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WWFの活動

クジラ保護に関するWWFジャパンの方針と見解 (2005年5月)

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基本方針

1. クジラ保護は、「WWFの使命」実現に、もっともふさわしい形で行なう

WWFの使命とは、次の3つの目標を達成して環境の悪化を食い止め、人類が自然と調和して生きられる未来を築くことである。

1.1. 生物の多様性を守る。
1.2. 再生可能な自然資源の持続可能な利用が、確実に行なわれるようにする。
1.3. 環境汚染を減らし、資源とエネルギーの浪費を防ぐ。

2. 科学的な根拠に基づいて議論・行動し、予防原則を尊重する。

クジラの生態について科学的な調査が継続して行われ、それに基づいて保護や管理が議論されるよう働きかけていく。
ここでは、人間が自然界について把握できる情報は限られていることを充分に認識し、保護・管理施策を講じる際には、予防原則を尊重することが重要である。予防原則とは、「種や個体群の絶滅など、とりかえしのつかない事態を引き起こす」または「広範にわたる生態系の撹乱など深刻な影響をもたらす」と予想される行為は行わない、あるいは中止することを指す。
予防原則に基づく施策を行う場合、次の点に配慮が必要である。

2.1. 影響の予想が、科学的な根拠に基づいて行われているか?
2.2. 影響があると完璧に立証できない場合でも、必要な対策が速やかにとられているか?
2.3. 過剰な、あるいは過小な予防措置を招かないよう、可能な限り科学的・技術的知見に基づいて、内容や程度が検討されているか?

3. 国際合意を尊重する。

IIWCは、ICRW(国際捕鯨取締条約)に基づく唯一の正規の捕鯨管理機関である。従ってクジラ類の保護と管理に対して、IWC(国際捕鯨委員会)とCITES(ワシントン条約)が果たす役割を支持し、その決定を尊重する。またIWCおよびCITESの締約国会議においては、科学的根拠に基づく健全な議論が行われ、民主主義の原則(多数決、少数意見の尊重)に従って合意形成が行われることを強く求める。

4. 多様な価値観を尊重する。

世界にはさまざまな文化があり、クジラとの多様な係わり方があることを尊重する。一方で、クジラの保護と管理が政治的駆け引きに用いられ、科学的な議論が歪められる事態が起こらないよう監視・提言を行う。

5. 日本政府に対し、海洋資源の保全に貢献するよう強く働きかける。

過去の乱獲や不適正なデータ処理に対し、日本政府に責任の自覚を促す。IWC保護委員会へ積極的に参画する、などの具体的行動を求めていく。
また日本政府が国際社会での信頼を回復するには、クジラ類だけでなく、その他の水産資源の保全と管理にも積極的に貢献することを宣言し、具体的な貢献策と実施計画を示すべきである。
WWFジャパンは対話を通じて、日本政府が海洋生物資源の保全に貢献するよう働きかけていく。

個別の問題についての見解

1. 商業捕鯨について

1.1 過去の乱獲における責任の認識、また国際社会での信頼の回復が必要である。
過去、商業捕鯨によってクジラ類が激減したことは、紛れもない事実である。これを繰り返さないため、水産会社や監督諸官庁は、過去の過剰利用に対し責任を自覚し、個体群変動の把握には検証可能な科学的データを採用するよう、慎重を期すべきである。
また日本政府は、捕鯨に関し、過去の経緯から国際的に信頼されていない。現行の調査捕鯨に関して透明性の高い報告を行い、海洋資源の適切な管理への積極的な貢献を表明し、国際社会の信頼を回復するよう努力すべきである。

1.2 国際的な合意が必要である。
クジラ類のうち、公海、各国経済水域を広く回遊する種は世界の共有財産であり、国際的な合意がなければ商業捕鯨を再開すべきではない。
一部の国は、ICRWに基づく条約加盟国の権利として、IWCが採用した商業捕鯨のモラトリアムへの異議申し立てを続け、商業捕鯨を継続している。しかし、何年間も異議申し立てを続けることは、国際社会の調和を乱し、IWCの地位と権威を危うくするものとなりかねず、望ましいやり方とはいえない。すべての国は国際的合意を尊重すべきである。

