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WWFの活動

COP/MOP1 WWFポジションペーパー

 「無駄にしている時間はない」

第11回国連気候変動枠組条約締約国会議  及び
第1回京都議定書締約国会議に対する WWFのポジションペーパー

この問題はかつてないほど急を要している

気候変動はすべての国や部門の枠を越えて、あらゆるレベルの社会と統治機関に影響を与える問題である。すでに気候変動は単なる環境問題ではなく、世界中の水、農業、エネルギー、そして外交問題にとり、鍵となる問題としてとらえられている。国が発展し安定した経済活動を保つ能力へ基本的に影響を及ぼす気候変動は、いまやすべての政府のトップレベルが、社会と自然に悲惨な成り行きが待ち受けないように真剣に取り組まなければならない問題である。気候変動に関するモントリオール会議は、この論議のきわめて重要な岐路となるときに、開かれる。京都議定書が発効してからはじめての会合であり、世界中から数千人の人々が集まるモントリオール会議は、世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるために必要な大幅な排出削減を達成する弾みをつける場とならなければならない。各国政府は、この会議を通して、世界中の人々、産業界、経済市場、政策立案者たちに、たった今行動を起こさなければ、気候の不安定さというのはすぐそこに待ち構えている極めて厳しい現実であるということを認識させて、それぞれが公平な負担をする必要があるということを示さなければならない。

モントリオール会議は、各国政府が、京都議定書が発効したことを祝い、さらに2013年以降の取り組みについての交渉をはじめることを宣言するときである。京都議定書と気候変動条約を基盤にした公式な交渉を立ち上げることによってのみ、各国政府は気候変動に対して真剣に取り組み、2013年以降にどう対応するか交渉をはじめる用意があるという意思を示すことができる。このプロセスをはじめるという決定は、それぞれの国が何をするかではなく、どのように公平で透明な方法で議論をすることができるかを焦点にするものである。京都議定書の第3条9項では、その話し合いを2005年にはじめると規定されている。世界中ですでに実際に気候変動が起きていることを立証するような事象がたくさん起きている。大臣たちは、議定書と条約によってまもなく行われるレビューとあわせて、明確な期限を設けた議論をはじめるという決定には、一刻の猶予も許されないことを確かにするべきである。

2013年以降:話し合うときが来た!

2013年以降の枠組みを決めるプロセスをはじめるという決定には、衡平さと「共通だが差異ある責任」の原則にのっとったいくつかの鍵となる要素を含んでいなければならない。またこのプロセスは今年モントリオールで開始されて、2008年に終わらなければならない。明確な期限はプロセスを前へ進めるために不可欠である。そして3年間というのは、複雑な交渉が行われるのに十分な時間といえる。モントリオールの決議には交渉の中身をまとめるための委任事項が含まれなければならない。これらには、緩和の面では、なにがそれぞれの国にとって公平な分担であるかを決める衡平な緩和責任、3つの柔軟性メカニズム、遵守、土地利用の変化と林業、技術移転と、それにもちろん適応とその資金という欠かせない事項が含まれていなければならない。

プロセスにおける議定書と条約の役割について

議定書と条約はそれぞれ別の強みがあるということと、先進国がリードし続けなければならないことを考えると、WWFは二つの機関において議論される中味は、明確に区分されていなければならないと考える。

京都議定書は、修正を加えるという形で、状況に合わせていかようにも変えられることができる、生きている条約である。例えば、今後、第二約束期間に途上国が関わってくるとしても、その関わり方は、先進国とははっきりと違う形になるであろう。だれも途上国に拘束力のある絶対量削減目標を持つことは期待しないであろう。「共通だが差異ある責任」を果たすために、途上国は第1約束期間で果たした役割よりも多くの役割を果たさなければならないが、その中味はあくまでも今後の交渉により、決められるものである。CAN(Climate Action Network-気候行動ネットワーク)は、衡平さ、歴史的責任、支払能力と行動能力の原則と、段階的アプローチに基づいた基準を含んだ制度の提案をしている。

京都議定書の構造は、途上国の取り組みについて差異を認めている。様々なタイプの約束内容によっていろいろな種類の付属書を付け加えることができる。そのあと国々は、透明な基準と交渉によっていずれかの付属書に位置付けられる。また、遵守システムそのものも改めて見直されなくてはならない。途上国にとって約束を果たすのにもう少し時間をとったり、不遵守の際の帰結が約束のタイプや国のタイプによって決められるようにするのである。つまり、途上国はそれぞれの国の事情を考慮に入れて、段階的に京都議定書の緩和システムに入れるようにするのである。これは様々な種類の政策や措置であったり、違うタイプの約束でありうる。京都議定書はこうした多様性を許容できる。

