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活動トピック

コピー用紙はどこから来る? 自然林の破壊続けるAPP

豊かな自然を誇りながらも、劣化・減少が著しい、スマトラ島リアウ州の熱帯林。WWFは、現地に拠点を置く大手製紙会社APP社に働きかけ、特に保護価値の高い森林(HCVF)の保全などを求めてきました。しかし、APP社は2006年6月、森林保全に対する配慮を放棄する態度を明らかにしました。 

スマトラ島 リアウ州の問題

全ての樹木を伐り払う森林の皆伐、火入れ、そしてプランテーションの植林。今、世界の各地では、森林が広範囲にわたって破壊され、失われています。適切な環境が残されていれば、樹木は再生し、持続的に木材資源を供給してくれますが、残念ながら現在は、木々の再生を上回る早さで森が伐採される例が多いのが現状です。
インドネシア、スマトラ島中部のリアウ州で起きている森林問題も、その典型的な例といえるでしょう。

リアウ州には、世界的に多様性の高さが認められた熱帯林が、今も残されています。絶滅が心配されるスマトラゾウ(スマトラ島にだけ生息するアジアゾウの亜種)にとって、わずかに残されたすみかでもある、テッソ・ニロ国立公園があるのも、このリアウ州。しかし、これらの森は年々縮小し、消滅の危機に瀕しています。保護区に指定されている国立公園の森も安泰とはいえません。

この州の森林保全のかぎを握っているのは、大手製紙企業の、アジアパルプアンドペーパー(APP)およびエイプリル(APRIL)社の2社です。リアウ州に操業の拠点を置き、州内の森林から木材を供給している2社とそのグループ企業は、自然林の伐採や植林の許可を保有。広範囲で伐採した木材を紙の原料(パルプ)として利用し、伐採した跡地にアカシア(成長が早く、製紙原料となる)の植林を行なっています。

しかし、その規模や、実際の事業の展開が、現地に残された貴重な生態系の維持を危うくするものであったため、長い間、問題視されてきました。

伐採者が森の保全に貢献する?

しかし、逆にこの2社は、リアウ州の森林に明るい前途を約束することができる、重要なステークホルダーであるともいえます。2社が現在保有している伐採・植林許可を見直し、森林環境に配慮しながら事業を展開するような方針を立て、確実に実行してゆくならば、残された貴重な森林の保全が約束されることになるでしょう。

そこでWWFは、2001年より2社に対して、伐採権を所有している森の中に残っている、特に保護価値の高い森林(HCVF)を確認し、適切に保全するよう求めてきました。同時に2社から紙を購入している、他の国々の取引先企業に対しても、2社に対しHCVFの保全を促すよう、働きかけを続けてきました。

APPの背信

この結果、2社のうちのAPPは、2003年8月、HCVFの保全や、合法で持続可能な木材供給とパルプの生産に関する、アクションプランを作ることに同意。WWFと同意書を交わしました。しかし、2004年2月、WWFはAPPとの公式な対話を打ち切ることになりました。完成した実際のアクションプランが、残念ながら、目的の達成には程遠い、誠意を欠いた内容だったためです。

同じ年にAPPは、同社が管理する4カ所の森林区域での伐採を一時停止し、HCVFの分析を行なった上で、確認された合計12万ヘクタールのHCVFを保全すると公約しました。

しかし、保全を公約した森林に隣接した場所で発生している違法伐採や、森林火災を軽減する活動は考慮していないなど、本質的な森林保全を実現する上で避けられないはずの問題がそのままになっており、いかにも表面的な内容であることが明らかになりました。

2006年6月にWWFに送付された、APPによるこれらのHCVFの保全状況を検証した「モニタリング報告書」も、同社が何ら効果のあるHCVF保全を実施していないことを明らかに裏付けていました。事態は改善されるどころか、大きな後退としか言いようのない結果を残すことになったのです。
そして、2006年6月20日、WWFインドネシアとの2年ぶりの会合で、APPは、自社が手がける、インドネシアでの伐採・植林・紙パルプ生産全体において、HCVF保全を公約しないことを明言。森林保全に対する配慮を、公に放棄する意志を顕わにしました。

