これらの部門に対して、削減をするとこれだけ得をするというような政策の導入が検討されていないことも大きな問題です。
今求められている対策
今、地球温暖化対策に必要とされる抜本的な政策は、CO2排出に値段をつけ、削減することがメリットとなるような経済的仕組みを作ることです。
WWFは大規模排出者には、排出枠を売買する国内排出量取引制度を、その他の部門には排出に応じて支払う炭素税や、中小事業者がエネルギー効率の良い設備を導入することで、削減できた排出分を売ることのできる制度を組み合わせたポリシーミックスなど、経済的手法を導入すべきだと主張しています。
そのためにはまず、日本が国としてどのくらい削減する意思があるのかを示す、2050年、2030年の中長期目標を持つことが欠かせません。そして、そのような制度を導入する政治を、国民が自ら求め、作ってゆくことが必要です。
いよいよ近づいてきた参議院選挙においても、温暖化問題について、候補者や政党がどのような理解と主張、具体的な提案を持っているか、投票の際の判断材料にしてゆくことが、日本を脱温暖化社会へと転換させるために個人ができる一つの重要な行動になるでしょう。
関連資料
環境NGO合同声明
2007年5月25日
「中・長期目標のもとに、抜本的な政策導入で京都議定書目標達成を!」
日本の産業界に、これ以上のCO2排出削減の余地があるかを考察した資料はこちら。
▼「乾いた雑巾は本当か」(PDF形式:858kb)
▼「乾いた雑巾は本当か(参考資料)」(PDF形式:1.3Mb)
(WWFジャパン/気候ネットワーク作成 2007年5月16日)
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