多くの国は、もし交渉が京都議定書のもとで行われたら、すべての国が現在の先進国タイプの約束を負い、先進国タイプの現存の遵守システムに組み込まれるという間違った認識を、持っているようである。これは全くそうではない。先進国は絶対的削減約束を負い続けるべきで、他の国々はそれを守らせるようにするべきだが、他の国々の約束の形がどのように展開してくるかは全くオープンであり、交渉から生まれるべきものである。その後に議定書が改定され、新しいニーズにこたえる違ったタイプの約束が標準となるような制度にすればよいのである。

それと同時に、気候変動条約の方は、適応や、資金メカニズム、技術移転などより広い範囲の決議の基礎とこれまでの歴史的経過を持っている。これらの事項も2013年以降の交渉に含まれなければならず、条約を強化することによってか、あるいは各国の関わりをより強化する必要がある適応、資金と技術移転を考慮するよう、議定書を改定するか、によって実現されうる。

デュアル・トラック(二つの道筋)?

幾つかの国はいわゆるデュアル・トラック(二つの道筋)を検討しているようである。この言葉の定義は、京都議定書の第3条9項を評価する決議が取られるが、同時に2013年以降の約束についての話し合いは気候変動条約のもとではじめられるということのようである。WWFはこれを非常に危険な選択肢と見ている。上記に述べたように、緩和の約束は、京都議定書の元で交渉されるべきである。京都議定書にはすでに先進国の削減約束を強化し、それと同時に、途上国のための様々なタイプの関わり方のために付属書を付け加え議定書を改定するという形の枠組みが存在するからである。

デュアル・トラックの危険性は、先進国の約束を強化するのではなく、いくつかの先進国が条約のもとで、よりゆるやかな約束をするように試みることにある。先進国に条約の下で約束のタイプやレベルを勝手に定義したり、好きな約束のタイプを選んだりできるようにすることは破壊的な結果をもたらし、何があっても避けなければならない。これは実際あらゆる明晰な多国間アプローチの終焉を示すものである。気候変動の問題に真剣な国々はこのような結果が確実に起こらないようにしなければならない。

WWFはデュアル・トラックを次のように定義する:気候変動条約のもとでは、適応、資金メカニズム、技術移転を話し合い、その他すべては京都議定書のもとで交渉するというものである。これが真剣なデュアル・トラックである。他のすべての定義は捨てられなければならない。

将来像を明確にすること-先進国によるリーダーシップ

モントリオール会議はそれぞれの国がどのような約束を2013年以降に採用するのかを話し合う会議ではもちろんないが、先進国が第一約束期間に絶対的排出量に上限を課すというアプローチへの約束を再確認する場であることは明らかである。大臣たちはその声明の中で、そして代表団は交渉の中で、先進国がその環境的、経済的利益のためにこのアプローチに責任をもっており、先進国はその強い削減約束から逃げはしないことを語り、発展途上国にリーダーシップを示さなければならない。これらの声明は世界の排出量取引市場に、キャップアンドトレード型システムが2013年以降もずっと続くことをはっきりと示すことになる。

先進国はその他以下の点をはっきりさせなければならない。

  • それぞれの国は京都ターゲットを責任を持って果たすことを確実にして、そのために必要なら新しい施策を取り入れることを宣言する。

  • 適応に資金供与することを約束した国々はそれを今行わなければならない。

  • すべての先進国は重要な適応の問題を解決し、資金供与の約束が含まれている意味ある適応5か年計画作業プランに関わる用意が整っているべきだ。

  • すべての先進国は、知的財産権の議題を含む真の技術移転の可能性を探ることに対して、新たな意欲を示す必要がある。

  • CDM (クリーン開発メカニズム)は環境と持続的発展の両方の利点を提供するものでありつづけなければならない。そして炭素クレジットの交換は行われるものの、実質的な効果が見られないようなところまで弱められてはいけない。追加性はCDM制度の核心部分であり続けなければならない。

すべての国は大臣の声明の中で、気候を守るために自分たちの公平な分担を担う用意があることを明確に示し、したがって何が自国にとって公平な分担であるかの交渉がモントリオールで開始されるのだと信念を持つべきである。

どの国もたった一国の行動や立場によって、交渉を前進させることを阻止されないようにしなければならない。京都議定書を批准していない国を含めるすべての国による前進の決議が可能ではなかったとしても、京都締約国は、議論を進めるべきである。京都議定書非批准国が適切な約束を果たすことを示した場合に、直ちに交渉に加わることのできるメカニズムを作りながら。