失われつづける森

Photo(C)WWF-Germany/M. Radday

一面に広がるアブラヤシのプランテーション。リアウ州では生物多様性の高い天然林が伐採され、紙パルプの原料にされているほか、伐採や火災の跡地がアブラヤシやアカシアのプランテーションへと急速に姿を変えている。(C)WWF-Germany/M. Radday

Photo (C)WWF-Canon/Fredy Mercay

スマトラ頭にだけ生息するトラの亜種、スマトラトラ。生息数は最大でも推定500頭といわれる。森林の減少にともない、トラと人間の衝突事故が頻発するようになった。また、伐採者が森林に道路を作ると、密猟者も森の奥まで入り込むようになる。漢方薬の原料となる骨を狙った密猟は、トラを絶滅に追い込む大きな原因だ。(C)WWF-Canon/Fredy Mercay

Photo(C)WWF Japan

森に作られた道。赤い土が剥き出しになったこの道路から、左右に向けて森が切り開かれてゆく。ここからコピー用紙などの原料として生産される紙パルプの量は膨大だ。(C)WWF Japan

Photo(C)WWF Japan

泥炭林のような水気の多い森では、まず水路を切って、水を抜いてから伐採が行なわれる。これらの水路や川なども違法に伐採した木材を運ぶルートになる。 (C)WWF Japan

WWF-Canon/Alain COMPOST

国立公園のような自然保護区の周辺や内部でも伐採は止まらない。(C)WWF-Canon/Alain COMPOST

しかし、実際には2001年以降、WWFや取引先の各国企業が、HCVF保全を求め続けていた間も、APPは、45万ヘクタール(東京都の2倍以上)に相当する自然林を伐採し続けていたと考えられています。

同社は現在も、リアウ州で毎年8万ヘクタールの自然林を伐採していると推定されていますが、今後さらに、これと同程度もしくは上回る量の森林を伐採して、木材原料の調達を続けるものと考えられています。

消滅が予想される森の中に、絶滅が心配されるスマトラゾウやスマトラトラなどの貴重な生息域であるHCVFが広く含まれることは、間違いありません。そして、この森の未来に、木材や紙の消費大国である日本も、深いかかわりを持っています。

日本にできること

企業にできること -コピー用紙の原産地確認を

 日本で現在利用されているコピー用紙の約30%は、インドネシアから輸入された物です。そして、その中の実に80%は、リアウ州で合法性のきわめて疑わしい伐採による木材を原料にして作られています。おおまかに計算すると、日本で使用されるコピー用紙の4枚に1枚はリアウ州の木を原料に作られた物、ということです。

 WWFは、コピー用紙を製造および流通、小売する企業そして、業務でコピー紙を使用するすべての企業や組織に対し、ビジネス上の立場からリアウ州での森林保護に貢献するステップとして、以下のことを呼びかけています。

  1. 自社製品あるいは使用するコピー用紙のサプライ・チェーンを再検討し、生産者が違法に入手した木材や、保護価値の高い森林を破壊して得られた木材原料によるパルプやコピー用紙等を生産していないことを確認する。

  2. もし、生産者がこうした「望ましくない由来」の木材でパルプ・コピー用紙等を作っている可能性のある場合、その生産者に対し、使用している原料木材の全てが環境に配慮し、社会的にも責任ある由来のものであることの詳細な証明を要求する。

  3. 生産者がそれを保証できないのであれば、取引先を切り替える。逆に、生産者がそのビジネス全体で生態系や環境に配慮した原料調達を保証した場合は、より積極的に取り引きをすることで、メリットを与える。

 現地のインドネシアで伐採企業や製紙会社が、明らかに違法な操業をしており、政府もそれを抑止する力がない現状下、リアウ州の森林生態系を保全するためには、経済的なつながりを利用し、国際社会が警告を発することが求められています。その中で、紙を購入している日本の企業が担うことのできる役割と、取るべき責任ある行動は、非常に大きなものです。