1.3 予防原則が必要である。
仮に商業捕鯨の再開が検討される場合は、予防原則がとられることを要求する。

1.4 絶滅危惧種でないクジラの商業捕鯨の可能性。
科学的な根拠に基づいて、絶滅が危惧されない程度の個体数を保っていると判断されるクジラ種については、次の条件がすべて満たされた場合には、商業捕鯨再開の可能性を否定することはできない。
1.4.1. 個体数増減に関するデータが十分に把握され、公開されている。
1.4.2. 有害化学物質や地球温暖化による個体数減少の可能性など、捕獲以外の影響も、個体群動態の把握の際に充分に考慮されている。
1.4.3. 予防原則を採用した持続可能な漁獲量が、注意深く推定されている。
1.4.4. 効果的なRMS(改定管理制度)が、実行可能な形で完成している(RMSは、厳格に適用されれば、クジラ類の乱獲を防ぐ有効な手段となる)。

2. 調査捕鯨について

調査捕鯨の科学的な観点からの必要性と、クジラ保護への貢献の在り方を、冷静に議論すべきである。
調査捕鯨の捕獲頭数は、必要最小限に留めるべきである。非致死的調査に切り替えられる部分は速やかに切り替え、データの蓄積と調査方法の進歩に貢献すべきである。
また、調査捕鯨で捕獲したクジラについては、どこに販売されたか、どのくらい利益が上がったか、販売しなかった分があるときはどのように処分されたか、などの情報公開も速やかに行われるべきである。手法の妥当性について検証を重ねると同時に、結果・成果の公表について、内容と方法を改善することを求めたい。

3. 日本政府(水産庁)のクジラ問題に関する広報活動について

水産庁は、「クジラ類が大量の魚を食べるために、水産資源が減っている」「クジラが増えすぎて海洋生態系が破壊されるおそれがある」あるいは「ミンククジラが多いために、同じオキアミを食べるシロナガスクジラが増えない」といった広報を行っている。しかし、野生生物の個体数の変動や、生態系への影響を、単純な食物連鎖モデルや2種間(例えばミンククジラとサンマ)の捕食-被捕食関係だけで説明することは難しい。
漁業資源に対するクジラの捕食圧や、クジラ種同士の競合関係を重大なものと見なして取り上げることは、かえって日本政府に対する信頼が損なわれるばかりでなく、捕鯨の再開と拡大だけを念頭に置いた政策的主張をしているとの印象を与えかねない。

4. 沿岸の小型鯨類、その他の水産資源について

日本近海における小型鯨類(いくつかは漁業対象種)の調査は不十分であり、保護対策は立ち遅れている。日本政府は漁獲、混獲、海洋汚染などによる個体群への影響調査を速やかに行い、保護と的確な資源管理に向けた施策を早急に構築すべきである。
日本政府が、クジラ類のみでなく、日本沿岸の水産資源全般について、科学的な根拠に基づく資源管理施策を確立し、その保全にいっそう尽力することを要求する。

5. サンクチュアリ(インド洋、南大洋)について

クジラ類のサンクチュアリは、RMS(改定管理制度)などの資源管理システムが想定していない、不確定要素に対する安全策として重要である。
沿岸国は、排他的経済水域内に、クジラ類の生息域を含む海洋保護区を設ける努力を積極的に行うべきである。日本政府が、海洋保護区の設立と公海の管理に貢献することを求める。

6. 鯨肉の国際取引について

CITES(ワシントン条約)による国際的合意は、すべての関係国によって尊重されるべきである。クジラ類の一部の種をCITES附属書Ⅰへ掲載することを、ノルウェーや日本が部分的に留保しているのは望ましくない。鯨肉の国際取引の再開についての議論は、IWCとCITESの会議の場で行われるべきである。
国際取引に際しては、密輸・密漁を防ぐ的確な手段が必要である。市場に出回るすべての鯨肉にDNA登録を行うことは、有効な予防措置になると考えられる。そこで日本の関係当局には、すべての関係者に対し登録のためのサンプル提出を義務づけることを、強く要求する。さらには、得られた資料とDNAデータを公開し、第三者機関の確認を可能にすることが、必要不可欠である(トラフィック・イーストアジア/WWFジャパンは、市場の鯨肉に関して予備的なDNA調査を実施し、資料を確保している)。

 

2005/5/01

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