マラケシュ合意は採択されるべき

マラケシュ合意のすべての決定は、そのままで採択されるべきである。すべての決定は過去数年間に徹底的に交渉され合意を得られたものであるから、これらの決定に関する議論を再開するような疑問はあげられてはならない。これはCDMに関する決定と並んで、特に土地利用変化と林業に関する決定にとって大切である。

遵守の決定もモントリオールで採択されるべきである。京都議定書の持つ約束の拘束性は決定によって強められる。この場合改定は必要ない。遵守委員会を立ち上げ、早く機能できるようにするためには、今、議論を蒸し返している時間はない。サウジの改定案は、本気な提案ではないので、そのように扱われるべきである。

CDMは、その十全性を保つべきだ

CDMは、持続的発展とCO2削減の両方をもたらす重要なメカニズムである。WWFはゴールドスタンダードを開発とその普及を通じて、世界中でCDMを実効性のあるメカニズムにしようと努力している。

しかしCDMを“能率化”する意図で、様々な提案が非公式に議論されている。CDMをスムーズに運用できるようにするためのものもあるが、明らかにCDMの追加性の条件を弱めようという目的のものも多い。WWFはCDMを能率化することが追加性の条件を弱め、したがってCDMをその二つの目的を満たすことから遠ざけることを深刻に憂慮している。

追加性がなければ、CDMは結果として世界の排出量を増やすことになってしまう。したがって追加性の基準は厳格でなければならず、またその実施は効果的でなければならない。WWFはCDMの第16回理事会で採択された「追加性の実証と評価のツール」が、追加性を守ることを保証すると信じている。このツールは変えてはならない。

追加性の追求はしばしばホスト国の長期的な持続的発展のための政策改革への意欲をそぐ。なぜなら国内政策を導入することがCDMプロジェクトの追加性を否定する可能性があるからだ。CDMはそれのみで持続的発展の手段とすることは意図されていないが、しかしCDMを使用することが、途上国が持続的発展のためによい国内政策を作ることを妨げないことを確実にしなくてはならない。CDM理事会に対し、CDMのフリーライダーを含まず、厳格な追加性の基準を維持しながら、よい国内政策を作ることを奨励するガイドラインを整備するように、求めるべきである。

ビジネスと産業界、それに政府機関は、CDMプロジェクトサイクルが複雑すぎて費用がかかりすぎるため、CDMプロジェクトの数が制限されていると批判している。現在議論になっている重要な議題は、追加性が、プロジェクトの承認と登録プロセスを遅らせているという投資家による主張である。途上国内でCDMを使いたいという期待の大きさに比べて、CDMの管理業務への拠出金が非常に少ないので、それが障害となっていることは驚きに値しない。問題の根は、膨大な作業量を抱えて能率があがらない組織問題ではなく、十分な資金が全体的に欠けている事にある。先進国は、CDMが効率的に目的にかなった方法で主要な目標をかなえられるように、CDMの管理業務に十分で安定した資金を確保するべきだ。

WWFは、CDMがまだ初歩的な段階にあるとしても、運営事務をプロフェッショナルにするときが来たと認識している。CDMには、数多くの機会と大きな期待がかかっている。プロフェッショナルで効率的な管理が最優先であるという強いメッセージを送ることで、その期待に答える必要がある。産業界に、いっそう気候変動緩和と持続的発展に寄与してもらうため、管理構造が明らかで効率的でプロフェッショナルでなければならない。WWFは、プロフェッショナルなチームを投入し、日々の運営に責任を持つCEO(最高運営責任者)をおくことが、現行のCDM機関を能率化するのにふさわしい手段であると信じる。

WWFは、CDMの運営事務局の、効率と能力を向上させるために能率化する努力が、決して追加性を弱めることになってはならないことを強調する。

結論

産業革命前に比べて世界平均気温上昇を2度未満に抑えるためには、2013年以降の取り組みについて決定するプロセスをはじめることが絶対に必要であることは明らかだ。この問題について明言を避けることは、主な地球システムを危険に陥れるだけではなく、ビジネス界にとって将来の計画と投資を考えるときに必要な確実性を与えないことになる。締約国はどういう約束にするか、ましてやそれぞれの国の公平な負担がどれだけかについて、今決める必要はない。しかし、これらの事柄についての交渉ははじめなければならない。この決定は、各国政府が最新の科学的知見に耳を傾け、多国間アプローチを責任を持って進める準備があることを、一般の人々と投資市場にはっきりと示すことになる。京都議定書は2013年以降の交渉の中心であり、あらゆる約束の議論の基盤とならなければならない。と同時に、発展途上国が求めている適応手段への資金供与や技術サポートをすることにも十分答えなければ、交渉の進展は望めないことは明らかである。

モントリオールは、気候物語のマイルストーンとなるべきである。各国政府はそれを確実にしなければならない。

2005/11/28

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