消費者にできること -不審な物を購入しない習慣を

 仕事やそれ以外の場面で、私たちが紙を使わない日はありません。この普段の暮らしの中で、どうやって生産されたかわからない紙を使わないようにすることは、消費国にできる、重要な取り組みといえます。
もっとも、コピー用紙などは、外装を取り去ると区別がつかないことが多く、生産者を逐一チェックするのは大変かもしれません。しかし、由来の疑わしいコピー用紙の中には、外装も白紙に近く、故意にブランドを付けずに売られている物があります。そうした製品は、概して非常に安価です。

 食品を購入する時、購入者はまったく生産者や由来のわからない物を買う時には不安を覚えるものです。紙製品についても食品と同様に、どこから来た物なのかを確認する習慣を広げることが必要といえるでしょう。
WWFは、一人ひとりが消費者としての責任を持ち、誰がどこで生産したのかはっきりしている木材や紙を購入することで、世界の森林保全に貢献できると考えています。


関連情報

APP、保護価値の高い森林の保全を約束せず

インドネシア スマトラ島リアウ州問題関連資料
WWFインドネシア 記者発表資料(翻訳) 2006年7月11日

 (インドネシア、ジャカルタ)WWFの最新のモニタリング報告書(2006年6月発行)によると、国際的な製紙企業であるアジアパルプアンドペーパー(以下APP)はインドネシアにおいて、野生生物と人間の両者にとって貴重な森林を脅かし続けていることが判明した。これは同社が、取引先企業に対し表明した誓約を破棄したことを意味する。

 報告書によるとAPPの事業は、年にして80,000ヘクタールの自然林消失の直接原因であり、これはインドネシア、リアウ州における2002年以来の森林消失面積の約半分に相当する。2005年時点ではAPPは、島嶼を除くリアウ州の5分の1に近い面積に当たる約520,000ヘクタールの森林を管理していた。その森林すべてが消失の危機に瀕しており、製紙の需要に応えてパルプ生産を拡大するため、同社が将来追加して伐採権を得ようとしている森林も同様の脅威にさらされることになる。

 「リアウ州内にあるAPPの製紙工場への原料供給のため、この5年間で伐採された自然林は、約450,000ヘクタールにおよぶと推定される。保護価値の高い森林(以下HCVF)の保全をしないというAPPの見解は、さらに数十万ヘクタールの森林が同じ運命を辿ることを意味する」WWFインドネシア、政策および企業対応部長のナジール・フォアドは語る。

 HCVFとは、環境や社会経済的な観点および、生態系の多様性や景観維持の面からきわめて重要な森林を指す。2006年6月のWWFとの会合においてAPPは、同社がこのような森林を伐採したり、HCVFに由来する木材を製紙原料として使用しないことは保証できないと述べた。この会合は、このモニタリング報告書に応答してAPPが開催を提案したもので、2004年2月以来、両者間で公式な会合は実施されていなかった。2004年2月の会合ではAPPは、同社の持続可能な行動計画の中に、環境や社会面での関与事項を盛り込むことを拒絶している。

 2001年からWWFとAPPの取引先企業数社は、HCVFを保護するような持続可能な木材原料の供給計画を立てるよう、同社に対し要求し続けてきた。APPは以前、HCVFである数ヶ所の林区の保護を公約しているが、今回の報告書は、こうした林区で発生する違法伐採や火災に対し、同社が何ら対策を講じていないことを示している。

 「HCVFの保護を拒否したAPPは、トラやゾウ、その他インドネシアの森林に生息する生物の存続を危うくしている。ひとつの企業が自社の利益追求のために、かけがえのない価値のある森林を破壊することには、いかなる正当な理由も見つからない(N.フォアド)」。

 WWFはインドネシアの中央および地方政府と共同で、保護価値を保全するための国土利用計画と伐採許可の発行プロセスの策定に取り組んでいるが、HCVFすべてを保護するには至っていない。しかしWWFは、APPと同じ企業グループに属するPTスマート社を含む、複数のアブラヤシ関連企業とのパートナーシップによる活動を展開し、そうした企業のアブラヤシ農園の中や周辺でHCVFを保護する取り組みを推進するといった成果を上げている。

 WWFはまた、紙パルプや紙製品を購入する側の国際的な企業をサポートし、違法伐採や充分に保護されていないHCVFに由来するパルプ原料を調達しないような、責任ある調達方針の策定を促進している。

 「責任のある調達方針を持つ企業が、HCVFを伐採し続けるような企業と取り引きを継続することには、もはやいかなる言い逃れも通じない」WWFグローバル・フォレストプログラム部長ダンカン・ポラードは断じた。

本件に対する問い合わせ先:
ナジール・フォアド、WWFインドネシア、nfoead@wwf.or.id, +62 811 977604
ロド・テイラー、WWFインターナショナル、rodtaylor@wallacea.wwf.or.id, +62 811 387308
ソー・クン・チェン、WWFインターナショナル、skchng@wwfint.org, +41 22 3649018

Notes to Editors:

1.WWFのモニタリング・レポートの背景資料である「リアウ州最後の自然林-グローバルな紙パルプ企業2社がその運命を決定する(添付資料)」によれば、1988~2005年の間にリアウ州の森林は半減し、年間約170,000ヘクタール、一日に換算すると460ヘクタールの規模で消失している。しかし平均の消失面積は問題の一部を示すに過ぎない。年間の森林減少の推移を見ると、2002年に2.2%だったものが2004年には4.2%、2005年には6.8%と、過去数年に急速に加速している。国際的な製紙企業であるAPPおよびアジア・パシフィック・リソーセズ・インターナショナル(APRIL)の2ヶ所の製紙工場に製紙原料である木材を供給するための森林皆伐が、こうした森林減少の主要な要因である。2005年7月APRILは、HCVFを保護し、そうした森林からは木材を一切調達しない旨の方針を公約した。

2.木材の責任ある調達については、WWF発行の冊子「林産物の責任ある調達(第1版)」 (英文/PDF形式:552KB)を参照されたい。

3.APPがHCVFを保護していないことを示すモニタリング・レポートの入手は、監査会社であるスマートウッドの以下の電子メール宛問い合わされたい (jhayward@smartwood.org もしくは ljones@smartwood.org)。

4.シナル・マス・グループのグループ企業に属するAPPの姉妹会社であるPTスマート社は、「持続可能なパームオイル円卓会議 (以下RSPO)」に参加し、HCVFの保護を公約している。RSPOはWWFが2003年に立ち上げた、独立した非営利の組織。持続可能なパームオイル生産を推進し、国際的に合意できる責任あるパームオイル生産はどうあるべきかを検討する、マルチステークホルダー型の組織である。HCVF保護は、責任あるパームオイル生産に不可欠な要素であり、RSPOメンバーであるすべての企業が、新たなアブラヤシプランテーションの造成または既存のプランテーション拡大に際し、HCVFの確認を義務付けられている。 RSPOのホームページ:www.rspo.org

5.このプレスリリースで言及された文書はすべて、以下のWWFインドネシアのサイトから入手することができる:
http://www.wwf.or.id/index.php?fuseaction=news.detail&language=e&id=NWS1151055588

  1. 上記同英文オリジナル”APP fails to protect High Conservation Value Forests”(PDF形式/35.8KB)

  2. 背景報告書「リアウ州最後の自然林 -グローバルな紙パルプ企業2社がその運命を決定する」(和文:PDF形式/919KB)

  3. 同英文オリジナル“The Eleventh Hour for Riau’s Forests”(PDF形式/804KB)

  4. 「WWFモニタリング報告書 2006年6月アジアパルプアンドペーパー(APP)」(PDF形式/676KB)

  5. 同英文オリジナル“APP Monitoring Brief June 2006: Asia Pulp & Paper (APP)”(PDF形式/421KB)

▼WWFインドネシアのホームページ: http://www.wwf.or.id

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